542話 防衛強化
辺境伯はゆっくり休んでくれと言うが、そうもいかない。
ヴェンゲルさんとヤーワレさんは、デムズさんと相談、商会組と輩3人組は食材の扱いのレクチャー、フランカとチヨメは武具のメンテナンス。シエルとライカは肉――食料調達。
そして俺とメアは――。
「レイ様、メア様、私もよろしいでしょうか?」
「シェルビーはゆっくりしていいぞ。辺境伯といろいろと話したいことがあるだろう?」
「いえ、時間はたっぷりあります。ここにいるかぎりいつでも話せます。お二方は何かお考えがあるとお見受けします。どうか私もお供させてください」
これから領地を防衛を強化を考えた。ヴェンゲルさんと相談して以前、スタンピードと同じように街を地魔法で囲むようにする話を進めている。
そのため、周りの確認をする。3重に壁を作っているけど、念には念を入れる。帝国軍を絶対に侵入させない。
聞こえていたか。
「俺はいいが、外に出るけど、辺境伯の許可が必要だぞ」
「私はかまわない。強いお二方がいれば娘のことは心配ない。くれぐれも気をつけて行きなさい」
「ありがとうございます! では行ってまいります!」
案外とあっさり許可してくれるのか……。
とは言ってもここに来る途中――上空で確認したからだいたいは把握している。
直接確認しないとはいけないが。
俺たちは領地の外を確認しに行く――。
「――――バカヤロー!」
ヤーワレさんの怒号で振り向くと若い冒険者たちが泣いていた。
説教しているみたいだが、何かあったのか?
「死ぬ覚悟はあるって言うな! もっと命を大事にしろ!」
なるほど、軽々しく言ったのを説教しているのか。ギルドマスターとして――。
「まだ天使にしか見えないお前たちをここに置いておけない! 俺のとこで避難だ!」
そっちかよ!? よく見たら童顔の人しか説教されていませんでした……。
「ヤーワレ……そこはお前が口をはさむところではないだろ……。覚悟があって――」
「俺は認めないぞ! 辺境伯に話してくる!」
もう暴走が止まりませんね。
滞在期間中ずっと揉めそうだ。
そう思いつつ、門前に着くと門番をしている冒険者が俺たちに気づいた。
「門を開けることはできないのか?」
「残念ですが、辺境伯様から門を開けることが許されていません。ご理解ください」
「お父様から許可をもらいました。開けてくださいますか?」
「申し訳ございません。辺境伯様から確認をしないといけません」
「私の顔立ててもでしょうか?」
「お嬢様でも無理でございます」
それもそうか、ドミベック商会の件でもう外部からは遮断しているか。
「なぁ、ちょっと調べたいことがあって外にいきたいのだが、飛び越えるのはダメか?」
「飛び越える? 可能なら問題ありません」
意外にガバガバだな……。いや、ただ門を開くなと言われただけか……。
おかげで手間は済みそうだ。
「じゃあ遠慮なく、シェルビー、ちょっと失礼するよ」
「はい、お願いします――」
「えっ、ほんとに――――ええぇぇぇ!?」
俺はシェルビーをお姫様抱っこして、空高く飛び、壁を飛び越えた。
20mくらい高さはあるが、余裕である。
「フフフフフフ……大げさな反応で面白いですこと……」
まあ、俺たちが規格外ってのもあるが……。
問題なく、外に出ると、オークとコボルト森の中にいる。
その前に魔物反応に気づいていたが、ここまで近くにいるとはな……。
要塞にしていたのは魔物から守るためだったか。
こんな辺境だと、あり得ない話ではないか。
ひょっとしてこいつら使えるかもしれない。
シェルビーは気づいたのか、身体を震えている。
「まあ、怯えてかわいそうに……ワタクシがお仕置きを――」
「まった、このまま放置するぞ」
「どうしてですの……? 放置とは焦らしてくれますね……ですが、そんな主様が好きです……」
いったい何を想像した……?
顔を赤くして照れるのではありません……シェルビーに悪影響です。
「放置して帝国軍と戦わせる考えだ……。オークとコボルトなら繫殖力も高く数も増えて多少は役に立つだろう……?」
「なんとそのような考えを……。フフフフフフ……醜い者同士の戦いをさせるなんてさすが主様でございます……。ワタクシと趣味嗜好があってとても嬉しいです……」
たまたまメアのお好みのやり方になっただけの話だ……。
「た、確かに魔物を活用すれば戦力を削ることができます。さすがレイ様でございます」
「だが、デムズさんと辺境伯に相談しないといけない。まずはそれからだ」
「わ、私も――レイ様の考えは大変良いので協力します!」
まさかシェルビーが協力してくれるまでの良い案なのか。
シェルビーが協力してくれるなら辺境伯との相談はスムーズになるかもしれない。
外にいるライカに倒さないように念話で伝えて、ここの用は済んだ。
領地に戻って次のことを考える――。




