509話 ご立腹な王様
城の庭に移動すると、ファイスさんと王国騎士――大半が尻追い組で整列して待っていた。
「ふむ……来たか。久しぶりですチヨメ殿……こんな形で再会するとは……」
「こちらこそお久しぶりです。私もです……」
お互い呆れていた。
俺もそう思います。ソウタの処分で再会なんて普通はあり得ないだろうな。
「しかし……ソウタ殿……やり過ぎではないか……?」
「俺……本当に覚えていない……」
「言い訳が見苦しいですぞ……。陛下が適切な処置をしてくる……だから反省をしてくれ……」
「テメェ……まだ口答えするのか……?」
「な、なんでもありません……」
ソウタのオドオドした様子に尻追い組は満面の笑みでした。
処分が下されてもお前たちの立場は変わらないけどな。
ファイスさんの案内で謁見の間に移動して扉が開くと――真顔で【威圧】を出しながら玉座に座っている王様だ。
あっ……いつもにこやかな王様がこんな顔をしているのは初めてです。
ソウタも察したのかガクブルです。
だが、チヨメを見ると【威圧】をやめて笑顔になった。
「チヨメちゃん久しぶり~。元気にしていた~?」
「はい、ご無沙汰しております陛下」
「うんうん、それはよかった。ところで……ソウタ君……、お父さんとお母さんの恩人に淫らな行為をしたのはどういうことかな……?」
再び真顔になり、さらに【威圧】が増しています。
やっぱり両親がお世話になった人に非行をしたのは許せないですよね。
「陛下……恩人と言うほど手助けは……」
「チヨメちゃん、僕からしたら大事な恩人だよ……。気にしないで……。ソウタ君……何か言いたいことはあるよね……?」
ソウタは王様の前に出されて膝をつかせる。
まるで罪人を判決するように……いや、尋問だな……。
「お、俺は……何も覚えていないです……。本当に……」
「へぇ~、自分の非を認めないんだ~。素直に認めていれば少しだけ軽くしようと思ったのにね~」
王様は笑いながら言うが顔は笑っていません。
ソウタ……覚えていなくても認めろ……。得はないぞ……。
「テメェ……いい加減にしろ……。陛下、早く処遇を言ってください」
「そう焦らないで、そうかそうか……反省してないのだったら追加で制裁をしようか……」
ソウタの態度に気に食わないですよね……。確かに反省しないのだった追加されて正解だ。
これはソウタが悪い。
「じゃあ、判決を言うね――ソウタ・シラカワ、数々の非行を犯した罪により、士爵から騎士爵に降爵とさせる」
まともな処遇では?
降爵ならソウタは痛くも痒くもない。
ヴェンゲルさんは予想とは違く驚いていた。
「チッ……」
メアさん、舌打ちするのではありません。
「陛下、降爵だけは軽すぎませんか!?」
「まあまあ、落ち着いて、まだ続きがあるから――ソウタ君、騎士爵になったってというかことはわかるよね?」
「いえ……まったく……」
「わからないんだ……。しょうがないな~わからないソウタ君にも教えないとね~。ちなみに騎士爵になるということは王国騎士をまとめないといけないんだよ~。つまり、僕たちの監視下で働いてもらうよ~。拒否権はもちろんないよ~。帝王の件が終わるまで休みが少ないからよろしくね~。大丈夫大丈夫、アマーニには合わせるから心配しないで~」
そうきましたか……。
いや、騎士爵ってそういう扱いではないはずだ。ただ権力を使って利用するみたいです。
気の毒と言えばおしまいだが、ソウタも悪いからなんとも……。
「これでも軽いですよ……」
「まあまあ、妥当の処遇だと思うよ。後々ヴェンゲルも納得すると思うから我慢してね」
「はぁ……陛下が言うなら我慢します」
なんで我慢? 王様、何か企んでいるのか?
「フフフフフフフ……楽しみですこと……」
メアさんは納得しましたね……。
「ということだけど、チヨメちゃん、不満があるなら言ってもいいよ」
「と、とんでもございません!? 私からしたら妥当だと思います」
チヨメ、騙されていますよ。
今後、想像以上の出来事がソウタに降りかかろうするから……まあ、知らぬが仏ですな。
「うん、チヨメちゃんの理解してもらってよかった。それとレイ君にも言いたいことがある」
ん? これで終わりではないのか?
「俺にですか?」
「そうだよ~。じゃあ、言うよ――レイ・アマガセ、多大な功績により男爵から子爵として陞爵とする」
…………はい?




