535話 寒い街
――2時間後。
急に肌寒くなってきた。
寒がりのシエルには厳しいかもしれない。
そう思ったらブルブル震えていた。
「休憩しよう」
『た……助かるのじゃ』
地上――平地に降りてみんなに毛布を配って温かいお茶を入れて休憩をした。
ただ、輩3人組は平気な様子で……。
「毛布はいいのか?」
「大丈夫ですぜ! アスタリカはもっと寒いので、このくらいどうってことないですぜ!」
「アスタリカは1年中、寒い場所だ。プレシアス大陸で1番寒いと思ってくれ」
と、ヴェンゲルさんは言う。
なるほど、寒い地域なのか。
「ちなみにシンガードは寒いのか?」
「いえ、1年中、暖かく快適な場所であります」
山に方と聞いていたが寒くはないのか。
ハチミツ村と同じようだ。
休憩が終わり、シエルに前に作ってもらった防寒服を着せて移動する――。
――さらに2時間後。
天候が悪くなり、雪がチラチラと降る。
進むたびに大粒になって、地上は積もっていた。
「「「わ~い、雪だ~」」」
小人3人はテンションが上がっています。
アスタリカに着くまで我慢してください。
「これが雪ですか? 初めて見ました……」
そういえばチヨメは温暖な気候で育ったから珍しいよな。
「フフフ……この雪をシロップをつけてかき氷して食べると美味しいですこと……」
「そうなのですね! 私、かき氷大好きです! では降りたら試したいです」
「噓を言うのはやめんか!? チヨメ、この雪は衛生的に悪いぞ! 食べてお腹を壊したらどうする!?」
「冗談だったのですね……残念です……」
メア……その発言鵜吞みにするからやめてくれ……。
確かにライカの言うとおりで衛生上、悪い。
ライカがまともでよかった。
チヨメが残念そうに落ち込んでいるんだが、やりたかったのか……?
小人たちも残念そうにしないでください……。というか、なぜシェルビーも落ち込む……?
かき氷なんて知らないだろう……。
そう思っていると街が見えた――。
「あそこがアスタリカですぜ! シエルのアネゴ、ここで降りてくだせい!」
さすがにワイバーンが街に降りるのはパニックになるから手前で降りて、門のところまで歩く。
しかし、立派だな……街を囲む黒い壁――金属で作られている鉄壁は白銀の世界に似つかわしくない。
黒い鉄壁にしたのは雪のときでも、街がここにあるとわかりやすくしているのか?
それに門の前には……ジェリックと同じ服装をした――いかついスキンヘッドの人が2名……。
ジャックと同じ冒険者とわかったが、門番でその薄着は寒くないのか……?
「ジェリックさんじゃないですか!? ビゲッツさん、ボートヒデさんまで!? 戻ってきたのですか!?」
「お前たちか、アニキから話がなかったのか? 俺たちもシンガードに行くぜ!」
「ジェリックさんたちも行くのですか!? じゃあ、この方たちは――遠くからお疲れ様です。さぁ、中に入ってください!」
すんなり入ることができた。
やけに腰が低いと思ったらジェリックたちはSランクの冒険者と忘れていました。
尊敬しないはずがないよな。
「冒険者が門番をするのは意外だな」
「騎士が忙しいときは冒険者が代わってやっているですぜ。多分、何かあったのかも違いないですぜ」
その忙しいが嫌な予感がしなければいいのだが……。
これから停泊するククレット侯爵の屋敷にお世話になるのですが……。
何もないことを願う。
「忙しいなら領地にいる子分を戻そうか?」
「そこまではなさそうのなので、大丈夫ですぜ」
俺の領地に派遣してくれた人――開拓を手伝った人が半分いるけど、大丈夫なのか。
まあ、足りないときはヤーワレさんが連絡してくれるから今のところ大丈夫だと思う。
中は雪がかなり降っているのに人で賑わっていた。
活気があっていい場所である。
ジェリックの案内で侯爵の屋敷に連れていってもらう。
その途中でいかつい冒険者と遭遇すると、ジェリックとわかると頭を下げる。
ヤーワレのところの冒険者は礼儀正しいな。
人を見た目判断してすみませんです。だが、薄着なのはどうかなとは思うが……。
街路地を歩いて街の中心まで来た。目についたのは――周りとは違う立派な屋敷が設置されている。
ここが侯爵の屋敷か。
「アマガセ子爵、御一行様でよろしいですね? 話は聞いております――中にお入りください」
門前で待機していた騎士が俺たちに気づいて立派な門を開けてくれた。
侯爵とは久々だな。スタンピード以来になるのか。
そういえばド変態の弟がいるとザインさんが言ったな。
真面目と聞いているし何も問題はないだろう。
「では、俺たちはこの辺で――ギルドに向かいアニキに会ってきます」
「ああ、俺も侯爵と挨拶したらヤーワレさんに挨拶に行くよ」
「そうですか、ではギルドで待っています」
さすがに挨拶くらいしないとマズいしな。
ジェリックたちとあとにして、屋敷の中へ――。




