552話 外に出たい
…………外に出たい……。
さすがに1週間もほとんど寝室にいると、外の空気を吸いたい。
というかなぜかここのところ落ち着きがないのは気のせいか?
「なぁ、だいぶ良くなったし外に――」
「ダ~メ~、あと1週間は安静にしてね~」
隣のイスに座って監視しているエメロッテに許可が下りるまで無理です……。
「別に回復しているからいいだろ?」
「確かに~自然に回復しているけど~。まだ魔法や薬で受けつけていないからダメだよ~」
ダメか……。
エフィナを戻してから俺の身体は少しおかしくなった――外から魔力を受けつけなくなった。
エメロッテの龍脈やエリクサーを飲んでも回復することはなかった。それに魔剣たちに魔力が供給されていない。
変化に敏感なエメロッテでもわからないらしく、一時的――後遺症と判断され、治るまで安静にしている。
別に領外に出るわけではないし、過度に動くわけでもない。
心配するのはいいが、相変わらず過保護で困った……。
まあ、我慢できるのならいいが、外に出たい衝動が抑えきれないのはどうしてだ?
普通なら我慢できるが、今日は無性に外に出たい……。
まさかメアのやつ、食事に薬でも盛ったか?
供給がされなくなってから――。
「フフフフフ……ワタクシが創った特製のマナポーションでございます……。これを飲めば一発で治ります……」
と青色に輝く滋養強壮剤を飲ませようとしたりして、何度も誘ってきたりする。
当然、エメロッテにお怒りを受けて舌打ちして部屋を出るのがしばしば……。
メアは我慢の限界のようです……。
とはいえ、みんなに供給されないのは問題ではある。
治るまでほかので補ってくれとして言いようがない。
まあ、メアだけだが、別の問題として約1名――。
「レイ、元気なった~?」
エフィナは勢いよくドアを開けて飛びついて――。
「まだダメだよ~」
エメロッテがキャッチして開けている窓に投げ飛ばした。
手際が良いことで……これが数回くらいならいいが、1時間ごとに来るのは困る……。
そんなすぐ治るわけではないのに……。
あっ、【飛行】を使って飛んで戻ってきた。
「ちぇ、なんでさ~ボクはレイとデートしたいよ~」
「駄々こねてもダメ~」
「俺は別に体調は平気だぞ……」
「ほら~レイだって言っているから大丈夫でしょ~?」
エフィナは問題ないと思って俺とデートしたがる。
ただ場所が王都とのことで、エメロッテは反対である。
「エフィナちゃん~、私だって主ちゃんとデートくらいしたいわよ~。我慢してね~」
ああ、あまりにもしつこいから【龍圧】を使っている……。
「へぇ~、嫉妬とは珍しいね~。ボクはそういうふうに育てた覚えはないよ~」
エフィナさんも対抗して【龍圧】を使って睨み合いのではありません……。
「なぁ、エフィナ……もう少し待ってくれ……? デートなんていつでもできるからさ……」
「ちぇ、しょうがないな……。レイに免じてやめるよ。ほらエメロッテもやめだよ」
「うんうん、それでいいのだよ~」
2人ともやめてよかった……。だが、遅かった……外を見るとみんなが警戒して集まってくる……。
「気にしないで~、ただの遊びだから~」
エフィナは笑顔で大声で言うと解散してくれた。
「みんな大袈裟なんだから~」
「ちょっとしたくらいなのにね~」
いや、2人で【龍圧】をやっていれば驚くだろ……基準が違う……。
「けど、早く治ってね。ティーナたちがお礼が言いたくて会いたがっているからね」
ですよね、すぐ報告にいけないのは申し訳ないです。わかってくれるとは思うが。
「そのうちと言ってくれ……」
「うん、じゃあデートにいけないならメアと王都に行こうかな~。メア、最近ストレスが溜まっているから発散させないとね~」
メアを気分転換させてくれるのはありがたい。
ただ不安なのが――。
「くれぐれも変なことはしないように」
「大丈夫大丈夫、ソウタにボクの姿を見せつけ、色気を使って誘って、騎士たちの目の前でイチャついているところを見せつけるようなことはしないよ~」
「する気満々だな!?」
「大丈夫大丈夫、挨拶程度だから心配しないで~それじゃあ行ってくるね~」
そう言って部屋から出ていった。
不安でしかない……。それでメアのストレスが解消するとは思いません……。
ただの一時しのぎです……。
「エフィナちゃんは落ち着きがなくて困ったね~」
「変なことしないかぎりは好きなようにしてくれ。その分楽しんでもらえればいい」
「けど~ここまで子どもっぽいのは疲れるよ~。だって――あら~もうお茶の時間だわ~。もうこの話はいいとしてお茶にしましょう~」
不満を言い出すと思ったらお茶を優先しましたね。
本当にブレません……。
俺もお茶をもらって、外に出たい衝動を抑えよう。




