517話 セイレーン救出①
攫われてセイレーンが乗っている船を捜して2時間が経つ――。
辺りは真っ暗で船らしき灯りはなかった。
青年はどのくらい気を失っていたかわからないしな。
かなり時間が経過していればすぐには見つけられない。
そう甘くはないか。
ズイール大陸に到着だけは避けたい。
さらに1時間経過し、見つけることはなかった。
「だいぶ進んでいるけど、そろそろ見つかってもいいと思うけど」
「俺もそう思うよ、迂回ルートなんてないしな」
「そこなんだけど、寄り道している可能性があると思わない?」
「寄り道か? 雇い主が待たされているのにか? そんなバカなことをするとは思わない」
「相手はバカなことをしているからあり得る話だよ。進むのを止めて手分けして捜すのはどうかな?」
確かにリフィリア言うことは一理ある。そのまま進んでも見つけられるかわからない。
その案に乗る。
「わかった、手分けして捜そう。シエル、いったん、ここで止まってくれ。ソアレとセレネも頼む」
「「はい!」」
俺とリフィリア、ソアレとセレネが手分けして捜すことになった。
見つけ次第、念話で教えることになった。
シエルは念話で通じ合えないから待機するように言う。
見つけてもみんなに言うのに時間がかかってしまうからだ。
あと、シエルいる場所を待ち合わせにすれば戻ってきやすい。
俺は【飛行】を使い、3人と違う方に向かい――辺りを見渡す。
これで見つければいいが……。
数十分が経過したときに――。
「『見つけました! シエルちゃんのところに戻ります!』」
セレネから念話がきた。
俺は空間魔法を使いシエルのの元へ――。
移動すると、リフィリアとソアレは戻っていた。
俺と同じで空間魔法を使って戻ったか。
すると、ものすごい速さでセレネが戻ってきた。
セレネは空間魔法を覚えていないから大変だったかもしれない。
「こ、こっちです!」
俺たちはセレネの後を追い、十数分経つと――邪石の反応が出た。
しかも呆れるほどだった。
「ここです!」
俺たちが見たのは島で定住している6隻の船に、火を起こして賑わっている数百の賊どもだった。
リフィリアの言うとおりバカな連中だ。のんきに宴をやっているとは本当に呆れる。
帰るまでが仕事って、ギルドから教わなかったのか?
まあ、賊に言っても無駄か。とりあえず、捜すことができてよかった。
「セレネお疲れ様、少し休んでくれ」
「は、はい……」
「ようやく見つけたわよ……。レイちゃん……懲らしめましょう……」
「待て、状況が確認できていない。少し様子を見てからだ」
オーロラが早まる気持ちはわかるが、ここは冷静いかないと。
賊のことだから手段を選ばない。
様子を見ることで、俺とリフィリアは【隠密】を使い、ばれない程度に近づく。
宴のところにはセイレーンはいなく、賊だけだった。
全員、船――6隻の中にいることがわかった。しかも見張りがいないという。
見張りがいないとはどれだけ余裕なんだ……。
まあ、好都合なのは確かだ。
しかし、1隻――ほかと比べて一回り大きい船の中に人の反応がある。それもセイレーンと一緒に、
しかも邪石をつけてなく、弱っている感じである。もしかして青年が言っていたコナーズか?
まだわからないが、要注意はしよう。
「『マスター、セイレーンは島にはいないから、私の魔法で吹き飛ばしてもいい?』」
「『いや、やめたほうがいい。邪石をつけているならあまりダメージを負えないぞ。余計に刺激してしまう』」
「『じゃあ、船ごと「ゲート」で移動させる?』」
「『それもやめたほうがいい、船の中に火薬が積んでいる可能性がある。あの大きさで移動させると、船は激しくて揺れて不意に着火して爆発するかもしれない』」
船には大砲が設置していた。火薬があるのは間違いない。
船の重さだと移動させたときの衝撃は大きすぎる。
火薬の知識がないのと、ズイールの品質を疑っているからここは慎重にいかないと。
「『ほかに方法はないの?』」
闇と空間の混合魔法――「ダークホール」なら簡単に移動できないことはないが、あれは闇魔法も含まれている――セイレーンに悪影響を及ぼすからあまり使いたくはない。
簡単には救出はできない。だが――。
「『ある程度把握したから戻るぞ。みんなに安全に救出させることを言うから』」
「『わかったわ』」
簡単にはいかないが、賊が警戒していないのはかなり大きい。
おかげで作戦が練ることができた。




