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55話 故郷に帰る


 ――次の日。


 ブレンダが借りる寮の前にいる――。

 

「それではジョナサン、ルミン、お嬢様を頼みましたよ」


「任せろ……」

「お任せください!」


「お嬢様、学校お励みください」


「もちろんだよ! セバスチャン!」


 ブレンダは元気に返事する――これなら心配なく帰れそうだ。

 そして昨日プレゼントしたネックレスを付けている――こんな嬉しいことはない。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、精霊さん! 本当にありがとう! 楽しかったよ!」


「ああ、学校頑張れよ!」

「ありがとうございます」


 精霊は笑顔で頷く。


「ルミンさん、できる限りのことは教えました。ブレンダ様に美味しい料理をどうか提供してください」


「はい! もちろんでございます! お姉様、本当にありがとうございました!」


 ルミンはアイシスに深くお辞儀をした。


「お兄ちゃん! またね! 絶対に強くなるからそのときは約束だよ!」


「ああ、もちろんだ!」


「そろそろカルムに戻りますよ」


 馬車に乗り――ブレンダは手を振り、ジョナサン、ルミンはお辞儀をして見送ってくれた。


 そしてブレンダは大声で――。


「お兄ちゃん、だ――――いすき!」


 このタイミングで言われると……とても恥ずかしいです……。


 馬車を動かしているセバスチャンがこちらに振り向き――メガネを光らせた。


「これは旦那様に報告を……」


 また嫌な予感しかしないのだが……。

 てか、セバス!? ずっとこっちを見るな!?

 前を見ろ!? 事故るだろ!? 

 まったく……危ない……。


 帰る前にアリシャたちが待っているギルドに向かう――。


 ギルドの前にアリシャたちがいた。


「お~い、こっちだよ!」


 アリシャは手を振って呼んでいる。


「お待たせいたしました。さあ、こちらにお乗りください。」


「ありがとうございます。セバスチャン! よろしくね!」


「まさかこんな豪華な馬車にタダで乗れるとかツイてるぜ!」 

 

「本当だね。レイ、これからよろしく」


「時間もあるから色々と話そう! まず何から話した方がいいかな――」


 これは賑やかになりそうだな。その前に――。


「悪いが、ちょっとギルドに寄るから少し待ってくれ」


 ――ギルドの中に入ると受付のエミーニャがこちらに気づいた。


「レイだにゃ! 今日はどうしたのかにゃ?」


「カルムに帰るから挨拶にきたけど、オルリールさんとフェンリはいる?」


「もう帰るのかにゃ!? もっといてもいいのににゃ~残念にゃ……今すぐボスとフェンリ呼ぶから待っててにゃ!」


 階段を勢いよく駆け上る――対応が早いですな……。


 オルリールさんとフェンリが階段から降りてきた。


「もう帰るのか、まだ依頼の途中だからしょうがないか。いつでも歓迎するぜ、また来いよ!」


「ありがとうございます」


「帰るのかよ……レイとねーちゃん強かったからもっと稽古がしたいぜ……」


 フェンリの尻尾と耳が垂れ下がっていて、落ち込んでいた。

 結局は稽古したいだけなのか……てかアイシスもその中に入っているが……。


「そういえば昨日アイシスと稽古したがどうだった?」


「強かった!」


「それだけ?」

 

「そうだ! それだけだ!」


 いや、もっと感想があるだろう……。


「レイ……コイツは強ければ誰でもいいんだぜ……しかしメイドの姉ちゃんも強いな、レイと同じでフェンリの魔力が尽きるまでやってくれるとかスゴイぜ! 2人でミノタウロスを倒せるのも納得したぜ!」


 やっぱりアイシスも同じことをしたのか……。


「オレもカルムに行きたいぜ! それならレイとねーちゃんと稽古ができる」


 それはやめてくれ……絶対毎日やらされるから身体がもたん……。


「ダメだ! お前は社会性を学ばないといけないからBランクになってからだ!」


「え~わかったよ……」


 オルリールさんの言っていることは一理ある。

 このままフェンリを野放しにしたら大変なことになる……まあ、あの強さならすぐにBランクにいくとは思うが……。

 

「それとレイ、渡したいものがある」


 オルリールさんから金貨3枚もらった……なんで?


「これはいったい……」


「騎士から報告があった。昨日フェザースネークの群れを魔法で落としたのお前だろ? その報酬だ」


 バレていましたか……通りすがり冒険者とか言ったのがマズかったか……。


「ハハハ……内緒でお願いします……」


「それは無理だ、騎士から注目されているからな。もしかしたら王国専属の魔導士になるかもな!」


 笑いながら言っているけどそれは嫌です……俺は自由に暮らしたいです……。


「王国専属になるのでしたら隠居します……」


「冗談だ、ここの王様は強制なんてしないから大丈夫だよ! よほどのことがなければの話だがな!」


 意外に王様って人を尊重するのだなー。

 俺からしたら関係ない話だが。 


「では、そろそろ行きますね」


「またな! レイ!」


「まただにゃ!」


「じゃあな、レイ!」


 挨拶をして、馬車に乗り――城門前に向かう――騎士が数十人整列をしていた。


 何かめんどくさいことが起きそうだな……。 


「そこの馬車、すまないが止まってくれないか?」


 はい、無理でした……。


 鎧を着けた大柄の30代前半くらいの男に声をかけられた……胸に勲章がついている。


 すると昨日城壁上にいた騎士が窓際の俺を見て気づいた。


「団長! この方です! 昨日フェザースネークを魔法で落とした冒険者です!」


 団長? ってことは……王国の騎士団長ってことか。


「この子がか? まだ若い……すまないが馬車から降りてくれないか?」


「え? は、はい」


 馬車を降りると――。



「敬礼! ――――若き冒険者に感謝を!」


「「「――――若き冒険者に感謝を――――!」」  


 騎士団長の掛け声と共に騎士たちは右手を上げ――敬礼をする。


 めちゃくちゃ恥ずかしいですが……。


「あの……これは……」


「君が王都に襲来したフェザースネークの群れを撃退してくれたことに感謝をしてるのだよ。おかげで被害もなく助かったよ」


「いえ、成り行きなので大したことはしてないですよ。先ほど、ギルドマスターに報酬も頂きましたし十分ですよ」


「そう謙遜することではない。1人で魔法で対処するとはまるで賢者のようだ。誇りをもって良いのだぞ」


「そんな大袈裟な……」


 ここでも賢者に勘違いされている……。


「是非とも君の名前を聞きたい」


 え……このパターンって……ギルドカードも見せた方がいいのだっけ……。


「俺はカルム在住の冒険者レイと申します。以後お見知りおきを」


「アイテムボックス持ちで……ミスリルのギルドカード……これは納得の強さとわかった。私も紹介させてくれないか? 私は王国騎士団長を務めるファイス・カセルトである。また王都に来るときは喜んで歓迎するよ。レイ殿」


「ハハ……ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いしますファイスさん」


 お互いに挨拶をして馬車に乗り城門前を通るが……最後まで騎士たちは敬礼をしながら見送ってくれた。

 このまま大ごとにならなければいいのだが……。


「レイ、いったい何をしたの!? 騎士たちが敬礼するとか異常種擬き討伐以外に何をしたの!?」


「騎士団たちかっこよかったなーレイは何話していたのだ?」


「君は……やっぱりすごいね……」


「何やったの!? 聞きたい!」


 アリシャたちは気になってしょうがない……まあ、時間もあるしゆっくり話すか……。


 帰りは一段と賑やかでした――。

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