560話 主が危ない
みんなで手分けして捜す――。
ボクは領外周辺を捜しながらレイに念話で伝える。
『レイ、どこにいるの? どこか行きたいのだったら最初にボクにひと声かけてよ』
『エメロッテは怒っていないから普通に帰ってきても大丈夫だよ』
『ねぇ、返事くらいしてよ。みんな心配しているからさ』
……ここまで言っても返答がないのはおかしい……まるで遮断しているように……。
『あるじさまあるじさまあるじさま、どこにいるのです……? ワタクシは……ワタクシは寂しいです……。会いたいです会いたいです会いたいです……』
もうメアは感情を抑えきれなく、暴走している……。
みんなして念話で伝え慰めたけど、無理な状態だ……。
手がかりでもいいから早く見つけないと――。
『皆よ、小人村まで来てくれぬか? 近くで焦げたにおいがする』
ライカから念話がきた。
焦げたにおい? 火系の魔物がいるならおかしくはないけど、周辺に詳しいライカならおかしいかもしれない。
小人村に移動すると、捜しているみんなが全員集まっていた。
「全員集まりました……。早く行きましょう……」
メアに急かされながら、ライカの言う焦げた場所――部分的に焼けた花畑に着いた。
明らかに自然ではおかしい……、。水で消火された痕跡も残っている。
これは間違いなく人為的に着火したあとだ。
ライカは耳を立てて焼けたところから離れて奥に進む。
「焦げたにおいで邪魔だったが……。主のにおいがする……間違いない……」
「主様が近くに!? 早く捜しましょ!」
「メア、落ち着いて、じゃあ、この焼け跡はレイがやったことになるか。でも……魔力を感じない……」
においがあっても、もう別の場所に移動している。
ボクの魔力感知で反応しないのならなおさらだ。
「だが、魔力の反応はないが、においがその先に残っている。まだ近くにいるかもしれん」
「私が確認するよ――――ドラゴンサーチ!」
エメロッテは龍魔法を使い――地面に魔力の糸を張って、においがする方向を通過する。
数分経つと、身体がビクッと反応して顔が真っ青に。
「噓でしょ……主様ちゃん……魔力暴走している……。しかも10㎞も満たない場所にいる……」
「それはおかしいよ! 魔力暴走しているなら嫌ってほど、すぐわかるよ!」
「私だって魔法を使わなくてもわかるわ……。みんなだって普通にわかる……。魔力暴走していれば【隠密】なんてできない……。何がおきているか私が知りたい……」
ボクたちが知らないイレギュラーなことが起こっているのかもしれない……。
魔力暴走でもいくら膨大な魔力があるとはいっても長時間は持たない。
「本当に魔力暴走なの?」
「間違いはないと思うけど、ちょっと違う気も……なんだろう……命にかかわるような暴走ではない……。主ちゃんが自ら暴走させているような感じ……」
感情的になって発動するのはあることだ。それじゃあ、暴走前の状態だ。
「主様! 今すぐ助けます!」
「ちょっとメア――」
まだ話している途中なのにメアは先に行ってしまった。
「まあいい。行くよ――」
みんなでメアを追いかけ、少し経つと、レイの膨大な魔力を感知した。
本当だ……魔力があちらことら分散するように放出されて暴走している……。
なんでこんな膨大な魔力を遠くから反応できない……?
「主様!?」
メアが叫ぶと……ヒビが割れた平地によろけながらレイが歩いていた……。
まるで魂がない……。
「主様……主様! やっと……やっと……お会いできました!」
メアの声でゆっくりと振り向いたが、魔法を発動している。
「メアちゃん、避けて!?」
エメロッテが大声で言うが、間に合わなかった。
「――――アクアマリン・ランス」
水を纏った結晶の槍がメア目がけて放たれてしまう――。




