522話 転移できない理由
コナーズが落ち着くまで確認をする。
空間魔法を使用するが、発動しなかった。
まいったな……ここ周辺が無効になっているのか?
賊を倒したら使えると思ったが、そうではないらしい。
ダンジョンの仕組みなら納得がいくが、入った形跡はない。
面倒だが、ここから離れて使うしかないか。
じゃないとセイレーンの故郷に戻るのに日が昇ってしまう。
「マスター、変な魔法陣が見つかったのだけど、見てくれない?」
「魔法陣? どこに?」
「あれ――」
リフィリアが指を差すと、ゴミどもが宴をしていた中心――焚き火をしていた場所に直径1mくらいはある魔法陣が描いてあった。
おかしいだろう……ブリーゼの風上級魔法で消えるはずだ……。
しかも、サラサラとした砂浜だ。
近くにいき、確認してみると――空間魔法と術式が同じだ……構造が複雑であるが……。
俺が使えない――上級魔法であることがわかった。
なんで遠くに離れた無人島に描かれている? ゴミが描けるか疑うレベルである。 それに……魔力を流した形跡もあり、不発で終わっている。
まさかゴミどもが流したのか?
アイツらが流しても絶対に発動することはできない。
たとえ邪石を付けていてもだ。
俺が流しても絶対に発動できないからだ。
膨大な魔力があるエメロッテもわからない。
「「ゆ、勇者召喚!?」」
ソアレとセレネは魔法陣に気づくと声を荒げた。
はい? 勇者召喚?
「これって……勇者召喚の魔法陣なのか……?」
「「はい、そうです!」」
ゴミどもの仕業と確定した。勇者召喚って空間魔法で召喚できるのか……。
確かに異世界を転移させるのに納得がいく。
ということは――。
「まさかこれもソシアさんが止めているのか?」
「「そうだと思います!」」
だからか……じゃあ、ここ周辺はこれがあるかぎり空間魔法――転移系の魔法は使えなくなっているとわかった。
どおりでおかしいわけだ……。俺たちに余計なことをするな……終わっても迷惑なゴミだ……。
一番大変なのは、ソシアさんではある。
やることはただ一つ、消すことだ――。
「――――アンチマジック!」
無魔法を発動させ――魔法陣は薄くなり徐々に消えていった。
この魔法はある程度の魔法関係なら無効にして消すことができる。
ある意味、無魔法では最強各である。
これで「ゲート」が使えて、ソシアさんの負担は軽減されたはずだ。
試しに「ゲート」を使い、近くに移動する――うん、問題なく発動した。
いつでも戻ることができる。
そうしているうちにコナーズが泣き止み、落ち着いたようだ。
「気が済んだか?」
「少しは楽になったよ……」
「だが、あくまで俺のスキルの判断だ。お前は悪くないが、責任は絶対に取らないといけない」
「わかっている……。地位や名誉を捨てて、生涯、セイレーンたちに捧げるつもりだ」
コナーズは真っ直ぐな目をした。
覚悟はあるみたいだ。
「そうしてくれ。じゃあ、戻ってしっかり向き合えよ――――ゲート!」
俺は全員をセイレーンの故郷に移動させた。
視界が変わると周りは急に戻ったこと驚いていた。
「み、みんな! 無事だったのか!?」
薄暗い中、大声で叫んで駆け寄ってきたのは待っていた青年だ。
「に、兄さん!? 無事だったの!?」
「おお……息子よ……無事だったのか……」
頭の家族だったのか、泣きながら抱きついて無事を確認した。
だが、オーロラの妹と娘は……亡くなった男の方に駆け寄り、泣き崩れていた。
そこに夫がいたのか……。これだけはどうすることもできない……。
「お前……なんでここにいる!?」
頭の息子は豹変してコナーズに近づいて顔面を殴る。
「お兄さん、やめて!」
慌てて周りの男たちが引き離し、抵抗をする。
「お前のせいで……お前のせいで――住処はめちゃくちゃにされ、死者が出たんだぞ!? どの面下げてきた!?」
「すまない……」
「何がすまないだ!? 親父もなんでコイツを連れて来た!? よく見ろよ! コイツのせいで同胞が死んだだぞ!」
兄は亡くなったセイレーンに指を差した。
「本当に申し訳ないことをしている……」
「謝っても無駄だ! なぁ、みんな、またコイツと一緒にいてもまた攫われるぞ。家族を失った者はわかるだろ? それでもいいのか? 少なくとも俺は正しいことは言っている」
兄が強く当たるのは無理もない。それでも周りはコナーズを責めたりはしない。
「なんで誰も俺を賛同してくれない!? 俺たちはコイツに騙されて――」
「兄さん……もうやめて……。コナーズは何も悪くないの……。だから落ち着いて……」
「なんで、コイツを庇う!? みんな……おかしいだろう……」
今度は泣き崩れていく。
これは最初から理解しないとわからないな。
まあ、どういう経緯でなったのか聞きたかったしな。
「お前の言い分はわかるぞ。その前にコナーズが、どうして賊と一緒に来たのか聞きたい。それから判断してくれ。コナーズ、話してくれないか? 俺はお前を理解しないと今後どうするかわからない」
「なんでも話すよ……私は――」




