565話 偽者④
セイクリッドとライカは挟み撃ちにして切りかかるが、炎の魔剣と氷の魔剣を使い、剣撃を流される。
しかも余裕があるのか、笑っている。
「どうした? どうしたどうしたどうした? 時間を稼ぐにしては気合いが入っていないじゃないか?」
セイクリッドはなんとかアイツと互角に太刀打ちできているが、ライカは力に負けて仰け反り、必死だった。
ライカの弱体化の影響は予想以上だ……。
このまま続けても意味がない……。
「気合いだと? 儂はわざと加減している。セイクリッドに隙を作るためにな」」
「生意気な犬め……。いいだろう……お前は眠らせずに躾けてやる……お前は俺のペットだ。首輪とリードをつけて小人の前でキャンキャン泣かせてやる!」
「儂はお前の飼い犬でもなんでもない。お前、儂を狐だとわからないのか? やはり魂がない奴に狐と犬の区別がわからないようだな。哀れだ」
「テメェ……俺のペットの分際で口答えするな! ――――豪氷刃!」
アイツは挑発に乗って氷の魔剣で切り上げるが、ライカは後ろに下がって回避した。
「ここまで単純とは……。任せたぞセイクリッド……」
「主殿、少々痛いが我慢をしてくれ――」
セイクリッドは後ろに回り、素手で首の裏を狙って気絶させようとするが――。
「――――炎刃・一閃!」
「なぬぅ!?」
炎の魔剣で身体を引き裂かれ、仰け反ってしまう。
あともう少しだったのに……セイクリッドは胴体を焼かれて膝をついてしまう。
損傷が激しい……相性が悪くて【再生】が追いついていない……。
「残念だったな、いくらお前が強化されても炎の魔剣では最悪だな。少しだけおとなしくしてろ。さて、躾の時間だ――」
「――――グハァ!?」
「ライカ!?」
ライカに近づき腹に蹴りを入れられて遠くに吹っ飛ばされてしまう。
ライカは立ち上がることなく、気絶してしまった……。
「せっかく俺が躾けてやっているのにおしまいかよ。情けない。まあいい。そこでおとなしくしていろ。これが終わったらたっぷりと躾けてやる」
「お前……よくもライカを……許さん――――斬滅連覇晶!」
「――――蒼炎乱華!」
「――――ヌオォォォォ!?」
アイツは氷の魔剣から炎魔法――「ブルーフランベルジュ」に持ち替え、蒼炎を纏って剣撃を弾いて切り刻んでセイクリッドは吹っ飛ばされた。
身体はボロボロで立ち上がることができなかった。
「はっ、何が時間稼ぎだ。弱すぎて話にならない。さて、お前たちだけだ……」
アイツはボクたちを振り向き、ゆっくり近づいてきた。
「冗談だよ……。アネキの解放が終わらないままなんて……」
「これは少々厳しいですね……」
「ボクのことはいいから逃げて、ほかのみんなを呼んで――」
「アネキ、それはできない。これはアタイたちの問題だ。ほかを巻き込んでも大けがをさせるだけだ」
「私たちの問題です。皆様方にあの偽者に会わせるという選択はありません」
「じゃあ、逃げてよ! 2人がいないとこの先何があるかわからないんだよ!」
それでもボクの言うことを聞いてくれなかった……。
「茶番は終わりか? お前たちが逃げても無駄だ。俺を怒らせた罪は重い。まあ、お前たちはほかの奴らと付き合いが長いから、降伏するなら穏便に済ませるぞ?」
「穏便か……。アイシス、アネキの鎖はアタイでも無理だ。最終手段を使うしかないぞ……」
「最終手段ですか……? 私もあなたと同じことを考えていました……」
「最終手段……?」
すると、2人は手から魔力の球体を出した。
そういうことか……。
「悪いな、アネキ、アタイとアイシスではどうにもどうにもならない……。これで足りるか……?」
「うん……」
「エフィナ様、ご主人様を救ってください……。お願いします……」
「うん……」
ボクは頷くしかなかった……。本当にバカだな……。その賭けに乗ったよ……。
2人はボクに身体に魔力を流し込んだ。
「させるか――――エクスプロージョン!」
頭上から爆炎を落とすが、もう遅いよ――これである程度は力を出せる。
爆炎のおかげで鎖が外れて、余計な魔力を使わなくて済んだ。
2人はすべての魔力を失い、球体となってアイツに向かい、吸い込まれていく。
「ハハハハハ! 無駄だと言っているだろ! さて、残りはお前……な、なんだ……その魔力は……」
ボクの姿を魔力を見てアイツは震えていた。
ほんの少しだけなのに情けない……。
レイ、元通りにするから少し待ってね。




