570話 再戦、魔力暴走
俺は【武器創造】黒色に輝く剛金の盾を出して構える。
「守っても無駄だ――――氷炎乱華!」
「――――重閃!」
「――――なっ!?」
アイツは氷炎を纏って切りつけるが、盾で押し倒し吹き飛ばす。
盾をしまい、今度は槍を創り、近づく――。
「――――絶槍!」
「――――くっ……」
渾身の突きを魔剣で防がれたが、怯んで後ろに下がる。
そして短剣に替えて背後に――。
「――――刹那!」
「――――グァァァァ!?」
胴体を切りつけて悲鳴をあげる。
やはりな、こいつは対処できないか。
「まだまだこれからだぞ――」
俺は大剣、モーニングスター、棍棒、拳、弓と、武器を替えて彼にすべてをぶつける。
アイツはただ防ぐだけで手一杯だ。そして、刀――。
「――――抜刀・一閃!」
2本の魔剣をアイツから手から外して遠くに飛ばし、床に落ちた。
「な……なんなんだいったい!? 魔剣を使っていないお前に負けるはずがない!?」
「これを見てもまだわからないのか? 俺は魔剣や魔法に頼らなくても【武器創造】というチートスキルがある。今戦っているのは相手は――武器士だ!」
すると【剣聖】から【武聖】のスキルに変わった。
「ふざけるなぁ!? たかが魔剣に劣っている武器を使っているだけなのになぜだ!?」
「お前はさまざまな武器を使う者に対処がわからない。まあ、学習していないだけだけどな。魔剣に固執しているだけで能がない」
「いい気になるなぁ!? 劣化品など壊してやる! ――――蒼炎・一閃」
離れた炎の魔剣を戻して、蒼炎を纏い切りかかる。
「――――抜刀・一閃!」
刀は粉々に砕かれて消えていく。さすがに蒼炎をまとった剣には対処できないか。
「はは、これで終わりだ――――蒼炎刃!」
悪いが、今の俺には魔力が十分ある。水と氷の【混合魔法】を使う――。
「――――ニブルヘイム!」
周囲は霧状に包まれ、アイツは蒼炎を纏って切り上げて襲おうとするが、全身霜が付着して動けなくなった。
蒼く燃えていた炎は消えていく。
そして俺の手には2本の霧状に纏った氷水の剣。切りつける前に凍るとは……。
これで終わりだ――。
「――――氷水乱華!」
「――――グアァァァ!?」
霧を纏い切りつけ――全身傷だらけにし、倒れていく。
魔剣は消えていき、暴れる様子はなかった。やっとおとなしくなったか。
「ちくしょう……。せっかく手に入れたのに……なぜだ……」
「お前は俺には絶対に勝てない。何度やってもな。所詮、俺の記憶にすぎない……」
こいつは魔力暴走だが、俺の記憶に影響されたのだろう。
おそらく無理やり魔力暴走を制御したとき、俺の記憶に触れて自我が芽生えたと思う。
「なんでだ……お前のために……やっている……止めるな……」
「余計なお世話だ。なぜグリュムを倒そうとする? お前がやっているのは無謀だ」
「俺は……お前の記憶に触れてつらい……。お前はなんであれだけの怒りを抑えられる……? 俺はお前に楽をしてほしかった……。だったら黒幕を倒して終わらせた方がいい……。それが一番の解決策だ……」
「それが理由か? お前が解決するほど簡単ではない。これで理解しただろ?」
「ああ……。本物には勝てなかった……。やはり……俺はお前の記憶にすぎないな……」
「みんなのおかげで勝てた。お前の勝敗はそれで決まった。独りよがりでは無理だとな」
「そうか……。やっぱり無理だったか……。なぜ止めを刺さない……?」
「お前はもう俺の記憶だ。それが理由だ。俺のせいでお前を生み出してしまった。だからその責任だ」
「だったら……止めを刺すのが道理だろ……。わけがわからない……」
「止めを刺してもお前が消えることはない。俺の記憶になった以上、俺が今世が終わるかぎり消えないはずだ。だからお前を刺しても虚しいだけだ……」
「わかっていたのか……。身を潜めようと思ったのに……勘が鋭いな……。いや、本物だからそうか……」
「けど、お前がやったのは最低だ。ここでおとなしくしていろよ」
「いいのか……? あれだけ酷いことをしたのに……いいのか……?」
「許しはしない。ただ、お前は見届ける責任がある。そう、エフィナのように」
「本当にわけがわからない……。わかった……おとなしくお前の行く末を見届けるよ。これは俺の責任だ……」
「負けたくせによく言うな。ほら、俺の記憶を更新させるから手を貸せ」
「ああ……」
手を取り合うと、俺の記憶は身体が輝いて、元通りになり、泣き始めた。
「温かい……。なんだ……温かい記憶があるじゃないか……」
「お前は負の記憶しか見ていないだけだ」
「そうか……。俺はお前の記憶でよかった……ありがとう……」
頭の中から【絆】のスキルが浮かび、視界が変わる――。




