49話 4人のパーティー
レイ視点に戻ります。
アイシスの方を向くと――両腕を切断されたミノタウロスが倒れていた。
無事に倒したみたいだ。
しかし……氷の大鎌で腕を切断したのか……あの大型をよく切断できたな……。
魔剣って剣以外の武器も使えるのか……。
まあ、俺と同じ【武器創造】と【器用】スキルがあるから有効活用はするか。
『2人ともお疲れ様!』
「ああ、アイシス大丈夫か? 魔力を結構消費したが、マナポーションでも飲むか?」
さすがのアイシスもこの異常種擬きは倒すのに大変だっただろう。
「いえ、大丈夫です……できれば……甘い物が食べたいです……」
顔を赤くして答えてるけど、別にもう恥ずかしいことではないのだが。
「じゃあ王都で好きなだけ食べていいよ、お金もいっぱいあるし」
「いいのですか!? ありがとうございます!」
アイシスには日頃世話になっているから、このくらいはお安い御用だけどね。
鎧を着けた短髪の重戦士が駆けつけてきた。
「信じられない……あの異常種擬きを倒せるなんて……」
呆然としているな……しょうがない、また見せるか……無限収納からギルドカードカードを出す。
「これを見せればわかるか?」
「ミスリルのカード!? それにアイテムボックス!? それなら理解できる……」
「わかったならいいのだが、怪我は大丈夫か?」
「おかげで治す時間ができて助かったぜ。本当に死ぬかと思った……」
少し涙目になっている……よほどミノタウロスがきつかったのか。
「まあ、王都の近くにこんな大型の魔物がいると驚くよな……」
「ここに異常種擬きがいるなんて聞いたこともない……まさか王都の近くってこんなに危険なのか……」
その言いっぷりだと王都に行くのは初めてか。てっきりここを拠点にしている冒険者だと思った。
すると茶髪ボブカットの女剣士が勢いよく駆けつけて――後ろから重戦士の頭を鷲掴みにし、地面に叩きつけ――。
その人も頭を下げる……。
「ぐへぇ!」
「すみませんでした! このバカが余計なことを言っていたらすいません! 助けてくださいましてありがとうございました!」
「いや、彼は変なことは言ってないよ……あと冒険者なら助けるのはお互い様でしょう……」
「……ぷはぁ、おい、アリシャ! 俺は何も変なことは言ってないぞ!」
「何言ってるのよ! どう見ても強いメイドを引き連れているなんて貴族の方でしょ! 本当にすいません! 田舎出身なので礼儀がなくて……」
かなり勘違いしているな……面倒だが訳を話した――。
「そうですか……納得しました」
「だから敬語で話さなくていいよ」
「そう……わかったわ。改めて礼を言うわ。本当にありがとう、紹介がまだだったわね。私はここの仲間をまとめているBランクのアリシャよ。よろしく。そして隣のバカがガルクで後ろにいる男がミルチェ、女性がアミナよ」
後ろの2人も頭を下げた。
「これは丁寧にどうも、俺はレイだ」
「アイシスと申します」
お互い自己紹介をして状況を確認した――。
この4人は隣街から商人を王都まで送る護衛の依頼を受けて、途中でこのミノタウロスに遭遇し、戦おうとしたら異常種擬きと判明、それも2体同時に襲って来たので商人は気絶した。
馬車を動かせるのは商人だけで、起きるまで時間を稼ぐが一向に起きなく、そろそろ限界ってところで俺とアイシスが来て助かったという……。
うん、とんだ災難だな……それにまだ商人は起きない……。
「よく異常種擬きとわかったな」
「私たちが住んでいる村でミノタウロスに襲われそうになったことがあるの。異常種を見かけたこともある。今回はそれに当てはまらないから異常種擬きとわかったの」
村にミノタウロスが襲われそうになったとか……なくはない話しだが苦労しているのだな……。
「そうなのか……それに私たちって?」
「ええ、この4人は皆幼馴染よ。拠点を決めずに移動しながら冒険者をやっているの」
拠点を決めずに冒険者をやっているのは珍しくはないがたまにいるな。
「そうなんだ。それでこのミノタウロスはどうする?」
俺とアイシスが討伐したが、念のため確認をしないといけない。
