544話 同じ思想
話がまとまり、夕食の時間になった。
夕食は輩3人組が指導して俺の領地で穫れた食材を使ってカレーを作ってくれた。
さすがに米はまだ早いと思って主食はパンである。
みんな喜んで食べてくれている。
「美味しい……知らない食材に知らない料理……君たちはいつもこんな美味しいものを食べているのか……? 羨ましい……」
辺境伯にも絶賛でした。
しかし、全員集まると、この大陸では差別されている獣人がかなりいる。
3割くらいはいる。 それも差別しないで仲良く輪に入っている。
王様が言っていることは本当だった。
「辺境伯、この獣人たちは……?」
「領民として暮らしている者たちだ。それがどうしたかね?」
「この大陸では獣人を差別していると聞きました。それが一切ないのが驚いています」
「それは君たち――プレシアス大陸と同じ考えだよ。獣人は人として何も変わらないじゃないか」
同じ思想だったのか。
こういう考えの人が多くいればこの大陸に平和なのにな。
「でしたら、あの甘ちゃん王子より辺境伯様の方が帝王に向いていますこと……。帝王になるのはいかがでしょうか……?」
メアさん、急に何を言い出すのです……。確かに俺もちょっと思ったが、まだ辺境伯のことを知らない……。
「わ、私もメア様に賛成でございます! お父様の考えが広まればこの大陸に平和が訪れます!」
シェルビーもか……。まあ、王子が嫌いだし帝王になることを認めていないか。
すると、辺境伯は笑顔でシェルビーの頭をなでる。
「気持はありがたいが、私が帝王になったところで、皆を変えられる自信がない。もう人前で立つは疲れる。領地を管理くらいがやっとだよ。だからフレリットに任せて裏で指示することにはするよ」
「そうですか……。わかりました……」
裏方に徹するのか。しかし裏で指示とかまるで――。
「裏の支配者ですこと……」
メアの言うとおりだ。
実質、帝王になるということではないか。
そうなると王子が帝王になるのは都合が良いのかもしれない。
まあ、平和になれば誰でもいいけど。
それにしてもライカとシエルは遅いな、どこまで行っている?
もう夕食を食べ終えたぞ。
「すまん、狩りに夢中で遅くなった!」
シエルに乗ったライカが大声で叫び降りてきて、無限収納から、大量の鳥や蛇、食べられる魔物を出す。
「こんな大量に……。しかも高級食材のコカトリスまで!?」
辺境伯は大変驚いていました。
コカトリスか、明日はから揚げにするようにお願いするか。
そのあと、冒険者が集まって解体が始まった。
「主よ、ちょっといいか? できるだけ人気のない場所で」
遅いと思ったらやっぱり何かあったか。
俺たちは誰のいない場所――暗い森の中に移動した。
「ここならいいだろう。それで、怪しい奴でも見つけたのか?」
「そうだ。西の方に邪石十数と、バラバラに向かっていた。おそらく、偵察隊だと思う」
ちょっと面倒なことが起きたな……。
だが、タイミング的に向かってきてもおかしくないか。
「すぐ来そうか?」
「いや、かなりの距離はある。あの速さだと2~3日はだろう」
かなりの距離で獲物を狩ってきたな……。
まあ、そのおかげで見つかったしな。
「だから念話で伝えず、様子を見ることにした。儂が手を出すと面倒になってしまうからな」
「ライカの判断は正しい。さて、その偵察隊はどうするか……野放しにはできない……」
「でしたら、向かう前に始末するのはどうでしょうか……? 邪石をついているならば遠慮はいりません……」
メアの言うとおりだ邪石がついているなら話は別だ。
バレないように始末すれば問題ない。
「夜中に決行する。このことは誰にも言わないように」
「そう思った。話した以上、儂もやる。主らだけ手を汚すわけにはいかん」
「もうすでに汚れているさ。悪いな付き合わせて」
「お互い様だ。じゃあそれまでゆっくりしているぞ」
ライカと考えていることは同じだな。
手を出さない話だが、見過ごすわけにはいかない。
俺たちのやり方で手伝うまでだ。




