569話 リスタート
視界が変わり、暗闇に戻った。
良い思い出……えっ……痛みがない。
傷口を触るとふさがって完治していた。
あの記憶の欠片の影響なのか?
すると、落下する身体が浮かんで上に行く。
いったい何が起きている……?
『レイ、聞こえるかい?』
『エフィナ?』
『やっと本物の声が聞こえた。具合は大丈夫?』
なるほど、エフィナがやってくれたみたいだ。
『とりあえず大丈夫と言いたいかな。それで……』
『ああ、ボクのことは気にしないで、なんとか暴走を止めたよ』
『そっか……、アイツはどうなった?』
『そのことだけど、ボクの時魔法で戻しておいたよ。簡単に言えばこれまでやってきたことのやり直しかな。レイ、アイツとまた対面するけど、大丈夫かい?』
やり直しか。やはりエフィナも気づいていたか。
『ああ、大丈夫だ。またアイツと戦闘になってもいける』
『うん、その意気だよ。ボクの力を使うといいよ――』
俺の身体から膨大な魔力が溢れて、時と空間の上級魔法が頭に浮かぶ。
『助かるよ。でも、エフィナは……』
『気にしないで。レイ、絶対に戻ってきてね』
『もちろん』
エフィナからの念話が途切れた。
もうアイツの負ける気がしない。今度こそ決着をつける。
光が見えた――その中に入っていき、真っ白な空間に戻ってきた。
しかも戦闘でボロボロになっていた痕跡も元通りに。
そして前にいるのはアイツ――。
「ちくしょう――ちょくしょちくしょちょくしょ――――!?」
怒り狂って床を叩いていた。
「随分、俺の身体を使ったようだな……。どうだ? 外の環境へ行った感想は?」
「まったくもって最悪だ! って……なんでここにいる!?」
やっと俺に気づいたと思ったら今度は尻もちをついて怯えていた。
「まだわからないのか? エフィナのおかげで「リスタート」だ」
「俺の知らない魔法をふざけんなぁぁぁぁ!?」
今度は上を向いて大声で叫んだ。
無駄だ。お前の声はエフィナには届かない。そう、永遠に。
「降参するなら今のうちだ」
「誰がするか!? まあいい……。やり直しなら、お前は魔剣を使えない! そして、ここは俺の空間だ。俺を倒すことなんて無理に等しい! 何度繰り返しても同じだ! またお前を倒して、今度こそ肉体を手に入れる!」
エフィナにやられて、本当に懲りないな……。
「そうか……それなら、創造の魔剣を出せよ」
「なっ……」
急に固まって沈黙する。図星のようだ。
「どうした? エフィナを出せないなら、肉体を手に入れてもまたエフィナにやられるぞ」
「黙れ! アイツを使わなくても俺は最強だ! それがどうした、お前の挑発に…………あ……ああ……」
俺は右手に創造の魔剣を出した。
アイツは怯えながら後退る。
かなりトラウマを植え付けられたようだ。
「なぜお前が出せる!? ひ、卑怯だぞ!?」
「何を言っている? お前はエフィナを支配できなかった。それだけの話だ。もういい加減にしろ。お前の負けは確定している」
「ふざけるなぁ、ふざけるなふざけるなふざけるな――――!?」
エフィナを見せても怒り狂うだけか。
仕方がない――。
「そんなにビビッているなら、使わない。弱者に魔剣を使う主義ではない」
「テメェ……俺をバカにするなぁぁぁぁ!?」
アイツは炎の魔剣と氷の魔剣を持って向かってくる。
もう無意味なことだ――。




