516話 嘘か本当か
青年の話によると――大型の船が突然現れて、武装した人の集団が上陸、ズイール大陸で歌の講演してくれと交渉を申した。
セイレーンは反対すると、急に激怒して男たちは切られ、家は破壊されて抵抗できないセイレーンを無理やり船に乗せられて攫われてという。
その元凶が、コナーズという男だ。
コナーズは浜辺で倒れているところ助けてセイレーンと親密な関係になり、最後まで面倒――舟を作って途中までセイレーンが送ってくれるほどの関係になったという。
そのコナーズは船に乗っていて会いに来たと言って再開を大喜びしていたが、武装した男に邪魔だと言われて船に無理やり引き返され、コナーズなしで交渉されたという。もちろん、コナーズがいないから反対は当たり前で、その結果、最悪なことを招いてしまった。
「というわけだ……俺たちはまんまと騙されたんだ……。アイツは放流という名の下見をして同胞を攫うのが目的だった……。騙された……」
青年は悔しそうに言う、どうも引っかかる。
確かに下見して周りを把握してればリスクが軽減される。
だが、下見する必要はあったのか? そこが引っかかる。
「そいつは、この島に来る前に何をしていたか聞いたか?」
「船旅で魔物に船で破壊されて気がつけばここにいたとか……」
芝居としてはべたな内容だ。
噓か本当かはここでははっきりできない。
セイレーンを助けてからにしよう。
「そうか、ある程度のことはわかった。お前はゆっくり休んでくれ」
「俺も行く! 同胞を助けたい!」
「まだ病み上がりで体力なんてないぞ。メメット、面倒を見てやってくれ」
「了解っス!」
「し、しかし……」
「レイちゃんの言うことは聞きなさい。同胞のあたくしがいるから安心して、絶対に連れ戻すから。
あたくしの歌でイチコロなんだから」
「言っておくが、俺たちが歌っても効かなかった……。クラーケンでも気絶するほどの攻撃したのに……」
やっぱり対策はされていたか。
「噓でしょ!? レイちゃん、人ってあたくしたちの歌って全然効かないの!?」
「それはないぞ。俺たちは加護のおかげで例外なだけだ。ちなみに武装した奴は身体に黒い石みたいなをつけていなかったか?」
「黒い石? ああ、一番強そうな奴が胸元に大きな黒い石をつけていたような気がする……」
わかりきっていたが、やはり賊どもか。
だが、禁忌野郎が手配したのかは不明だ。
「わかった、アリシャたちはどうする? 俺の判断だ、無理にとは言わない」
「もちろん行くわ、禁忌野郎の関係者なら絶対に許せないわよ」
「アリシャの言うとおりだ、絶対にセイレーンを助けてやる」
アリシャとガルクは真っ直ぐな目で言う。
「助かるよ。ソアレ、セレネ、ここから汚れ仕事になるから待機を――」
「「私たちもやります!」」
慌てて返事をする……。
さすがに双子は純粋の天使だから巻き込みたくない。
「今回は禁忌野郎と状況が違う。生身の人だ、純粋な子には――」
「天使は純粋ではありません! 悪者には相応の罰を与えるとティーナ様から教えられました!」
「天使は誰もが通る道です! シャーロ様から悪者は容赦なく鉄槌を下せと言われています!」
女神が純粋な子にそんなこと教えていたのかよ……。
天使の役目っていったいなんだ……?
これもこの子の成長のためなのか……?
あまり勧められない……。
女神に教えられてもこの子たちにはまだ早い。
「わかった、今回は援護を任せる。それでいいな?」
「「ありがとうございます!」」
満面な笑みで言われると困る……。
「あとは――シルキーは、悪いがメメット一緒に留守番をしてくれ」
「うん……」
少し寂しそうに返事をするが、しょうがない。
もし、なにかあったとしたら守って戦えない。
我慢して偉いぞ。
「それでリヴァ、お前はどうする?」
「こ、怖いけど……僕は……主の同胞を助けたい……」
「ということだ、オーロラ、リヴァを連れて行くぞ」
「ふ、不安しかないけど……リヴァちゃんの意思を尊重するわ……」
保護者としては嫌みたいだが、リヴァしかできない仕事があるから助かる。
「リヴァ、怪我したセイレーンを乗せる役目がある。頼んだぞ」
その言葉にゆっくり頷く。
そうと決まればシエルに乗り、ズイール大陸――北西の方角に向かう。




