511話 天使からのお願い
「どうした2人して、何かあったのか?」
「「オーロラちゃんと海に行きたいです!」」
海か、最近オーロラと仲良くなったし一緒に行きたくなったのか。
「いいよ、行っておいで」
「「ありがとうございます!」」
満面な笑みで返してくれる。
相変わらず眩しい。
「2人とも海は初めてだよな?」
「「はい!」」
天界に海なんてないよな。
この機会に楽しんでもらうか。
「ほかには誰と?」
ソアレは空間魔法を使えるが、まだ行っていない。
この流れからしたらルチルも行くようになると思う。
「「リヴァちゃんも行きます!」」
ん? ルチルがいないぞ。しかも少人数で……自力で行きたいのか?
「リヴァだけなのか? ほかは誘わないのか?」
「オーロラちゃんの故郷に行きます!」
「私たちはオーロラちゃんとリヴァちゃんと一緒に飛んで行くのです!」
はい? オーロラの故郷……?
「急だな……なんでオーロラの故郷行く……?」
「「故郷の海水が恋しいみたいです!」」
ホームシックになったのかよ……。
まあ、海神でも故郷の海水が恋しいのはわかる。
だから空間魔法を使える人は行かないのか。
というか双子が抱えて飛ぶのに限度がある。
海はともかく、故郷に行く理由なんてあるのか?
リヴァだけと一緒に帰ればいいと思う。
「なんで2人はオーロラの故郷へ?」
「強い魔物がいるので護衛です!」
「空を飛べば海の魔物に遭遇しないからです!」
そうでした……臆病のリヴァがついて行くから厳しいか……。
護衛には申し分ない強さだが、オーロラの故郷――知らない場所は双子だけにはさせられない。
俺も気になるし、行ってみるか。
「そういうことなら俺も行く。シエルにも言っておくから」
「「えっ!?」」
「2人だと大変だから一緒に行けば楽だろう?」
「忙しいなかありがとうございます!」
「わ~い、救世主様も一緒だ~!」
双子は飛び跳ねて大喜びだ。
まあ、今のところ落ち着いて忙しくはない。
そうと決まればオーロラに言わないと――。
「ソアレちゃんとセレネちゃん、き、気が早いわよ!?」
オーロラが息を荒くして駆け寄ってくる。
そのあとにリヴァも――。
「話は聞いたぞ。俺も行くことになったからよろしくな」
「えっ!? もう話したの!? あたくしから言おうとしたのに、ありがとう! レイちゃんも行くのはありがたいわ! 魔物なんて怖くはないわ!」
「うぅ……ありがとう……」
「お前の故郷ってそんなにヤバいところなのか?」
「えぇ、とても……。あたくしだけなら大丈夫だけど、リヴァちゃんがどうしても行きたいって言うのよ……。みんな忙しいからソアレちゃとセレネちゃんにお願いしたの」
「なるほど、そういうことか。確かに適任だが、2人だけにはさせられない。まだこの世界を知らないからな」
「そうなの!? てっきり天使だから空を飛んで世界中旅をしているから大丈夫だと思った」
翼があればそういう解釈になるか……。そう思っても仕方がない。
「だから俺もついていく。何か問題でもあるか?」
「とんでもないわ! レイちゃんが行けばいつでも故郷に移動できるわ!」
まあ、いちいち帰るのに手間が省けるよな。
「それで、いつに行く?」
「明後日でいいかしら? 明日と言いたいけれど、歌を披露する予定だから中止はできないの」
オーロラの歌はみんな好きだし中止にしたらがっかりするのは目に見える。
「わかった。明日頑張れよ」
「えぇ、気持ちよく終わらせて故郷に行くわよ!」
話が決まれば、シエルに言って……ものすごい視線を感じます。
後ろを振り向くと――シルキーが顔を膨らませて俺たちを見ている……。
「何かあったのか?」
質問するが返答がなかった。
「困った子ね……。あたくしたちについてきても何もないのに……」
気になってついてきたのか?
この感じ、話は聞かれていたな。
もしかして――。
「なぁ、シルキー、お前もオーロラの故郷に行きたいのか?」
喜んで頷いた。
なるほど、リヴァと一緒にいたいみたいですね。




