554話 俺?
意識を取り戻すと……真っ白い空間にいた。
ここは……エフィナがいた空間と同じだ……。
「もう目が覚めたのかよ」
目の前に姿を現したのは…………緑色のコートを着た俺だ……。
不気味な笑みを浮かべて近づいてくる……。
「誰だ……?」
「何を言っている? お前は俺だよ……見てわからないのか?」
「あり得ない……別の意識が形成するのはおかしいだろ……」
「これが現実だ。まだわからないのか? これだからお前は甘いんだよ」
「訳がわからない……。じゃあ、勝手に炎の魔剣にしたのはお前か……?」
「ああ、そうだ。外に出したのも俺がやった。意識をコントロールできない気分はどうだ?」
「気持ち悪いに決まっている……。何が目的だ?」
そう言うと俺? が高笑いする……。
「ハハハハハ! 目的? 笑わせるなよ! お前の願いを叶えてやるに決まっているだろ……」
今度は真顔になり、肩を軽く叩いて耳で囁く……。
なんだこいつは……? 本当に俺なのか……?
「俺に願いなんてないぞ……」
「いいや、あるさ! 禁忌野郎を抹消させ、グリュムを倒して世界平和にさせる願いがな! 我慢しなくてもいいんだぞ!」
「それはアンバーたちがやることだ。俺は関係ない」
「ああ~、呆れた。なんでお前は否定なことしか言わない? いつまで経っても現状が変わらない。もし魔王がグリュムと対抗できる力があるのか? いいや、ないね。あのエフィナを魔剣にした奴に敵うわけないだろ? わかりきっていることを言わせるなよ」
こいつ……ベラベラと勝手なことを……。
「だからな、お前のためを思って言っている。お前が俺ならわかるだろ?」
「わかってたまるか……俺は俺だ……お前とは違う……」
「まだ言うのか? わかってくれると思ったがしょうがない……。じゃあ、一つ提案がある――俺に身をゆだねてみないか?」
「はぁ? 意味がわからん」
「その言葉のとおりさ――俺はお前と代わってグリュムを倒しに行く。だが、問題が生じてしまってな……。身体をうまく動かすことができないんだ……。まだお前が深い眠りについていないのが問題だ。だから俺に任せてくれないか? もう辛くて苦しく逃げたいだろ? 俺が楽にしてやるから――」
「ふざけるな! 勝手にわかるような口を言うな! さっきから――」
「おっと、こわいこわい。俺は最短ルートを言っただけだ。お前にだってメリットがある。もう苦しい思いをして戦うこともない。すぐに世界平和になって女神――みんな喜んでハッピーエンドに向かうことを言っている。悪い話ではないだろ?」
「そ、それは……」
「まだ迷いがあるのか? 大丈夫さ、俺に任せてくれ……」
不気味な笑みで手を差し出してくる……。
こいつは何が目的なんだ……? 意図がわからん……。
手を取り出したら俺は本当に眠りについてしまうと思う……。
考えるんだ……目の前にいる奴は…………そういうことか……。
俺は手を出して――。
「おっ、やっと話がわかったか。交渉成立――」
「――――アブソリュート・ゼロ!」
目の前にいる物質を氷魔法で全身凍らせてる。
しかし、氷は砕け散ってしまい元の状態になる。
一筋縄ではいかないか……。
だが、魔法が使えるのはかなり大きい。
「おいおい、手荒い成立だな……」
「お前に身をゆだねてたまるか、魔力暴走……。どうやって自我が芽生えたかわからないが、これ以上俺の身体を侵食はさせるのは許さない……」
意識を失うとき、魔力暴走――こいつが魔力を多く使って意識を失わせたことがわかった。こいつは俺に化けた魔力の塊だ。
「魔力暴走? ハハハ、ハハハハハ!」
急に天を仰いで高笑いする。
何がおかしい……?
「俺が魔力暴走だと? 笑わせる! 俺はレイ・アマガセだ――――コメットバレット!」
【混合魔法】を使えるのか――。
「――――クリスタルウォール!」
彗星の弾丸を結晶の壁で防ぐ、ヒビは割れたがなんとか持ちこたえてくれた。
威力もかなりあって、少々厄介だ……。
「お前には失望したよ……。俺が優しく交渉したのにな……」
「最初からする気なんてない……。魔力暴走に俺を名乗る資格はない……」
「はぁ~、これはお仕置きが必要だな~。決めた……お前には無理やり眠りについてもらう――永遠の眠りをな――」
そう言うと魔力暴走が向かってくる。何も考えない向かってくるとは魔力暴走らしいな。
闇魔法で――えっ……? 噓だろう……アイツの右手には氷の魔剣を持っている……。
ただの魔力暴走じゃないのか……?