「レイがもらっていいよ。私たちは助けられた身だから受け取って」
「それじゃあお言葉に甘えて――」
ガルクがミノタウロスの斧を見つめている。
「どうした? 斧が欲しいのか?」
「い、いや、この斧カッコイイな~と思っただけだ」
それ、欲しいと言っているもんじゃん……まあ、斧1本くらいならいいか。
「その斧は譲るよ。換金したり鍛冶屋に行って加工したりすればいいさ」
「いいのか!? ありがとな!」
「レイ、本当にいいの!? ミノタウロスの斧は特殊で価値があるのに!?」
「別にいいよ。もう1本あるから十分だよ。有効活用してくれ」
「ありがとう……これでボロボロになった剣も変えられる……」
「何言ってるんだアリシャ! 俺はこの斧をこのまま使うぜ!」
「このバカ!? あんな大きい斧を使うバカがいるの!?」
アリシャとガルクが少し揉めているが仲がいいことで……。
すると後ろの2人もこちらに来る。ロープを着た金髪の男ミルチェが話しかけてくる――。
「この2人はいつものことだから気にしないで」
「そうか……商人は大丈夫なのか?」
「おかげさまでゆっくり寝ているよ。ところで君たちはすごいよ……剣も使えて、見たこともない魔法を使い無詠唱まである……初めて見るよ……」
「まあ、いろいろとあったから自然に身についたってことにしといてくれ……」
「そうなのか……苦労したんだね……」
勘違いされている……話すと面倒だからいいか。
その隣にいる紫髪ロングの女アミナが俺とアイシスを見て顔をキラキラさせている……。
「どうしたらあの氷魔法使えるの!? あと無詠唱とか初めて見た! 君たちのこといろいろと知りたい!」
魔法使いだからかやっぱり気になるのか……。
「アミナ……彼らは依頼の途中だし、僕達も依頼の最中だよ……」
「じゃあ、依頼が終わってから!」
諦めが悪いみたいだ……ミルチェも呆れている。
「一応、王都には依頼で数日滞在するからいいけど……それにこのミノタウロスを報告しにいかないと」
「いいの!? やったー!」
「本当かい? すまないね……アミナはこういう性格なんでね……」
「別にいいって、そろそろ護衛の方に戻らないと――」
――タイミングよくブレンダが乗っている馬車が来た。
「これは……ミノタウロス……dすgsですぼっちゃま」
「ミノタウロス初めて見た!」
「ぼっちゃま? それに馬車の奥にすごい魔力を感じる……」
精霊がバレたか……もしかしてミルチェは【魔力感知】のスキルを持っているのか。
はぁ~話がややこしくなるからその後、精霊やぼっちゃまと言われてることを説明した――。
「なるほどね……君っていろいろと引き寄せる人なんだね……」
「そういうことにしといてくれ……」
「精霊に懐かれるなんてスゴイよ! 私もその街に行ってみたい!? ねぇ、アイシャ次はそこに行きましょう? もしかしたらそこを拠点にできると思うからいいでしょう? お願い!」
アミナは凄く興奮してますね……やっぱり拠点にしないで冒険者をしているのは不便なところもあるよな。というか来るのか……。
「私も気になるな、レイがあれだけ強い秘訣があるなら行ってみたい」
なぜそうなる!? さっき会ったばっかりなのに即答だな!
それを聞いたセバスチャンがメガネを光らせてた……嫌な予感しかしない……。
「もしよろしければこの依頼が終わり次第、カルムに来ませんか? 4日後に王都に出て帰りますので私の馬車に乗っていくことも可能です」
何を考えているのだセバスチャン……住民でも増やす気か……。
「えっ!? 乗せてもらえるなんてツイている! みんなそれでいい?」
3人は躊躇いもなく頷いた。本当に来るのか……。
「では4日後冒険者ギルドの前で集合でお願いします」
「わかったわ! そのときはお願い」
「よろしくお願いします。では私たちはこれで」
「レイ、アイシスまたあとでね! 私たちは商人が起きるまでここで待機だからね!」
4人は手を振って馬車を見送ってくれた――カルムに来るのか……まあ、いい人そうだし別にいいか。
さて、いよいよ王都に到着する。楽しみだ。




