564話 偽者③
「ちょこまかと鬱陶しいぞ!」
「――――わぁ!?」
ルチルが切りつけられ吹っ飛ばされた。マズい……ルチルも……。
「ねぇ、ボクはいいからルチルを――」
「アネキ、わかってくれ……」
「エフィナ様……おわかりください……」
それでも2人は助けに行かなかった。
「チィ……一発で仕留められなかった……なら……これならどうだ……」
アイツはゆっくり近づいて左手に炎の魔剣を出した。
ルチルの弱点はダメだ……。
「偽者が使う魔剣なんて弱い! 全然痛くない!」
「強がっても無駄だ! ――――刺爆裂炎!」
「――――アクアウォール……」
「なに!?」
マイヤがスライムの姿でルチルの前に出て、水の壁を創った。
炎の魔剣が壁に突くと破裂――水蒸気爆発をし、霧で周りが見えなくなった。
「――――アブソリュート・クリスタル!」
「ふざけるな!?」
霧で見えないが、アイツを結晶化させたようだ。
そして、ルチルを身体に入れてマイヤが飛び出して遠くに逃げる。
「もういいよ……」
空から強力な魔力――ソアレとセレネが手をつないで魔法を発動する。
「「――――コンビクト・ジャッジメント!」」
上空から巨大な光の剣――断罪の剣を具現化し、霧の中にいるアイツに目がけて一振りする。
「――――グァァァァ!?」
アイツの悲鳴が聞こえて断罪されたようだ。
なるほど、レイの身体がを傷つけずにアイツだけ――本体をできるオリジナルの魔法を創ったか。
弱体化して膨大な魔力を使うが双子なら魔力を共有しながら構築もできる。
あの子たちはボクが思っているより強い。
「「うぅ……」」
2人で発動させたとはいえ、魔力の消費は異常である。
ゆっくりとマイヤとルチルがいる方に降りる。
さすがのアイツでも【断罪】には逆らえない。
すぐには動け……うそでしょ……マズい――。
「4人とも逃げて!?」
「――――ダークブレイク!」
遅かった……4人は黒い霞に包まれて爆発に巻き込まれ……球体になってしまった。
アイツは治癒龍の魔剣に持ち替えていた……。
なんで……? アイツは魔力の塊なのに回復するの……?
アイツの方に向かい、自分の魔剣に吸い込まれてしまった……。
「ハハハハハ! 結局、俺には勝てないんだよ! 全部無駄なんだよ!」
狂ったように高笑いをする……。
こんな奴にやられるなんて……信じられない……。
ここまでみんなが弱体化されるのはおかしいよ……。
レイ……アイツに何をされたんだ……?
本当に目を覚まさないの……?
「無駄なのではないぞ……。よそ見している暇はない――――覇閃斬・晶!」
「はっ? ――――グアァァァ!?」
セイクリッドは大剣を地面に振り下ろし、結晶の斬撃がアイツに直撃し、吹っ飛んでいく。
前よりも強力になっている。
よく見るとセイクリッドの鎧は輝きを帯びて魔力が膨大になっている。
なるほど、そういうことか。
「お前……ルチルの【同族強化】がなくなって弱体化したはずだ……。それよりも強くなってやがる……なぜだ……?」
「ルチル殿が倒れる前に、我に魔力を全部送ってくれたのだ……。これで対等に戦える準備ができた……」
そう、最後にセイクリッドに【同族強化】で魔力をあげて、セイクリッドは以前よりパワーアップした。
控えていたのはそういうことか。みんな、いろいろと考えて戦っている。
そして、もう一人がいる――。
「悪足掻きを!? こんなことして俺は――」
「儂も忘れては困る――――雷身!」
「――グハァ!?」
起き上がった瞬間にライカが雷を纏い、突進し、さらに吹っ飛んでいく。
「まったく……作戦とは言ってもむちゃなことを……。時間を稼ぐぞ、セイクリッド」
「言われなくとも――」




