496話 王族の会議
――翌日。
顔がゲッソリしているソウタに昨日のことを伝える。
「な、なんで俺だけ……?」
「あら、お兄さん、私のために頑張ってね」
「そうだぞ、陛下からありがたい命令だ。しっかり行動で示せよ」
隣で聞いていたスカーレットさんとヴェンゲルさんは嬉しそうですね。
本人は納得いってないが。
「予定ではな、そのうち言われるから覚悟しとけよ」
「はぁ……、変わることを願うよ……。プロミネンス、ティア、ブリーゼ、そのときはよろしくな」
ソウタだけとは言ったが精霊は別だ。
あくまで精霊使いでのお願いだ。
「「「…………」」」
精霊たちは無表情まま何も言わないで、そのまま去っていく。
うん、アマーニばっかり相手していたから拗ねていますね。
「あら~、ワタシ様子を見てくるね~」
「私も!」
トリニッチさんとララアは心配で追いかけにいく。
「えぇ……」
ソウタが蒔いた種だ。それまでに自分で片づけてくれ。
まあ、なんだかんだ許してくれるから問題にはならないと思う。
女性には恵まれているよな。そう、女性は。
そして、昼過ぎにはアンバーが領地に来た。
会議の報告をしてくれた――初めて会う王子に挨拶をして、王子が帝王になる意思や覚悟、帝都の内情を聞いたりしたようだ。
そして、メデアコットを占拠したら反乱を起こしているクレメス辺境伯に王都に来てもらい、相談する話も決定した。
最初はそんなものか、まさか辺境伯を呼ぶ話になったのは意外だ。
内戦の状況も把握できるし呼ぶのは当然か。
「順調に決まってよかったな」
「まあな、しかし……帝都が変わっていないのは残念だったな……」
「変わっていないって、どういうことだ?」
「そのまんまだ、人間の絶対主義、ソシアの歪んだ信仰心、奴隷の合法、獣人の虐殺……あのときと変わっていない……」
「あのときって?」
「狂った時期と変わらないってことだ。これ以上は言わん、虫唾が走る……」
愚かな者がトップに立ち、法を変えてしまえば、周りは歪んで定着してしまう。
地上の管理者でも止められない。難しい話だ。
「この件が終われば、ズイールは変わると思うか?」
「王子次第だ。あやつが生きているうちに少しだけ変われば上々だ。長く生きていると、政はあまり期待しない」
王子が帝王になっても期待しないのですね……。
いや、アンバーの目的はグリュムを倒すのが目的だ。
期待するのは大間違いか。
「変わればラッキー程度か」
「そうだ。棚からぼたもちくらいの考えだ。あと言い忘れたが、明日から魔王軍は入れ替えするぞ。鍛えてやってくれ」
もうかよ……。気が早くないか……。明日から大変だ……。
その後、王様から連絡が来て――。
『3日後に騎士の入れ替えするからよろしくね~。ヴェンゲルに言ってね~』
そっちもか……。王国騎士は時間があってまだいいほうだが……。
ヴェンゲルさんに言い、領地にいる騎士に伝えたところ――。
「俺の癒しが……」
「まだいたい……」
「戻りたくない……」
っと、尻追い組は駄々をこねていた。
おい、お前らの目的は女の尻を追いかけに来たのではないぞ……。
多少は強くなったが、自覚がないのなら最後は特別トレーニングを受けてもらう――。
「「「――――ギャァァァァ!?」」」
「オホホホホ! 早く逃げないと大怪我するわよ~!」
トリニッチさんはベヒジャミに乗り、尻追い組を追いかける。
追いつかれると、突き出た2本の牙で後ろ――尻を狙い、突き上げて豪快に吹っ飛んでいく。
落ちてくると、尻を抑えて涙を流す。
「「「汚された……」」」
何を言っている?
いつもお前たちがやっていることだぞ。少しは反省しろ。
「男の尻を追いかけるのも悪くないわね~。興奮してきちゃった……ソウタちゃんにお願いしてもらおう、か・し・ら……」
最後の方、意味深なことを言っていたが聞かなかったことにしよう……。
うん、俺は何も聞いていない。
「フフフフフフ……今夜は見逃せないですこと……」
メア、それはいつものことだろう……。
それはともかく、ここまで効果があるなら交代してきた尻追い組にも通用する。
あまりにも酷かったらまたトリニッチさんとベヒジャミにお願いしよう。




