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525話 先王と大妃の反応は――


 亡くなったセイレーンをどうするか聞いてみると、深海へ流す――海葬をすると言う。

 セイレーンにとって海は一部であり、亡くなった者は海になって見守っているという考えである。

 アンバー曰く、人魚族も同じ考えであるようだ。


 やはり海で暮らしているとそういう考えにはなるか。


 セイレーンたちは亡くなった同胞を泳ぎながら運ぶ。泳がない人はシエルに乗って後を追う。

 数十分経ち、先頭にいた頭が止まった。その下の海中はほかとは濃い――コバルトブルーでかなりの深さがある。


「我ら同胞が海と……ともに――」


 頭が言うと、亡くなったセイレーンをそうっと離してして、ゆっくりと沈んでいった。

 セイレーンたちは涙を流しながら歌い、俺たちは手を合わせてご冥福をお祈りする。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 コナーズは何度も涙を流して謝り続けた。

 これからセイレーンたちにどうやって向き合うか、わからないが、無理はしないでくれ。


 歌い終わり、海葬が終わった。

 

「恩人よ、すまないが早く魔法で……移動させてくれないか……?」


 頭は顔がくしゃくしゃの状態で言う。

 辛くてここからすぐ離れたいのだろう。


「わかった――――ゲート!」


 俺は空間魔法を使い、チヨメの故郷――島の砂浜に移動した。

 みんな悲しんでいるし、落ち着くまでそうっとしておく。


「「あはははは――――えっ!?」」


 高笑いして駆け寄ってきた先王と大妃はセイレーンが泣いている姿を見て驚いた。


 アンバーが事情を言い、納得してくれた。


「そんなことが……、大変だったね……」

「私と夫に任せて、住みやすい環境にするから」


「手数かけるが、頼むぞ」


「もちろんですよ。まさかズイールがまた荒れていたなんて懲りないね……」

「あんなに痛い目に遭っても、学習しないとか、どういう神経してるのかしら……」


 急に2人は魔力を出して怒っている。

 ズイールのやっていることは今も昔も変わらないみたいだ。


「申し訳ございません! これは私の責任――」


「君の責任ではないよ。よかった……ズイールでちゃんとした人がいて……君がおかしい人だったら首がいたいよ……」

「心配しないで……、善悪は認識しているから……。けど……久しぶりの怒りの感情だわ……」


 コナーズに真顔で圧をかけて怒っています……。

 

「落ち着け、お前たちはもう引退した身だからオレたちに任せておけ」


「そうと言われても……あの頃を思い出すよ……。僕も参加しようかな……?」

「引退しても現役ですよ……。少なくとも戦争経験していますから……」


 はい? 戦争を経験しているのか……?


「あの……ズイールとプレシアスは戦争した時期があったのですか……?」


「ズイールが勇者召喚したときの話だよ。表ではプレシアスは参加してないと、記録には残っているけど、裏では参加して勇者を止めようとしていたよ。それが僕と妻――魔王さんのところで行かせないようにね」


 参加していたのかよ!? 

 だから戦争経験者なのか……。


「では勇者と接触は……?」


「戦ったよ。ズイールがの兵士は弱かったけど、勇者はまったく歯が立たなかったよ」

「200年以上前だけど、あの屈辱は覚えているわ……」


 戦闘経験もあるのか……。膨大な魔力がある2人でも止めることはできなかったのか……。

 勇者ってどんだけ化け物なんだよ……。


「あのときは、僕と妻は致命傷で勇者に刺されて終わるかと思ったよ。英雄様が現れて、助けられたのだよ」


 英雄にも会ったのか……。 

 いろいろと経験していますね……この2人……。


「ちなみに英雄はどんな姿だったですか……?」


「それが、目がかすんでいてよく見えなかったよ。女性だったのは確かだけど」


 女性だったのか、記録では中性的で性別が不明とあったが……噓のようですね……。

 所詮、記録されていることはその程度か。


「僕たちの恩人でね。生きていればまた会いたいよ。気がついたら勇者は倒れて英雄様はいなかった。助けてくれたことお礼で言いたかったな……」


 その英雄は姿を現さないならもう……。寿命が長くあっても200年以上前だ。いなくておかしくはない。

 本当に英雄はわからないままだな。


「シグルド……もう聞き飽きたぞ……。かれこれ何千回も聞いてうんざりしている……。またオレに捜してくれはなしだぞ……」


 アンバーは呆れていた。

 捜索願いを出していたのか……。よほど、会いたいみたいですな。


「そこをなんとか! 魔王さんしか頼りにならないよ! この戦争が終わったらお願い!」


「オレが知らない奴の捜索は無理だ! もう諦めろ!」


 アンバーが知らないってどういうことだ……。

 何者なんだ英雄って……。考えると謎が深まる。


 というか、さっきまで怒っていた先王と大妃は英雄のことで魔力を抑えて怒りが静まっていた。

 

「英雄様のこと話したら、頑張らないといけなくなっちゃったな~」

「そうね~。みんなのために頑張らないとね~」


 2人は肩をブンブンと回してやる気なのですが……。


「チヨメちゃん、セイレーン方に家を作りたいのだけど、近くの木を切ってもいいかな?」


「いいですよ。あれは【創種】創られた木なので切り株さえ残っていればすぐ生えますよ」


 あの家の近くにある木は全部【創種】なのか……。

 すぐ再生するとか恐ろしいですよ……。


「ありがとう~、では行ってくるよ~」


 高笑いしながら2人は木が生えている森へ行った。

 

「はぁ~、面倒なことが起きなくてよかったぞ……」


 魔王はひと安心ですね。

 一時はどうなるかと、思ったが、セイレーンを思い合っているなら、今後は大丈夫そうだ。


 俺たちもできるだけ手伝って住みやすい環境にしなければ。

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