563話 偽者②
「先生……私はいいから……マスターを……マスターを……」
とにかく、リフィリアを安全な場所に送らないと――。
「大丈夫! 必ず助けるから――――ゲート!」
空間魔法で領地に送った。
あとは領内の子が気づいて看病をしてくれるはずだ。
「はは、これで回復役はいなくなった! それとお前……よくもコケにしてくれたな――――クリスタルチェーン!」
アイツは魔法でボクの周りに無数の結晶の鎖を地面に出して身体中縛られる。
こんなの簡単に「ゲート」で――。
「転移して逃げようと思っても無駄だ! ――――アンチマジック!」
ボクが魔法を発動しようとするが、無効にされる。
そんなの一瞬だけで、次発動させれば……あれ? 発動しない……?
「ここまでやったらわかるはずだが、まだわからないのか? お前たちは弱体化して俺には勝てないんだよ! 魔法も、魔力も、力も、何をやっても俺が上だ!」
あのときか……レイとの繋がりが切れたときからか……。アイツ……全員に細工したのか……。
「だが、理由はわからないが、お前だけだ! お前だけはそれほど弱くならなかった……。お前を最後に調べさせろ……。おとなしく残りの奴が消えるのを見ていろ……」
ボクがあまり影響を受けていない? どういうこと?
ボクに細工ができなかったのか?
だったら、ボク自身にアイツがおとなしくさせる手がかりがあるはずだ。
「――――落烈晶!」
ルチルは空高く【武器創造・結晶】で虹色に輝く《クリスタル》結晶の大剣を持ってクルクルと回りながら相手の真上に向かって落下する。
アイツは闇の魔剣で受け止めるが、足が地面にめり込み、かなりの衝撃を与えた。
「俺にこんな攻撃が通用するとでも?」
【魔力解放】を使って反撃され、大剣で防ぐが飛ばされた。
ルチルはそのままアイツに武器を投げつけて体制を整える。
不意に投げられた大剣は防がれたが、後ろに仰け反った。
「通用してるじゃん! メアを使っても弱いじゃん!魔剣が使えたらお前なんか弱い! 余裕で倒せる!」
「テメェ……主人に対してその口はなんだ……。決めた……次はお前だ……」
「わけがわからない! お前なんか主人ではない! ご主人の身体勝手に使っている愚か者!」
「それ以上言うな!?」
挑発によって、アイツはルチルに剣を振るう。
だが、当てることしか考えずに大振りをしてしまい、軽々と回避される。
しかし、レイと比べられるたびに情緒不安定になっている。
本物のレイになれないのにどうしてそこまで怒る?
これも何かヒントがあるはずだ。
「よくやったぞ、ルチ助。アネキ、もう大丈夫だ。今すぐ壊してやる」
「エフィナ様、少々お待ちください」
フランカとアイシスが駆け寄り、結晶の鎖を破壊しようと試みる。
「チクショー、アタイが使えなくても炎系ならすぐ外せると思ったのに頑丈すぎる……。本当に弱くなってしまったのか……?」
「申し訳ございません……。不甲斐ないです……」
2人でいろいろ試したが傷をつけるくらいだった。
「ボクのことはいいから、ルチルを助けに行って……」
「それはできないぜ! せっかくルチ助が時間を稼いでるのに無駄にはできないぜ! アネキはまだアタイたちより弱体化してないなら、アネキに賭けたい! だからわかってくれ!」
「そうです。悔しいですが、私たちは偽者に対抗できません。ですので、ご理解ください」
ボク頼りとはね……。その判断は間違っていないけど、まだ……アイツだけを倒す手段が見つからない……。
不完全なボクにアイツを倒すのは難しい……。
時間を稼ぐのはいいけど、もうルチルの動きが鈍くなっている。ダメだ……。早くルチルを助けないと……。




