表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/905

53話 親友と稽古


 ――次の日。


 ブレンダは宿に戻ってからずっと傍にいたままである……。


『まさかここまで効果があったとは……』


 エフィナもこれは予想外みたいでした……。

 魔法学校の不安もあるし最後までこのままでいいか。

 

 それを見たセバスチャンはメガネが光ったような気がした……。

 

「これは旦那様に報告を……」


 いつもながら嫌な予感しかしないのだが……。


 朝食を終え、約束どおりフェンリとの稽古に、ギルドに向かう――。


 中に入ると、ホールにはアリシャたちがいた。


「レイじゃないか! この間はありがとう!」


「どういたしまして。その後、商人は大丈夫だったか?」


「レイが行ったあと、1時間経って目を覚ましたよ。それで異常種擬きの斧を見せたら気絶してまた1時間待たされたけどね」


 その商人大丈夫なのか……その内ぽっくりいきそうな気がする……。


「そうか……あの斧はどうしたんだ? 換金でもしたのか?」


「あれは鍛冶屋に行って斧を使って私たちの武器を作ってもらうことにしたよ」


 有効活用しますな。

 待てよ……カルムに行くときその特注した武器はどうするのだ?

 この場合は商業ギルドに送ってもらうのか?


「その特注した武器はカルムまで送ってもらうのか?」


「ああ、そうだよ。武器が出来上がるまで2週間かかるみたいだから職人さんに商業ギルドに頼んで送ってもらうように頼んだよ」

 

 手際が良いですな……。 


「ところでレイたちはギルドに?」


「ギルドマスターの娘と稽古の約束したのだよ」


 すると周りがその言葉を聞くとざわつく――。


「ボスの娘と稽古だと……」

「やめてくれ! 稽古とかうんざりだ!」

「ひぃぃぃぃ! 聞きたくない!」


 …………えっ!? みんなフェンリとの稽古嫌なのか?


「周りの反応が悪いけど大丈夫……?」


「何度か稽古しているが、久々だからなんとも言えない……」


 階段からものすごい勢いで駆け下りてくる――フェンリだ。

 俺の匂いがわかって来たか……。


「待っていたぞレイ! さあ、稽古場に向かうぞ!」 


 尻尾を振りながら、目を輝かせている――そんなに楽しみにしていたのか……。


「ムムム……」


 それを見たブレンダはいつものように顔を膨らましている。


「わかったから引っ張らないでくれ、ということだ悪いがここで――」


「私も稽古見ていいかな?」


 やっぱり気になるか。


「別に見るのは自由だぞ。さあ、早くしてくれ」


「じゃあ、見るよ!」


 アリシャたちは稽古の様子を見ることになった。


 こうしてフェンリに連れてこられたのはホールの隣にある稽古場である。

 頑丈な扉を入ると――広い空間で壁と床はほかとは違う材質で作られている。


『ここはスゴイね! 壁と床全部ミスリルで作られている!』


 贅沢ですね……さすが大陸一のギルドだけあってすごいですね……。


 それにいつの間に、オルリールさん、エミーニャ、ギルドの人が大勢集まってくる……。


「いつの間に来たのですか……」


「それはレイが久々に成長したところを見たくてな! あと、あのミノタウロスを倒したから気になるぜ!」


「そうだにゃ! ミスリルカードの実力はみんな気になるにゃ!」 


 そうですか……そんなに期待する程ではないけど……。


「オレは準備できたぞ! さあ、早く!」


 フェンリは稽古場に置いてある切れない鉄の大剣(グレートソード)を持ってきた。

 やっぱりいつも使っている武器でくるか。


 さすがに木製の剣では受け止めることができない。だったら――【武器創造】で切れない鉄の剣(アイアンソード)を創造し――右手に持った。


「にゃ!? アイテムボックスから出してないにゃ! これはユニークかにゃ!」


 エミーニャは相変わらずいい反応をしますな……。


「切れない剣を出したから大丈夫だ」


「それはわかっているぞ。どうして右手に持っているのだ?」


 気づいたか。何度も稽古やっているからわかるか。


「左手ばっかりだと。訛るからな」


「そうか、それじゃあ始めるぞ――」


 フェンリはいきなり高く飛び――そのまま剣を振ってくる――。

 いつものように単純だがここは受け止めた方がいいな。


 魔力を少し込め――金属が鳴り響き、受け止めた。

 相変わらず馬鹿力だな……こんなの受け止める奴なんてあまりいないぞ……。


「さすがだな! それこそ親友だ!」


「それはどうも!」


 そのまま大剣を弾き――フェンリは後ろに下がり、体制を整える。


 すぐさま正面から突っ走り――振り上げた。

 こちらも同じように――振り上げる。


 

「――――豪斬!」

「――――豪刃!」



 ――お互いにその衝撃で後ろにずり下がる。


「楽しいぜ! レイ! こんなの久々だ!」


 まったく、これだけ力を出せば周りも手に負えなくなるだろう……。


「どんどんいくぜ! もっと楽しませてくれよ!」


 笑いながら尻尾を振っている――相変わらずの戦闘狂だな……飯を食っているときよりいい顔をしている……。


 まあ、いつものように受け流せばいいか――。


 フェンリは容赦なく大剣を振ってくる――それを受け流す。

この稽古は長くなりそうだから少し魔力を調整しながら剣を振る。


 しかし……フェンリは剣を振るたびに魔力がどんどん強さを増していく――これ以上使ったらぶっ倒れるぞ……。


『この子【狂化】のスキル持っているね! 今は疲れも痛みも感じないから魔力が尽きるまで半暴走状態だからレイも大変だね!』


 いつの間にそんな危ないスキルを覚えたのか!?

