555話 魔力暴走①
いや、あれは偽物だ、うろたえている場合ではない――。
「――――ナイトメアチェーン!」
「無駄だ!」
床に無数の悪夢の鎖を出してで捕えようとするが、すべて切られてしまう。
噓だろう……。頑丈に創られた魔法だぞ……。
簡単に切られるのはおかしい……。
しょうがない、偽物なら本物で対抗してやる。
俺は左手に炎の魔剣――あれ? どうして反応がない……?
だったら、風の魔剣を……反応がない……。ほかのみんなも……どうしてだ……。
「何を考えている――――絶氷!」
もう目の前にいる間に合うか――。
「――――フランベルジュ! ×2」
魔法で豪炎の剣を創り、金属音が鳴り響き、ギリギリ受け止めた。
しかし……なんて力だ……。後ろに押されてしまうほどだ……。
そして腕が凍ってしまい、冷たさと激痛を感じる……。
「お前……俺に何をした……? お前が持っている奴はなんだ……?」
「何って、見ればわかるだろ――俺が持っているのは氷の魔剣だ。正真正銘、氷の魔剣だ――――豪氷刃!」
「クッ……。――――豪炎刃!」
俺も同じ技で対抗――切り上げるが、豪炎の剣2刀が壊れてしまい、その衝撃で吹き飛んでしまう……。
両手は凍ってしまい激痛と痺れが……。
「なんでお前が氷の魔剣を持っている……?」
「まだわからないのか? 俺が主と認めてくれたのさ! そう――魔剣全員が俺を認めてくれたのさ! なんでかわかるか? お前は用済みってことさ……」
「そんなの信用できるか……。お前が無理やり使っているのがわかるぞ……」
アイツは魔力で魔剣をねじ伏せて使っているのがわかる……。
魔力で権限がアイツになっているだけだ。
だが、それが不利となる――魔力の消費が激しい。魔力暴走なら勝手に消費すれば自然消滅をする。
挑発させて大量に消費させればいい話だ。
俺が守り抜けが勝ちだ。
「認めないとは、往生際の悪い奴め。両手が凍っているのはわからないのか? 加護がなくて凍っていることをな――それが答えだ」
アイツが言っているのは噓である。
だったら豪炎の剣を創った瞬間、大火傷では済ませられない。ちょっと熱いと感じただけだ。
おそらく、加護が弱まっているだけだ。
くだらない戯言で惑わされるのは大間違いだ。
「言いたいのはそれだけか? 時間を稼がせてもらうぞ――――クリスタルランパート!」
俺は魔力暴走の周囲に結晶の城壁を創り、この場を去る。
認めたくはないが、アイツの方が今は強い。
まともにやり合っては絶対に負ける。
魔力消費させて終わらせるのが得策だ。
「時間稼ぎをして何になる? 逃がすわけないだろ――――闇刃・一閃!」
今度は闇の魔剣に換えて結晶の城壁が真っ二つになり、崩れていく。
いくら闇の魔剣でも簡単には切れない頑丈な魔法だぞ……。
いや、アイツを見ると、目が黒紫に輝いて魔力が膨大――【魔力解放】している……。
おい……魔力暴走がそのスキルを使うのはあり得ない……。
自分の身を苦しめてどうする……?
「これで終わりか? ――――刹那!」
いつの間に背後に!?
だが、そのパターンはわかっている――。
「――――クリスタルチェーン!」
床に4本の結晶の鎖を出して手足を巻き付かせる。
「なっ、放しやがれ!」
あっさり捕らえられるのは意外だった。隙を見せるとはなめている。
まあ、おかげで終わりそうだ。俺は魔力の腹に手を当て、炎と水の【混合魔法】を発動させる。
このゼロ距離なら回避できないだろ――。
「――――フリアティク・エクスプロージョン!」
「――――グァァァァ!?」
水蒸気爆発を発生させ、結晶の鎖は衝撃で引きちぎれて、吹っ飛んでいく。
いくら魔剣の加護があっても爆発の衝撃には耐えられない。
さすがに魔力の塊でも…………まだ反応がある……。
蒸気で視界が見えなくてもまだ反応がある……。
「俺が知らない魔法を使うな……。危なかったぞ……」
視界が見えるようになると……これもアリかよ……。
治癒龍の魔剣を持って無傷――回復していた。
魔力の塊が魔剣で回復するのはわけがわからない……。




