504話 精霊使いの暴走①
ライカが返り討ちにされただと……。
「『いったい何があった……? 普通にやられたわけではないよな……?』」
「『気絶させようと、峰打ちを試みたが、すばしっこくてな……。背後を取られて、尻尾と耳をつかまれて……いやらしい手つきで……』」
そういえば尻尾と耳を触られると力が抜けると言っていたな……。
アイツ……無駄に変なこと極めている……。
ほかで極めてほしいところだ。
「『動けるか……?』」
「『すまん……少し時間が必要だ……』」
予想だにしないことが起きてしまった……。
チヨメが本当にヤバいぞ……。
すると、上空で追っていたソアレが空間魔法を使って慌てて戻ってきた。
嫌な予感が……。
「救世主様、変態さんが鬼のお姉ちゃんを木の枝に吊るして危ないです! セレネが襲われないように魔法で阻止しています!」
もうそこまでしているのか!?
セレネが時間稼ぎしているならまだ安心できる。
今すぐ――。
「「「精霊使い……」」」
尻追い組が憎悪むき出しにして武器を構えていつでも行ける状態だった…………なんでいる!?
「フフフフフ……ワタクシが呼びました……毒を以て毒を制すと言いますから……」
こんな毒を放って大丈夫ではない……。
いや、チヨメを助けるのに時間稼ぎはちょうどいい。
汚名返上とは言わないが、存分に利用する。
「わかった……。ただし、チヨメに絶対手を出すなよ」
そう言うと尻追い組は頷いた。
「よろしい。ソアレ、移動頼んだ」
「はい!」
「悪いが俺も行く。どうも仕返ししないと気が済まない主義でさ」
治ったばっかりのヴェンゲルさんが言う。
止めても無駄なようですな。
「わかりました。無理はしないでください」
俺たちはソアレの空間魔法で森の中――チヨメがいる場所に移動した。
遠くには両腕縛られ吊るされているチヨメがいた。
気を失って逃げることができない。
そして空から――。
「俺の女に手を出すな!」
「――――ホーリィニードル・レイン!」
セレネは魔法で無数の光の針をソウタに放つが――あっさりと躱された。
ソウタは近づいて捕まえようとしていた。
ソウタが飛んでいる……。
いや、足の方風が纏っている――風魔法を使って飛んでいるようだ。
風魔法を使えるなら余裕だったことを忘れていました……。
「セレネ、ありがとう。もう下がっていいぞ」
「はい! あとはお願いします!」
セレネは地上に下りて、俺たちの方に駆け寄る。
ソウタも下りてセレネを追いかける。
「「「精霊使い……」」」
尻追い組が前に出てソウタに向かっていく。
まさか考えないで俺たちに突っ込んでくるとはいい度胸だな。
さすがのソウタでもこの人数――数十人は対処できない。
尻追い組が時間を稼いでいる間、チヨメを――。
「男には興味がねぇ! ――――サイクロン!」
「――――グアァァァァァ!?」
はい? ソウタは地面に足を突きつけ、身体を回転させて暴風を巻き起こした。
尻追い組は慌てて後ろに下がろうとするが、全員飲まれていき上空に飛ばされてしまう。
えぇ……もう全滅かよ……。
「駒として使えると思いましたが……つまらないですこと……」
結局メアは面白くなると思って呼んだな……。
暴風が消えると、ソウタの姿が見えない。
おい、チヨメの近くにいるぞ!?
しかも興奮して上着を破いてしまう。
だが、胸部の方はさらしで巻いてあり、破くことはできなかった。
ソウタはさらに興奮して必死で破こうとしても硬くて外すことすらできなかった。
「早く胸を見せろ――!」
お前……どれだけ胸が好きなんだ……。
呆れてものも言えない……。
だが、さらしが頑丈のおかげで捕まえることができる。
「フフフフフ……ゴブリンみたいに欲情して滑稽ですこと――――シャドウチェーン……」
メアは魔法で影の鎖を地面から出してソウタ目がけて捕まえようとする。
しかし、危険を察知して素早く躱す。興奮して眼中になかったと思ったが、無駄に勘が鋭い……。
そういえば【第六感】を覚えていたこと忘れていました。
メアは舌打ちしながらも闇の鎖をコントロールしてソウタを追いかける。
よし、このまま遠くに移動さてくれれば問題ない。
今のうちにチヨメに近寄り、救出する――。




