562話 偽者①
「まずはお前からだ!」
近くにいるメアの方に向かう――。
「この偽者……。ワタクシを使うことは許されない……。今すぐ手放してやる」
「分身が何を言い出す! おとなしく魔剣で戻って眠ってろ!」
「分身ですって……? 戯言を……。ワタクシを扱おうと思うな……。なら本当の使い方を教えてやる――」
メアは自分を取り出そうとして……ない……?
どうしたの? かなり動揺しているけど……。
もうアイツが目の前にいる――。
「――――闇月!」
「くっ……」
「メア!?」
孤を描いて襲いかかり、メアは後ろに下がろうとしたが、間に合わず体を引き裂かれる。
ああ……メアの身体が乱れている……。
「メア、どうして魔剣を出さないの!?」
「おかしいです……出したくても出ません……」
出せない……? どういうことだ? 本体なのに出せないって……。
「俺がご主人様だ! 言うことを聞かない奴には出す権限なんてないさ!」
マズい、アイツが背後にいる。
「メア、逃げて!」
「遅い――――刹那!」
うそでしょ……。胴体を深く切られて体は消えてしまった……。
黒い球体となり、アイツが持っている闇の魔剣に吸収されてしまう。
なんで……? 普通ならあれくらいで魔剣に戻るはずはない……。
どうして魔力暴走に魔剣の権限があるの……?
「はは! 一生眠っていろ!」
「君……そんなことしても意味がないよ……。魔力さえあればメアはいつでも【人化】できるよ」
魔剣みんなは大打撃を負うと魔剣に戻って強制退場となる。だけど、主人であるレイの魔力があれば自ら復活ができる。
もし、アイツに権限があれば簡単に復活できるはずだけど……何も起こらない……。
「メア、早く復活して魔力十分に回復したよね? ねぇ、返事してよ」
「言っても無駄だ。さて、ここで問題、なんでメアは復活しないでしょうか?」
「君の挑発には乗らないよ。何かしたことはわかる」
「なんだ、つれないな。しょうがない特別に教えてやるよ。アイツは今、眠っている。これがどう意味かわかるか?」
「レイが眠ってもメアは復活するよ。君に拒否はできない」
「そうだ、アイツなら復活させることができる。だが、魔剣の復活をその意味がわかるかな?」
その意味がわかった……。アイツ……復活の権限をレイに残したまま身体を動かしている……。
権限を拒否したわけではない……放棄した状態だ……。
じゃあ……レイが目を覚まさないとメアは復活しない……。
メア自身が魔剣を出せないのも……権限を放棄したからだろうか……。
じゃあ、みんなも……。
ここまで頭が回るとは想定していなかった……。
まるでレイそのものの考えだ……。
「やっとわかったか。さて、次は誰を眠らせようかな~?」
「君……絶対に許さない……」
「おいおい、俺はレイ・アマガセだぞ。アイツのことは忘れて俺と仲良くやろうぜ?」
「それはイヤだね。リフィリア、セレネ、お願い――」
「「――――マナドレイン!」」
闇と回復の【混合魔法】を使い――アイツの魔力を吸い取り徐々に減っていく。驚いたけれど時間を稼がせてもらった。
結局は魔力の塊だ。レイを傷つけることはできないけれど、魔力をなくせばいいだけの話だ。
「小賢しいマネを――――エクスプロージョン・ノヴァ!」
なんでバカなことをする!? 自滅する気なの!?
マズい、空間魔法が間に合わない――。
「――――ドラゴンオーラ!」
エメロッテは龍魔法でボクたちの身体を魔力でコーティングし、炎の球体が大爆発を起こして、みんな勢いよく飛ばされてしまう。
イテテ……エメロッテのおかげで擦り傷だけで済んだ……。エメロッテが控えていて正解だった……。
リフィリアとセレネと一緒に「マナドレイン」を使っていたら間に合わなかった。いつもマイペースだけど判断力はいいからね。
周りは消し飛ばされたけど……みんな無事……えっ……? なんで……リフィリアの服がボロボロで傷だらけで大けがをしている……。
リフィリアは魔剣でつながっているだけだから強制退場はない、死がある。
急いでリフィリアに駆け寄った――。
「すぐ治すよ――――龍脈!」
【創造魔法】で治そうとするが……回復しない……?
「先生……エメロッテの魔法を発動したとき……偽者に魔剣……闇の魔剣に切りつけられた……」
闇の魔剣って……最悪だ……。
回復効果が妨害されている……。
おかしい……加護で妨害を無効にできて、それでやられても「龍脈」なら簡単に回復できるはず……。
加護すら効かないほど強力になってしまったか……。
ダメだ、完全に戻らないと治療ができない……。ならエメロッテに任せて…………そんな……エメロッテの身体が薄くなっている……。
「ごめんなさい……。もう魔力が尽きちゃったみたい……。お願い……主ちゃんを救って……」
消えて深緑色の球体になって、飛んで行った。
まさか……そのまさかだった……。
アイツが無傷で立って持っている治癒龍の魔剣に吸収された……。
最悪だ……次々と戦力が失われていく……。
ボクが完全に力を取り戻していればこんな奴……。
考えるんだ……レイの身体を傷つけずに救う方法を……。




