524話 身内の問題に首を突っ込む
「お取込み中、悪いけど……、コイツ――コナーズを俺に預からせてくれないか? 俺の領地で面倒を見るぞ」
「あなたの領地……? あなたはいったい……?」
「こう見えても俺はプレシアス大陸の子爵――レイ・アマガセと言ってな。これでも広い土地を持っているぞ」
「し、子爵殿ですか!? これは大変なご無礼を!?」
コナーズは急に俺に向いて膝をついた。
ん? この状況で慌てて下げる必要があるのか?
いや、ズイールではかなり貴族では上下関係がしっかりしているのか?
「頼む、コイツを今すぐ連れていってくれ!」
乱れた兄は俺の発言で少し落ち着いてくれた。
問題はここからだ――。
「恩人に連れていかれるなら私も連れてって!」
「お前はまだ言うのか!? 黙ってろ!」
「俺は構わない、身内の揉め事は関与しないからな」
「だったら、却下だ!」
「そうか、お前はどうしたい? 今のお前は何も責任を取れるほどの状況ではないぞ?」
「私は……それでも……責任を取りたいです……」
「わかった。頭、この状況をどう思う? 意見を聞きたい」
「ふむ……、俺としては……コナーズを責任を取る必要はないと思う……コナーズも被害者だからな……」
「だそうだ、コナーズ、責任を取らなくていいってよ。なら、島に一緒にいても良いってことだな?」
「俺はいいぞ……ただ……」
「父よ、そんな勝手なこと! 俺は認めないぞ!」
「息子よ、落ち着け。まだ言いたいことがある――島にもう住めない……。賊が来るかもしれないと不安がある……。みんなのために移動しなければならない……」
「ハハハ、やっぱり移住しないといけない、お前のせいでな! じゃあ、条件を出そう――お前が移住場所を探せ! 責任を取るのだろ? だったら探せ! できないのだったら、俺たちと関わるな! それが条件だ! 父よ、責任がないとか噓をつくのではない! 本当はコイツに責任を取ってほしいだろ?」
「それは……」
「言い返せないなら責任を取ってほしいだよな? じゃあ、頭の命令として受け取る! みんな聞いたか? 頭の命令――条件としてコイツに新たな移住先の提供すれば前と同じように一緒にいても良い話になった。もう一度言う――頭の命令だからな! 命令は絶対だぞ!」
「兄さん、そんな酷いことするの!?」
「お前は黙ってろ!」
また兄妹の揉め事が再開した。
兄は何がなんでもコナーズと縁を切りたいようだな。しかし、頭は優柔不断だな……どっちの味方だ?
いろいろとありすぎて頭が回らないみたいだ。
まあ、このくらいなら問題は解決できそうだ。とりあえずリフィリアに言ってお願いして――。
「――という訳だが、いいか?」
「わかった、聞いてくるよ――」
リフィリアは「ゲート」を使って領地に戻っていく。
あとは――。
「ちなみに、俺がコナーズの肩代わりになってもいいか?」
「恩人、あなたには関係ないのでは?」
さすがの兄でも助けられた人には冷静だな。
「コナーズにはいろいろとやってほしいことがあってな。その分の肩代わりだ。じゃあ、頭に聞いてみよう――それでいいか?」
「あるのだったら肩代わりしても良いぞ……」
「決まりだな、俺が肩代わりする」
「待ってくれ。あなたの領地に移住とは言わないでくれ。それではコイツの肩代わりとは言えない。別の場所をお願いする」
なんか無理やり押し通したな。これくらい想定内だ。
「別の場所ならいいよな?」
「ああ、もちろんだ。そこまで俺は野暮ではない」
「レイちゃんの領地が、嫌って言うの? セイレーンのあたくしでも最高な場所よ」
「僕も……」
「私も……」
3方、擁護ありがとうございます。
「――マスター、連れてきたよ」
リフィリアが戻ってきた、早いな。予定どおり――ライカとチヨメ…………なんでアンバーもいる……。
城から抜け出したな……。まあ、アンバーがいれば話が早い。
「お疲れ様、来て早々悪いが、チヨメの故郷に住ませてくれないか?」
「この数なら住めそうです。お父さんとお母さんのお墓の前に家を建てなければいいですよ。」
「チヨメがいいのなら儂は何もいわないぞ」
「安心しろ! この魔王がセイレーンを守ってやるぞ!」
あっさり承諾してくれた。
もしダメだったらアンバーに別の場所をお願いしようと思ったが、大丈夫だった。
先王と大妃は……まあ、なんとかなるか。
「ということで移住問題は解決した。お前たちが準備が整ったらすぐにでもいけるぞ。これでコナーズは関わってもいいな?」
「あるのか!? 誰だか知らないがありがとう! 感謝しきえない! 俺はコナーズを責任を取るとは別で一緒にいても良いけどな!」
移住先があって、頭はようやく口を開いたか。
本当に優柔不断である。
「う、噓だろ……あるのか……」
兄は膝をついて落胆する。
「証拠を見せろ」と言うと思ったが、そこまでしつこくはなかった。
「決まりだな。これからもみんなと関われるぞ」
「あ、ありがとうございます! しかし……子爵殿……私はいったい何をすればいいのですか……? 私はしがない作家です……。子爵殿にお応えするようなことは……」
「あるぞ、ズイールの今現在の情報がほしい。俺からしたらそのくらいの価値はある。それとコナーズ、その意味がわかるよな? もうズイールには帰られない――亡命だ」
「し、子爵殿……ありがとうございます!」
コナーズは泣きながら頭を下げる。
大事な情報提供してくれる人だ。今後、カギを握る存在になる。
これくらいの恩は売っておかないとな。
「だが、みんなに迷惑をかけたのは違いはない。俺の領地で反省はしろよ」
「わ、わかりました……」
「兄もそれでいいよな?」
「恩人がそう言うなら、構わない……」
さすがに兄との接触は避けたほうがいい。
とりあえず兄がわだかまりがなくなるまでは、セイレーンたちには会わさないでおく。
「決まりだな。ところで婚約者はどうする? 一緒について来ても構わないぞ」
「わ、私も一緒にお願い」
「ダメだ! 妹だけは……ダメだ……」
それでも妹が一緒にさせるのは嫌なのか。
しょうがない。俺も強引に押し通すか。
「頭、娘をどうしたい? 俺からしたら娘はコナーズと一緒にいてもいいと思う」
「俺は婚約を認めている……。娘が幸せになるならそれでいい……」
そこは認めているのだな。曖昧な発言ではなくて少し驚いた。
「父よ、また勝手なことを!? 俺は認めないぞ!」
「それは頭の命令でいいのだな? 頭の命令は絶対ってお前が言ったよな? 命令なら認めろ」
「なっ……」
兄は返す言葉はなかった。
さっき理不尽なことをしたのを兄に言っただけだが、自分もやられてわかったみたいだ。
少しは反省しろよ。
「よかった……、コナーズと一緒にいられる……」
タユタは涙を流してコナーズに抱きく。
本当に会えないと思ったのかもしれない。
とりあえず、揉め事は終わった。
あとはセイレーンたちが準備が整うまで待つ――。




