506話 本能かもしれない
やっとソウタが目を覚ました。
暴れないで落ち着いた様子だ。
「う……俺はいったい……イテテ……。えっ……みんな揃って怖い顔して……」
覚えていないのかよ……。その発言で周りは手を出そうとしている。
「テメェ……いまさらとぼけるつもりか……。言いたいのはそれだけか……?」
「ま、待ってくれ、本当にわからないんだ!? 誰か説明してくれ!?」
「儂が説明する――」
ライカが呆れながら説明すると、否定しかしていなかった。
「う、噓だ……。なにかの間違いだよな……?」
俺に向かって言うなよ……。
「本当のことだ……。お前……覚えていなくてもチヨメを狙っていただろ……?」
「そ、それは……」
何も言い換えせないなら図星のようだ。
「お前が暴走する前にチヨメと近くにいたとき鼻息が荒かったぞ……。わかりやすいんだよ……」
「ち、違う……確かにいい匂いはしていたけど……」
一瞬だけニヤッとしたぞ。コイツ、否定してるのかしてないのかわからない。
ヴェンゲルさんと尻追いは限界のようです。
「言い訳しても無駄ですこと……。素直に白状すれば軽いお仕置きだけで済みますよ……」
「だから、なんで罰を受けないといけないんだ……。俺は本当に覚えてない……」
メアが言っても意味がない。
しょうがない、本人は嫌だろうが証言しないといけないか。
ヴェンゲルさんと尻追い組を落ち着かせて空間魔法で領地――集会場に移動する。
尻追い組はこれ以上関わらせないために解散させた。
一部文句を言っていたが、メアが【威圧】を使っておとなしくさせて、宿に戻っていく。
戻ってきたことがわかると、みんな集まってソウタを囲んで白い目で見る。
やっと自分が何をしたのか事の重大さを気づいた。
そして、着替え直してジャージ姿のチヨメとソウタの嫁と精霊たちが近寄り、腕を組んでご立腹です。
「チヨメ、会いたくないと思うが悪いな、何をされたか言ってくれ」
「はい、では――」
チヨメはやられたことをすべて言った。
救出したときに言ったことと別のことも――「お前の匂いは最高だ! これから俺の女だ逃がさない」「毎晩相手してやる」とか強迫されたらしい。
…………覚えてなくてもソウタの本能かもしれない……。
これは救いようがない……。ソウタの嫁と精霊たちは呆れたり悲しんでいたり怒っていました。
そしてヴェンゲルさんは――。
「――――いい加減にしろ!?」
「――――ゴブェ!?」
溜まりに溜まった怒りが抑えきれなく、腹パンしました。
「テメェのイカれた行動で鬼人の嬢ちゃんに怖い思いをされてしまったんだぞ! しかもシグルド殿下の友人でもある嬢ちゃんにな! テメェは陛下から処分を下す……。わかったな……?」
ソウタはのぼせて聞いていませんよ。
しょうがない、嫁と精霊とは一緒にできないから最近建てた丸太小屋で謹慎させよう。
小人にお願いをさせてソウタを運んでもらう。
これで少しは落ち着いただろう……。
あとはヴェンゲルさんにお任せする。
「レイ……頼みがある……シグルド殿下のところに行きたい……」
えぇ……、先王にも言うのか……?
察しがつくが聞いてみよう……。
「理由は……なんですか……?」
「嬢ちゃんの友人だから決まっている……。シグルド殿下にも意見を聞かないとな……」
ですよね……。
先王を巻き込んでも重い処分にはならないと思う……。
ヴェンゲルさんの気が済むなら送るが……。




