518話 セイレーン救出②
「どうだった?」
「セイレーンは船の中にいるぞ。アイツらが気づかないうちに助けるぞ。」
「わかったわ、あたくしは何をすればいいの?」
「そこなんだが、オーロラは【隠密】のスキルは覚えているか?」
「ええ、覚えているわ」
「なら、一緒についてきてくれ、俺だけだと疑われるから同胞の説得をしてほしい」
「任せてちょうだい!」
「説得したら「ゲート」で移動させるが、万が一に備えてリヴァも準備をしてくれ」
「わかった……」
俺はオーロラを抱きかかえて賊から一番離れている船に降り、ドアを開けて中に入り反応がある船室へ――。
ここか、ドアをゆっくり開けると――檻に閉じ込められて怯えている数十のセイレーンがいた。
しかも奴隷の首輪がつけられていた。それも子どもがまで……。
本当に腐ってやがる……。救出が終わったら地獄に落としてやる……。
「みんな大丈夫!?」
オーロラは慌てて【隠密】を解除すると、セイレーンたちは驚く。
「誰だ?」という声も聞こえた。
やはり、昔のことだから誰もオーロラをわかっていないようだ。
「ね、姉さん!?」
甲高い声で驚いて前に出てきたのはオーロラに似ているセイレーンだ。
妹がいたのか。
「あ、あなたなのね!? 故郷に戻っていたなんて驚いたわ!」
「子どもができて里帰りしていたの。姉さんこそ、どうやってここがわかったの?」
「話はあとで、みんな助けるから心配しないで――これから信頼できる人が出てくるから絶対に叫んじゃダメよ!」
セイレーンたちは頷いて約束した。
説得できたなら俺も【隠密】を解除した。
少し驚いているが、叫んでいないから問題ない。
「――――アンロック!」
俺は無魔法を使い、檻の開錠と奴隷の首輪を解除する。
「ありがとうございます! 優しい人でよかった……」
オーロラの妹は深くお辞儀をした。その隣に、少女もお辞儀をする。
この子が子どもだとわかった。
「レイちゃんは特別よ。ところで、あなたの旦那は一緒に捕まっていないの?」
「夫は……わからない……生きていればいいけど……」
下を向いて落ち込む。
察してしまった……亡くなった男たちの中にいるのか……。
「ごめんなさい……」
「いいの……。私たちが助けられることだけ奇跡よ……」
「レイちゃん……お願い……」
「わかった……」
気まずくなったが、今は安全な場所に移動させる。
「――――ゲート!」
…………移動できない……どうしてだ?
再びやるが、発動すらできない……。
「レイちゃんどうしたの?」
「悪い、移動できない……」
「なんで!? もしかしてレイちゃん、疲れているの!?」
「さっきまでの使えたぞ。ちょっと待ってくれ――」
なんらかの妨害がある。急遽リフィリアに念話で伝える――。
「『リフィリア、ゲートを使えるか? 急に使えなくなった。ちょっと試してくれ』」
「『使えないの? わかった――…………私もできない……どうして……?』」
船内だけと思ったが違うみたいだ。ここ周辺、「ゲート」が使えなくなっているのか……。
予定が狂ってしまった――変更だ。
「予定変更だ。みんな、船内から脱出して海に飛び降りてくれ。賊が気づいたら俺が食い止める」
「わかったわ。みんな、こっちよ――」
オーロラが指示をして檻から出て、甲板に向かう――。
甲板に移動し、セイレーンたちを海へと逃がす。
「『誰も気づいていないから大丈夫だよ』」
リフィリアに賊どもの見張りをお願いさせた。
どうやら宴で夢中のようだ。
というか気づかないのはおかしいだろう……ゴミどもは【魔力感知】を覚えてないのか……。
邪石で強化されてもスキルは覚えないみたいだ。
軽々と脱出できるのはラッキーだが。
「さあ、あなたたちが最後よ、早く海へ!」
残りは妹とその子どもだけとなった。どうした?
「姉さん、私にも手伝わせて、私もみんなを助けたい」
「何言っているの!? ふらついているあなたに任せられないわ!?」
「早く助けたいの、だからお願い」
「あたくしが許すと思うわけ? レイちゃん、なにか言ってよ」
俺は無限収納からポーションを取り出した。
「ゲート」だけで空間魔法は大丈夫なのか。
だったら手伝わせるしかない。
「わかった、これを飲んで手伝ってくれ」
「ありがとうございます! 私はあとから向かうから心配しないで」
妹の子どもは頷いて海へ飛び降りた。
「ちょっと、あなたも行きなさいよ!? レイちゃん、それでいいの!?」
「説得できるセイレーンがいれば手分けして助けられる。リフィリアと一緒にさせるが、信用できないのか?」
「仕方ないわね……。あなた、無理だったらすぐに逃げてちょうだい」
「ありがとう姉さん」
妹にポーションを渡し、口に運んでくれた。
念話でリフィリアに訳を説明して、こっちに向かってきた。
リフィリアは無魔法――「アンロック」を覚えていて、檻や奴隷の首輪は解除できる。
妹も一緒ならすぐに脱出できて早く救えると判断した。
見張りはソアレとセレネにお願いして問題はない。
「無理しないでね」
「姉さんこそ」
姉妹同士心配をしながら、手分けして次の船に乗り移る――。




