507話 先王に相談
あの島に行くのだったらチヨメも誘うか。
チヨメに言うと――。
「帰れるならぜひ、お願いします。お二人にも会いたいです」
迷わずに返事をしてくれた。やっぱり育った場所へ帰れるならそうなるよな。
空間魔法を使い、島――チヨメが住んでいた家の前に移動する。
「「ハハハハハ!」」
さっそく、先王と大妃が笑顔でドアを開けて出てきました。
「おお、チヨメちゃんがいる! やっと会えたんだね!」
「チヨメちゃん、久しぶり~! レイ君、会えてよかったね~!」
「お久しぶりです。シグルドさん、テラスさん、島の居心地はどうですか?」
「「最高だよ~!」」
なんだかんだ2人ここに住んでもう数ヶ月になるのか。
完全に島暮らしを満喫していますね。本当に王族なのか疑うレベルです。
「それはなによりです」
「帰ってきたことは、僕たちは出ていかないといけないね。そういう約束だし」
「いえ、私はお二人と両親のお墓に挨拶に来ました。今までどおりお使いください」
「そうだったんだね! じゃあ、ありがたく使わせてもらうよ」
「はい、ご自由にどうぞ」
もう空間魔法があるから島はいつでも行けるようになったしな。
家はそのまま使っていいようだ。
「ところで、ヴェンゲル君もいるけど、どうしたの? せっかく来たのだから昔話でも――」
「やめてください、殿下……そんなので来たわけではありません……」
ヴェンゲルさんもたまに様子を見に行っているけど、大半は昔話をしている。
赤ん坊のときから知っていて、わんぱくな子だといろいろと聞かせれたな……。
それも同じ話を5回も……飽きないですね……。
「なんだ、昔話でもしようと思ったのに……」
「勘弁してください殿下……。それよりもっと重要な話があります」
「その話とはなんだ?」
ヴェンゲルさんが深刻な顔で言うと、先王は真顔になり口調が変わった。
顔にも貫禄があり、まるで別人だ。
そこまでさせて大丈夫なのか……?
ヴェンゲルさんはチヨメがセクハラされたことを言うと――。
「「死刑だ」」
…………えぇ……そんな軽々しく死刑と言うのか……。
しかも大妃も真顔になって言っています。
「やはり殿下から聞いて安心しました。では陛下から手紙を――」
「ちょっと待って、あの人を本当に死刑にするつもりですか!? いくらなんでも――」
「チヨメちゃん、甘すぎるよ。また襲われないようにしないための手段だよ。士爵なのに傲慢な態度にはこれくらいしないといけないよ」
「で、でも……そこまでしなくても……」
「わかった、死ぬまで禁固にしよう。ヴェンゲル君、それで我慢してくれ」
「わかりました。俺には十分な――」
「それもダメです! もっと適切な処置をお願いします!」
ソウタの処置で数十分が経過する。
というか最終的には王様が判断するから全部通らないと思う……。
「わかった、チヨメちゃんに免じてプレシアス大陸とフリール魔大陸の出入を禁止――追放で妥協するよ。ヴェンゲル君もいいよね」
「殿下が言うならわかりました……」
なぜ、悔しそうなんだ……?
追放でも十分な罰ですよ……いや、重すぎる。妥協とは……?
勝手に決めているけど、いいのか?
あっ、もう大妃が手紙に書いてる……。
「ヴェンゲル君、息子によろしくね」
「お任せください。この手紙は命に変えても渡します」
手紙で命をって……。先王と大妃だから重大ですよね……。
チヨメはドン引きしていますよ……。
「お手柔らかに……」
「チヨメちゃんは優しいね。でも世間――王族ではこれが当たり前だから気にしないで」
むしろ気にするだろう……。
はっきり言えることは王族を敵に回してはいけないと覚えたと思う……。
「わ、わかりました……。では私は両親に挨拶しに行きます……」
「俺も行く」
俺とチヨメは虹色の花畑に設置してある墓石に移動する――。
「きれいに手入れしてある……」
「ライカが来るたびに周りの掃除をしているからな」
「そうなんだ……。ライカさんにお礼を言わなくちゃ」
そう言いながら墓の前で拝む。
「ただいま……お母さん……お父さん……。私、旅をして素敵な人たちに恵まれたよ。ちょっとトラブルがあったけど、旅をして本当によかった……。ありがとう……。また戻ってくるからね。行ってきます……」
この声が地球の天国に届いていればいいな……。
俺も拝んで挨拶をした。
『チヨメといぬっころをよろしくお願いします……』
えっ? 頭の中にチヨメに似ている声が聞こえた。
「どうしましたか?」
チヨメは俺が驚いたことに不思議そうに伺う。
聞こえていないのか……?
あの声は……チトセなのか?
そうだとしても干渉はできないはずだ。
本当に見守っているのか?
今は女神たちは忙しくてお願いはできない。
だったら…………地球の神様にお願いしたのかもしれない。
それが本当かわからないけど、チトセに頼まれては仕方ない。
同郷として任せてくれ。
「なんでもない。さて、戻ろうか」
この事はチヨメとライカには言わないでおこう。
言っても信用はしてくれないと思う。




