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538話 孤児院


「いいな~、ボクも行きたい~」

「クエスとチャムだけずるい~」

「わたしも行きたい~」


 子どもたちがうらやましいのか、駄々をこねる。

 別に何人来ても変わらないしな。

 それと、ヤーワレさん……つぶらな瞳で俺を見るのではありません……。

 わかりましたから……。


「じゃあ、みんな来てくれ、歓迎するよ」


「「「やった~!」」」


「みんなを……なんと聖人なお方でしょう……」


 ファルファは俺を拝むのでありません……。

 本当に大袈裟だな……。


「レイ君……みんなとはファルファちゃんも含んでいるのか……?」


 ヤーワレさんがうかがってくる。

 ん? ファルファもいないとダメなのか?

 理由があるなら一緒に来ても問題はない。


「そうですけど、何か?」


 そう言うとヤーワレさんとファルファは涙を流した……。


「ありがとう……君で本当によかった……」


「私も……レイ様の領地に行ってもいいのですね……あ、ありがとうございます……」


 2人ともガチ泣きしてどうした……? ジェリックたちも泣いているのですが……。

 かなり事情を抱えているのかもしれない……。


 みんな行くとして、学校は確か3ヶ月後に2週間ほど休みなるはずだ。クエスに予定を合わせないと不公平だからな。

 ただ、それまでに禁忌野郎とケリがつけるかわからない……ぬか喜びです……。


 まあ、約束は約束だ。いつになるかわからないが、歓迎する。


 その後、ヤーワレは落ち着きを取り戻し、子どもたち一人一人をデレデレしながらお別れの挨拶をして、終わったタイミングでようやくファルファも落ち着きを取り戻し、深くお辞儀をして見送って――教会を出た。ジェリックたちは夕食の支度をすることで残った。


「結局、全員と挨拶したのかよ……」


 ヴェンゲルさんは早くしろと急かされてもヤーワレさんは子どもに夢中で気づかなかった。

 あの人数で1時間以上はかかりますよね……。文句も言いますよ……。


「ハハハ、すまない、これからは気をつけるよ」


「まったくだ。今回は大目に見てやる。ファルファも大変だろうしな」


 ヴェンゲルさんは事情を知っているようだ。


「俺が聞いていいのかわかりませんが、あの孤児院とファルファについて聞いたりはできないでしょうか……?」


「もちろんいいとも、レイ君にはお世話になっているからね――」


 ヤーワレさんはすべてを話してくれた――あそこの教会と孤児院はアスタリカの冒険者ギルドが運営していること。個人運営である。

 侯爵からの援助は一切ないとのこと。子どもたちはファルファとギルドが面倒を見ている。

 教会の女神像がソシアさんなのかというと、ファルファが関係している。

 ファルファはズイール大陸――エルフだけが暮らしているトピアという秘境村の出身で13年前は平穏な暮らしをしていた。


 だが、帝国軍が村を見つけてしまい、無理やり村中を調査され、目に入ったのはファルファである。

 ファルファは当時、10歳と幼かったが、発育もよく大人に負けないほどの美貌で、しかも黒髪で女神ソシアに似ていたこともあり、生まれ変わりだと思われ、帝王の嫁として向か入れる話が出る。

 ファルファを差し出せば村は手厚く支援すると言われ、村中は大喜びだった。


 だが、ファルファの両親はまだ子どもだから成人してからとお願いをして帝国軍は承諾する。

 それは噓で、帝王の嫁に行きたくないファルファを逃がそうと時間稼ぎをする。


 しかし、村には帝国軍に逃がさないように監視され八方塞がりで動くことができなかった。


 ただ、時間が過ぎていくのを待つしかなかったが、ある日突然、ファルファは女神ソシアの声が聞こえるようになり、

 助言によって、帝国軍が離れている隙に両親ともに逃げる。


 それもつかの間――帝国軍にすぐ見つかり、捕まってしまう。

 両親は逃亡罪と称してその場で殺害されて、終わったと思われたが、たまたま通りがかっていたヤーワレさんとジェリックたちが、目の当たりして怒り爆発で、帝国軍を殴り倒してファルファを保護した。


 そして年月が経ち、ヤーワレさんと一緒に手伝い――院長をしている。

 ソシアさんの像は感謝として立ち上げたとのこと。宗教的な活動はなく、ただ、感謝しているだけのこと。シスター姿はあくまで正装とのことです。

 泣いた理由ついてはファルファは子どもたちの面倒で、ここを離れてなく遠出をしていない。

 俺の領地でのびのびできると思い、感極まったようだ。

 ちなみにファルファはソシアさんの加護を持っている話だ。


 壮絶な人生を送っているな……。帝王はソシアさんの容姿が好きなのか……?

 シェルビーの件もそうだが、なぜ、そこまで執着する……本当に歪んでいる……。


 だが、ソシアさんの声が聞こえるのは本当だろうか?

 そこが疑問でしか――。


『ああ、本当のことだ』


 えっ、ソシアさんの声が頭に響く。

 本当なのかよ……。

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