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52話 親友に案内してもらう


 ――フェンリが紹介してくれた店に着いた。


「ここがオススメの店だ!」


 そこはちょっと洒落たレストランだ。


「ここは結構お高いのでは?」


「問題ない。レイの稼ぎを考慮していい店にしといた。もちろんオレの稼ぎでも余裕だから大丈夫だ」


 フェンリは今Cランクって言っていたな。そうなると多めに食べても大体一人銀貨1枚くらいの感じだな。

 まあ、高くても臨時収入とセバスチャンにもらった大銀貨1枚あるから問題はない。


「じゃあ、フェンリの分も奢るから、好きなだけ食べていいよ」


「本当か!? 好きなだけ食べていいんだな!」


「ああ、いいよ」


「ありがとな、レイ! さすがオレの親友だ!」


 喜んで尻尾を振っている。

 よく言うよ……親友か……確かに親友と呼べる人は年が近いフェンリぐらいしかいないか。

 

 中に入ると、少し暗めでゆったりとした雰囲気の洋食レストランみたいな内装だ。


「いらっしゃい、フェンリちゃん、今日は珍しく1人ではないみたいね」


 声をかけたのはウエイトレスをしている女性エルフだ。


「そうだ! カルムから来た親友にここがウマいと紹介した!」


「嬉しいこと言うわね、席に案内するわ」


 テーブルに案内され、座ろうとすると――。


「オレはレイの隣に座るぜ!」


 ブレンダが俺の隣に座ろうとしたが少々強引にフェンリが座ってくる。


「ムムム…………」


 ブレンダは顔を膨らませて、何も言わずに我慢した……フェンリ……少し大人げないぞ……。


 フェンリにオススメの料理を聞くと――。


「肉料理なら全部ウマいぞ!」


 それは自分の好きな物だろう……じゃあフェンリと同じ料理を頼むか。


 アイシスとブレンダも同じのを頼むみたいだ。


「店主! いつもの7つ頼む!」


 自分で同じのを3つ食べるのか……奢るとは言ったが違うのは食べないのかよ……。

 それほど好きなのか。


 運ばれてきたのは――熊肉(ハニーベアー)のステーキとパンとスープのセットである。

 カルム周辺ではハニーベアーなんて生息していないからどんな味か気になった。


 食べてみると――名前の通り、ハチミツを食べているからか肉は甘味もあり、柔らかい。

 熊肉はもっと硬いかと思ったがこれは違う――塩、胡椒だけなのにまったく臭みもなく美味しい。


「やっぱり、これは毎回頼んでも飽きなくてウマいぜ!」


 フェンリが毎回同じのを頼むのもわかる。

 これは王都の精肉店で買うしかない。


 食べ終え、会計を済ませたところ銀貨3枚、大銅貨5枚の値段であった。

 まあ、ハニーベアーだからその値段は妥当と思った――さすがに毎日食べたら懐が痛いけど……。


「次はお菓子専門店を紹介してくれないか?」


「お菓子だな。わかったこっちだ」


 尻尾を振りながら上機嫌だな。

 久々の再会だからかもしれない、それまでは依頼をただこなす日々だったのだろう。

 よく考えたら17歳でCランクはすごいことだ。

 さすがギルドマスターの娘だな。


「着いたぜ! ここが王都で1番ウマいお菓子専門店だ!」

 

 まさか1番美味しい店を紹介するとは、俺がお菓子好きなのは覚えていたか。


 この店は店内でも食べられるし、テイクアウトもできるらしい。

 もちろん、色々と食べ比べしたいから店内で食べる。


 ということで店にある全種類のケーキと焼き菓子を頼んだ。


「ご主人様……こんなに食べてもいいのですか……」

 

 アイシスは目の前にたくさんのスイーツがテーブルに置かれるのを見て目をキラキラと光らせている。


「ああ、もし気にいったのがあれば、どんどん頼んでいいぞ」


「ありがとうございます! 私……幸せです……」


 すっかりデレデレモードになってしまった。

 今回は奮発しても罰が当たらないでしょう。


「ねーちゃんこんなに食べて平気なのかよ……」


「お菓子は別腹なので問題ありません」


 全部魔力に変換されるから別腹も何もないのでは……。


 まあ、当然のように全部美味しかった。

 そういえば王都だから砂糖も売っているはずだ。フェンリに聞いたが――。


「砂糖なんて、業者優先だから一般では買うのが難しいぞ」


 カルムと一緒だった……それを聞いたアイシスは少し落ち込んでいた。

 これは通常手に入れるのに険しい道になりそうだ……。

 

「ムムム……」


 ブレンダはまたフェンリに俺の隣の席を取られたからか無言のまま黙々とスイーツを食べていた。


 そして会計の方が……金貨1枚になった……予想はしてたけど、たまにはいいか。


 その後、フェンリがいろいろと案内してくれたり、魔道具、カルムで売っていない食材を買ったりして夕方になった。


「今日はありがとな」


「お安い御用さ! 明日の稽古、忘れるなよ!」


「ああ、もちろんだ」


 バックレても獣人の鼻は利くから逃げられないだろうな……。


「じゃあ、また明日な!」


 こうしてフェンリと別れた。


「ムムム……」


 フェンリと別れてもブレンダはご機嫌斜めですな……この場合は……。 


『この子に抱きついて、頭を撫でて手をつないで帰れば?』


 いやいや、エフィナさん……それは好きな人がやれば嬉しいけど、勘違い男がやれば引かれますよ……。


『何考えてるの? 早くやらないと機嫌が悪いままだよ』


 これはエフィナの言うとおりもうやるしかないか……。


「ブレンダ……」


「えっ!?」


 ブレンダに近づき、抱きつき、頭を撫でて手をつなぐ――。


「セバスチャンのとこに戻ろう――」


 そうするとブレンダは笑顔で――。


「うん!」


 機嫌が良くなりました…………なんで?


『ほら! ボクの言った通りにすれば良くなったでしょ!』


 なぜかわからないけど、エフィナ先生ありがとうございます!

 それを見たアイシスは小声で――。


「いいな……」


 ん? 「いいな」と聞こえたが気のせいだろうか?


『アイシスは我慢してね! この依頼が終わったらたっぷりしてくれるから!』


『はい!』


 何勝手に約束しているのだ!? まあ、そのくらいならいいか……。


 こうして夕日の中ブレンダと手をつないで戻った――。 

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