540話 内戦の大陸へ
――翌日。
今日からシンガードに行くのだが……寝不足である……。
昨日は散々だった……。
「なんか……すまん……」
本当です……ヴェンゲルさん、先に戻るのではありません……。
言ったのだから責任もって残ってほしかった……。
というかはぐらかせて早く戻りたかった……。
準備をして屋敷を出ると、雪は止んでおり、快晴だ。庭にはヤーワレさんとジェリックたちが待っていた。
「ムフフフ、天使がいる……。なんて幸せなんだ……」
小人たちを見た瞬間、鼻血を垂らして興奮するのではありません……。
昨日、双子の天使のことを言ったら大量に出して俺と同じ寝不足のはずだが、ピンピンしている……。
遠足ではなく仕事ですよ……。というかシェルビーもその対象で見ているよな……?
シンガードに行くので緊張をもってください……。
「くれぐれも気をつけてくれたまえ」
みんなシエルに乗って、侯爵家族と騎士たちが見送り、空高く飛んでシンガードへ――。
昨日は雪で遠くは見えなかったが、壁で覆われた街――メデアコットが見えて通っていく。
すでにズイール大陸に入ったのが実感しないが、ここから油断禁物だ。
「街にはエルフはいませんね」
えぇ……サーシャは本当に見えるのかよ……。完全に鷹の目ですね……。
まあ、俺も【魔力感知】でわかる範囲だけど。
確認してみたところ一人もいなかった。
建物の中にもいなく、メデアコットにはいないことがわかった。
ここにいなければ、ほぼ見つけることはないだろう。
あとは北側に進むだけだ。
ド変態信者はどこに行ったかわからないし、そう簡単にはいかないか。
――2時間後。
メデアコットと隣といってもかなりの距離だ。
シエルに乗ってもまだ着かないとは……。
周りは山だらけで街――村すらない。
完全に帝王は辺境伯を孤立させたかったらしいな。
暗殺させないために無理やり引き離したのは間違いない。
寒さもなくなり、暖かい地域に移動をした。
もう少しで着くと思うが――。
「あそこが、シンガードです。そのまま屋敷に方へお願いします」
シェルビーが言うと――見えてきたのは3重に分厚い壁で囲まれている。
まるで要塞だな……。ここまで厳重にしていれば帝国軍が侵入するのは難しいだろう。
空でもわかる、大きな屋敷に向かうと、俺たちに気づいて人が集まってくる。
警戒はしていなく、不思議そうに見る。
「シェルビー嬢が帰ってきたぞ!」
シェルビーに気づくと、周りは歓声があがる。
やっぱり辺境伯の令嬢が帰ってくると嬉しいよな。
「お出迎え感謝します。戻ってきて申し訳ございませんが、お父様と……お父様……」
「シェルビー……よく戻ってくれた!」
屋敷から慌てて出てきたのは――黒髪短髪で髭を生やした40代くらいの正装をした男がシェルビーに駆け寄って抱きつく。
この人が辺境伯か。
「お父様……会いたかった……」
親子そろって涙を流して再会を果たした。
無理もない、この大陸は内戦でいつ戻れるかわからない危険な状況である。
本当によかったな。
感動の再会で周りはつられて泣き始める。
「ウォォォォォ! よがったぁぁぁ!」
特にヤーワレさんが鼻水を豪快に垂らして大号泣していた……。
同情するのはとても良いですが、もう少し抑えてください。
少々、周りにドン引きされてますよ……。
とにかく、2人が落ち着くまで待つ。




