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514話 弱っているセイレーン


「ちょっと、そんなに急かさなくても逃げないわよ」


「魔力が弱まっている反応がある。怪我をしているかもしれない」


「そうなの!? じゃあ急いでちょうだい!」


「「先に行ってます!」」


「私も行くわ」


 双子は翼を広げて飛んで、リフィリアも一緒にシエルより早く島に向かった。

 気づいたか、3人なら回復魔法を覚えているから先に行ってくれるれるのは助かる。


 ようやく、島が鮮明に見えてきた――。


「噓……なんなの……酷い……」


 周囲は建てられたと思われる家――木の小屋が無残に壊されていた。

 それに……。


「男の人魚族は……」


 ガルクが恐る恐る口に出す。

 浜にはオーロラと同じ容姿をした数十の男が倒れている。

 もう息してないことがわかる……。


「違うわ……。あたくしの同族よ……」


「セイレーンって男もいるのか?」


「いるに決まっているわ……。じゃないと繫殖しないわよ……」


 女性だけと思ったが違うみたいだ。

 この世界とは違うことを忘れていた。


 そんなことよりも――俺はシエルに飛び降りて地上に着地して、3人の方に向かう。

 駆け寄ると、リフィリアは反応がある――破壊された建物を風を使い退かしていき、ボロボロになったセイレーンの青年だ。

 まだ生きている、ギリギリ間に合ったか。


「「――――ハイヒール!」


 双子は回復魔法で治し、青年は穏やかな表情になりスヤスヤ眠っていた。

 とりあえず、救助できたのはいいが……いったい何が起きた?

 魔物にでも襲われたのか?

 しかし……周りを見ても男の死体しかない。

 不可解なことだ……この青年が起きないとわからない。


「あ、あたくしの故郷が……なんでこんなことに……」


 降りてきたオーロラはあまりのショックに泣き崩れていく。

 楽しみに帰ってきた故郷が悲劇になっていたなんて思いもしないだろう……。

 

「リヴァ、オーロラのそばにいてくれ」


「うん……」


「シルキーも一緒にいてくれ、子どもが見てはいけない」


 俺の言葉に頷いて、震えているオーロラの背中をさすり落ち着かせようとする。

 あまり好きではないオーロラのケアをしてくれるのは意外だ。

 状況が状況である。シルキーもその気持ちはわかっている。


 今は生存者を探して状況を確認しないと――。


 …………みんなで探したが、青年しか生きてなかった。

 亡くなったのは56名の男だ。そう、男だけだった。


 しかも傷口は刃で切られていた。人為的な可能性がでてきた。

 嫌な予感が的中しなければいいが……。


「みんなごめんなさい……取り乱しちゃって……」


 オーロラは少し落ち着いたようだ。

 

「あまり無理するな、もう少し休んでくれ」


「同胞の処理はあたくしがするはずだったのに、みんなに任せっきりで申し訳ないの……」


「お互い様だ。同胞がやられて普通でいられることがおかしい」


「ありがとう……。なんでこんなことに……」


「なあ、ここら辺にサハギンとか遭遇したりするのか?」


「えぇ……島に上陸して厄介になっていたときはあるわ……」


 じゃあ、サハギンの可能性があるか。


「その同胞が刃で切られていた。女も姿が一切ないから、もしかして攫われたのかもしれない」


「それはおかしいわ……。サハギン相手なら歌声でいちころよ、同胞がやられるくらいのサハギンなんて聞いたことないわよ……」


 そんな否定するとは思わなかった。 

 サハギンしか考えられない、こんな遠い島に人が訪れるなんてあり得ない。


 やっぱり、青年から事の経緯を聞くしかないか。

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