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541話 辺境伯


 数分経ち、落ち着きを取り戻した辺境伯とシェルビーは俺たちに振り向いて頭を下げる。


「ありがとう……内戦中に娘に会えると思わなかった……。申し遅れた、私はこの領地――シンガードを治めているブラントン・クレメスと申す。娘の帰省、物資運搬をしてくれ感謝しかない。君たちのおかげで持ちこたえそうだ」


 この人、お偉いさんなのに礼儀があり、しっかりしている。

 幼いシェルビーが品格があるのは、この親がいるからこそである。

 本当の親子ではないが、この親にしてこの子ありと言いたい。


「お前たちはズイールの希望だからいくらでも支援してやる。さっそく、物資を置きたいんだが」


「来て早々、申し訳ない。ここに置いてかまわない。皆が運んでくれる」


「わかった、レイとミツキ、出して――」


「ヴェンゲル!」


 大声で叫んで駆け寄ってきたのはオールバックの銀髪で50代くらいのガタイの良い男だ。


「ようやく総監のお出ましか、久しぶりだなデムズ、かなり老けたな」


「お前に言われたくないわい! 久しぶりだな、まさかお前が来るとは思わなかったぞ」


 この人がズイールのグランドマスターか。


「お前が無茶をするから当然だ。物資を出すから手伝ってくれ」


「それは助かる。お前たちも運ぶの手伝え!」


 俺とミツキさんは物資を出すとみんな、目を輝かせていた。


「おい……なんだこの高品質な武器は……。み、ミスリルまで入っているぞ!?」


 デムズさんは気づいたようだ。

 俺たちが送る物資の中にはミスリルを入れた武具がある。

 さすがに全部入れることはできないく、確かフランカが言うには鉄9割、ミスリル1割と言っていた。

 それでも普通の邪石を砕くこともでき、耐久性も問題はない。

 もちろん、チヨメも手伝ってくれた。


「これは嬢ちゃんたちが作ったものだ。大事に使えよ」


「やはり、人間だけの技術だけでは良いのが作れないな……。お前とこの大陸が羨ましいよ……」


 人間主義なのは限度はある。というかメリットなんてないからな。

 

「それはお前たち次第だ。頑張れよ」


「わかっている。こんな良いものを送ってくるからには絶対メデアコットを占領する」


「まずは、ここの盤石を固めて、撃退してからの話だ」


「わかっているわい!?」


 ヴェンゲルさんはツッコミを入れると、周りは大笑いして良い雰囲気である。

 いろいろと不安があったろうが、多少は安心しただろう。


 デムズさんの指示で周りは物資を運んでいく。

 とりあえず依頼は完了した。


「君がアマガセ子爵殿とメア君でいいのかな?」


「はい、そうですが」


「本当にありがとう……。マナシだと思っていた娘が魔力が溢れるほど出してくれるとは、君たちは命の恩人だ……。感謝しきれない……。これで私が死ぬまで娘が長生きできる……」


 再び頭を下げて涙を流して言う。

 そうか、魔力がないと短命と思っているのか。

 この大陸の平均寿命はわからないが、なくてもそれ相応に長生きはする。


 だが、シェルビーの魔力からしたらまず、質がよく、老けはしないだろう。

 余裕で200年くらいは長生きできるはずだ。

 

「たまたま治せただけなので頭を上げてください。もちろん、お礼は結構です。教師として生徒を助けたまでですので」


「だが、大事な娘を治したい恩人には変わりはない。この状況ですぐにとは無理だが、謝礼したい」


 いいって言ったのに、義理堅い人だな……。王様に借りを貸すと話は決まったがまさか借り=謝礼と思っているのか……。

 なんか何度も断っても無理そうだ。辺境伯が気が済むように受け入れたほうがいいのか……?


「まず、自分を優先してください。話はそれからです」


「寛大な心、感謝を――」


 別に寛大でもないと思うが……。

 さて、辺境伯の挨拶? も終わったことだし、できるだけのことはしよう。 

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