 戦闘狂だから自然と覚えるか……。


 しょうがない、魔力が尽きるまで付き合う――。


 ――1時間経ったが全然終わる気配がない……。

 これはギルドのみんなが嫌がるのも当然だな……。

 

「楽しいぜ! 楽しいぜ! 楽しいぜ――!」


 もう楽しいしか言っていない……これ半暴走ではなく完全に暴走状態だろう……。

 これだと【狂化】スキルを使いこなせていないな。


 キリがないからこちらも攻めますか――。


 フェンリから距離を取り――鉄の剣を解除し――再び【武器創造】で切れない鉄の刀を創造し、左手に持つ――。

 そう、模造刀みたいなのを創造した。


 

「不思議な剣だな! なぜ、剣を抜かない!? 抜かないならオレからいくぞ!」


 フェンリは高く飛び出し――。


「おい、それはダメだ!? レイ避けろ!」


 オルリールさんが慌てて大声を出した――そんなに危ないのか、確かに見たこともない技だが問題ない。



「――――狂烈斬!」


 

 ――刀を納めた鞘で受け止める。



「何!? 何もしないで止められた……」



 少し正気に戻ったか。これはお返しだ――。



「――――抜刀・一閃!」



 右手で刀を抜き――魔力を込めた斬撃を出す――。


 フェンリは大剣で受け止めたが後ろに仰け反る。


 再び刀を納め――フェンリに近づき――。


「――――抜刀・翔斬!」


 ――突っ込みながら抜刀する。


 まだ仰け反っているか、フェンリは攻撃をせず、大剣で受け止めるが――剣を弾き、そのまま後ろに飛ばした――。


 さすがに【狂化】してもこれはひとたまりもないだろう――。


 だがフェンリは少しよろけながら立ち上がる…………まだやるのかよ!?


「楽しいぞ! 次はオレの番だ!」


 逆に火がついてしまったか……けど、フェンリの魔力が少ないからこれで最後かな。


 フェンリは大きく息を吸って、構えた――。


「――――狂乱走斬!」


 これは普通に受け流せないな、だったら――。


「――――抜刀・剣輝乱華!」


 ――フェンリの不規則な斬撃をこの技でタイミングよく合わせて何度も受け止める。


 ――そしてフェンリは魔力が尽きてうつ伏せに倒れこんだ。


「これで満足か?」


「ああ、大満足だ……動けない……」


 動けないとか言う割には尻尾を振っているのだが……この様子だと本当に満足したようだ。


 それを見て周りから歓声を浴びる――。


「すげぇ!? ボスの娘を倒したぞ!」

「なんだアイツ!? 強すぎだ!」

「ボスの娘を負かすなんて…………とんでもないな……」


 これ稽古だよな? 

 決闘じゃあ、あるまいし…………。


「お兄ちゃんスゴイ! フェンリを倒した!」


 ブレンダは喜んで飛び跳ねていた……いやこれ稽古なんだけど……。 


『レイ、おもしろい使い方をするね! 鞘に魔力を溜めてそれを開放し、刀を引き抜く。通常のより威力が増して強力な技になる。よく考えたね!』


 エフィナは気づいたか、確かに鞘に魔力を込め、抜刀することで威力が上がる。

 あと鞘に魔力が溜まっているから強力な攻撃も受け止めることができる。 

 だけどデメリットもある。

 強力な攻撃ができるが、その分魔力の消費が激しいから実績向きではない。

 もっと魔力コントロールの練習をしないとダメだ。


 久々に稽古したとはいえ……フェンリは異常に強くなったな……これだとAランクの魔物は普通に倒せる。

 20歳までにSランクにいけそうな感じがする。


「フェンリを上回るとかスゴイにゃ!」


「まったく、一時はどうなるかと思ったが、よくフェンリの攻撃を耐えたな! 久々に面白れぇのを見れたぜ! ありがとなレイ!」


「いいの見れて本当に良かった! これは参考になる!」


 まあ、みんな楽しんでくれたからいいか。


 フェンリはうつ伏せのままだが、このままでいいのか……?


「大丈夫か? マナポーションでも飲むか?」


「やめとけ、飲んだらまた稽古するとか言い出すぞ」


「え~ねーちゃんと稽古がしたいぜ……」


 あれだけ魔力を使ってまだアイシスとやりたいのかよ!? 考えられん……。


「私は明日でも大丈夫ですよ」


 明日までいるから問題ないけど、それまでに回復するのか?


「ということだフェンリ、明日にしろ」


「わかったよ父ちゃん……我慢するよ……明日よろしく頼むぜねーちゃん……」 


 我慢って……恐るべし戦闘狂……大人しくしていれば美人な獣人なのに……。

 

 ――その後、フェンリの体が動くようになってから、昨日行ったレストランで昼食を摂り、のんびりした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