572話 普段の日常に
あれから3日が経つ。
俺の捜索を手伝ってくれたシエルが無事に戻ってきた。
俺と面会すると、ボロボロと泣いて抱きついてきたのは、ちょっと困った。
本当に迷惑をかけてしまった。
かなりの致命傷を負ったセイクリッドは完全に回復をして、モリオンと稽古している。
少しは休んでくれよ……。
そしてエメロッテから外に出る許可をもらった。
外に出ると、みんなは心配してくれる。
あの件はバレないで済むかと思ったが、リフィリアを安全な場所――領地に転移させたから言いようがなかった。
エメロッテが俺が魔力暴走をしたのを阻止したと、正直に話したようだ。
俺は心配させてしまい、謝った。
けれど、ヴェンゲルさんは――。
「ここ最近、いろいろなことが起きた。それに耐えられなかっただろう。まぁ、元気になって安心したぞ。あまりむちゃするなよ」
頭を撫でて、温かい目で見てくれる。
あれ……? なぜか涙が自然に出てくる……おかしいな……。
やっぱり俺の記憶の通り、我慢して耐えていたのかもしれない……。
もう限界だったか……。
「それじゃあ、飯でも食って精をつけろよ!」
いたっ! 急に背中を叩くのは困る……。ヴェンゲルさんらしい励まし方だけど。
涙を拭いて気を取り直し、まだやることがある。
神社に移動して社殿に置いてある女神像にお祈りをする。
視界が変わり――天界の庭に移動した。
目の前には3人の女神がいる。
「レイ、やっと来たわね。と言いたいところだけど、大変だったわね」
「ハハハ……報告が遅くなって申し訳ありません……。それと……」
「エフィナがしたことだ。レイ君が悪いわけではない。エフィナはぐっすり眠れば復活する。君には感謝しかない」
「そうそう……、みんな無事ならそれでいい……。レイは悪くはない……」
「そうよ、だからこれだけは言わせて――エフィナを救ってくれてありがとう」
3人の女神は頭を下げる。
「あげてください。約束を果たしただけですから……」
「それでも感謝しきれないわ。お礼は私と――」
「今世が終わったらアタシの家に住んで甘えていいよ……」
「ちょっと、何言っているのシャーロ!? 私の家に住むのよ! 勝手に決めないで!」
また始まったか……。それ以外に褒美はないのですか……? お礼とはいったい……。
「まったく、困った2人だ。もし、決まらなかったら私の家にでも住んでくれ」
さりげなくソシアさんも誘うとは……。
まだ先の話なので保留にしておきます。
「ところで、聞きたいことがあるのですが、【絆】のスキルを覚えたのですが、わかりますか?」
「絆か……。すまない、私にはわからない。2人は知っているか?」
「絆のスキルは初めて聞いた……」
「私にもわからないわ」
3人が知らないとはそれほど珍しいのか?
「すまない、私たちでは使い方がわからない。エフィナならわかるはずだ」
創造神にしかわからないのか。
まあ、そこまで気にすることではないし、わからなくてもいいか。
「わかりました。では俺はこれで失礼します」
「ああ、次からエフィナと一緒に来てくれ」
「そのときはグリュムのこと詳しくお願いします」
「もちろんだとも」
「ちょっとレイ、帰るのが早いわよ!」
「そうだ、言い忘れていた――クリスティーナ、子どものときの約束を果たしたよ。言っただろ、俺は約束を守る主義ってことを」
その発言でティーナさんは涙を流して笑ってくれる。
「レイ……約束……覚えていたのね……。ありがとう……」
俺は手を振って領地に戻った――。
――――◇―◇―◇――――
あれから1週間が経つ。
エフィナはというと、まだ眠ったままだ。
だが、寝言で――。
「グへへ……レイと一緒……」
相変わらず気持ち良さそうに寝ているから心配はしていない。
とにかく、エフィナが起きればめでたしめでたしとなってほしいが、俺宛てに手紙が届いた。
それは禁忌野郎の手紙だった……。その内容は――明日正午に俺の領地に来ることだ。
本当に事前に送るとは……しかも、日程までしてするのは、よほど自信がある。
そのおかげで、準備ができる。いくら強くなっても無駄だ――今度こそ決着をつけてやる。




