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548話 以前より


 森の中に入ると、地面からものすごい振動が――。


「「ハハハハハ!」」


 先王と大妃が高笑いしながら斧を振って木々を軽々と切っています……。

 楽しそうでなによりです。


 倒れた木をセイレーンたちと手伝いに来てくれた小人たちが運んで木材に加工していた。

 その中にタユタの兄――サイエムがいた。


 前回と会ったときは違い、凛々しく逞しくなっている。

 この短期間で変わるものなのか?


「サイエム、レイちゃんが呼んでいるわよ!」


 オーロラが大声で呼ぶと、俺たちに気づいて作業を中断して向かってくる。


「これは恩人殿、来てくれたのですね」


「ああ、元気そうなりよりだ。ここの島での生活は慣れたか?」


「おかげさまで不自由なく暮らしています。あとは早くみんなが住める家を完成させたいところです」


 嫌な顔もせず穏やかに接してくれる。

 このままでいてほしいところだが、頼まれていることだ仕方がない――。


「それはよかった。本題に入るが、コナーズとタユタに言われて様子を見に来た。あの夫婦はお前を心配しているぞ」


「そうですか……。俺は大丈夫と伝えてください……」


 怒ると思ったが、落ち着いて返してくれた。

 ここまで変わるとは意外だな。だが、内心嫌だとは思う。

 これ以上は刺激してはいけない。


「わかった。それだけだからな。じゃあ、俺はこれで――」


「ま、待ってください! タユタとコナーズはどうなっているか、し、知りたいです!」


 後ろに振り向いた瞬間、口に出す。気になってしょうがないのか。

 

「お偉いの監視に解放されたばかりだ。今は俺の領地に戻ってのんびり暮らしているぞ」


「そうですか……よかった……」


「俺の領地は安全だから心配いらないぞ」


「それはわかっています。ですが……酷いことを言ってしまい……俺のせいでみんなから離してしまって……後悔しています……。言い訳になりますが、頭に血が上って……感情が抑えきれなかった……。本当に後悔しています……」


 反省までしているのか。以前の面影はまったくもってない。

 シルキーの言うとおり素は優しいのかもしれない。


「謝りたいのか?」


「はい……。タユタとコナーズがよければですが……」


「わかった。伝えておく。もし、あの夫婦が面会をしたいと言っても、お前たちは忙しいからある程度落ち着いてからな」


「ありがとうございます……。俺はいつでも待っています」


 サイエムは深くお辞儀をする。

 ここまで謝る意欲があるなら仲直りするのも時間の問題だな。


 長く問題になりそうと思ったが、あっさり終わるのは良い方向である。


 さて、やることもやって、ゆっくり休んで明日に備えるか――。



 ――――◇―◇―◇――――



 ――あれから1ヶ月経つ。


 何事もなく平和に暮らしている。

 本当に長閑な日々を送っている。


 毎回トラブルが起きていたのに噓のように消えた。


 平和なのは良いことだ。


 だが、警戒は忘れてはいない――あの禁忌野郎がまた来るからだ。

 アイツの性格からしたらすぐに来そうと思ったが、そうではない。

 

 まあ、致命傷まで与えたから力を戻すまでおとなしくしているとは思う。

 

 力が強くなろうが、俺には関係ない……今度こと終わりにしてやる……。


 それと、良い報告が入ってきた。

 帝国軍がシンガード近くにやってきたが、周りの魔物にやられて撤退したと王様から連絡がきた。

 魔物は時間稼ぎくらいと考えていたが、撤退まで追い込まれるとは嬉しい誤算である。


 まだ気は抜けない状況だが、シェルビーはひと安心していると思う。

 このまま戦わずして勝てばメデアコットの戦略にも影響をもたらすだろう。


 この一ヶ月は良いことばかり続いている。

 ただ……エフィナが目覚めない以外は……。


 エメロッテに聞いても異常はないの一言だけだ。


 異常がないのは嬉しいが、不安でしかない……。

 感覚だが、本当に消えてしまうのではないかと思ってしまう……。

 

 なぜか最近ネガティブに考えてしまう……。

 いや、絶対にないと信じるしかない。


 だが……せめて返事くらいはしてほしい……もうエフィナの誕生日は過ぎたぞ……。

 せめて……せめて、あの空間で「おめでとう」くらいは言わせてくれよ……。


 俺は必ず――。


『なに……不安に……なっているのさ……。らしく……ないよ……』


「え……エフィナ!? 大丈夫なのか!?」


『な……なんとか……ね……。とりあえず……みんな……魔剣たちに……伝えたい……ことが……ある……。み、みんな……レイに……集合して……』


 みんなに? 良い方と悪い方どっちだ?

 いや、絶対に悪い方ではない。絶対、絶対に――。

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