5話 前半 氷の魔剣
――目が覚めるとベッドの中にいる。
確かレッドオーガを倒して気を失ったはず。
『やっと目が覚めたね』
エフィナが話しかけてきた。
「ここは? 俺の部屋か……」
「おはようございます、ご主人様」
「……え、あ、おはよう」
真横のイスに座っていたのが青髪のロングで青い瞳のナイスバディなメイド姿の美女だ。
誰? というか俺はギルドに戻っている――隣には俺好みのメイドがいるんだ?
「エフィナ……これどういう状況?」
『この子、レイの魔剣だよ!』
「……えっ? 魔剣なの?」
「左様でございます」
魔剣って人型になれるのかよ!? というかなんでメイドなんだ?
『レイが気を失っている時にこの子が君の記憶を読み取ってギルドにまで運んでくれたよ!』
「そうなのか? ありがとう、えっと名前は……」
「名前はございません、……ご主人様、よろしければ名前を付けてください」
やっぱり名前はないのか、こういうのはどうかな。
「アイシス……君はアイシスでいいかな?」
「アイシス……素晴らしい名前をいただきましてありがとうございます。この名前に恥ぬようにご主人様に一生尽くします」
一生尽くすのか? 魔剣を創った主だからかな?
「はは……気に入ってなによりだ、ところでなんでメイドなの?」
魔剣がメイド姿の美女になっているのはおかしいからね。いろいろ聞かないと。
「ご主人様に今必要なのはメイドと思いまして、この姿になりました」
「そうなんだ……」
「なにか問題でもありますか……」
「いや、むしろ俺好みだし、全然問題ないよ! 大歓迎だよ!」
「……ありがとうございます」
アイシスの顔が赤くなった。可愛すぎる! 表情はクールな感じだけど、デレると可愛らしいな。
これはもしかしてクーデレってやつですか! これは良い見ものだ。
「まずはいろいろと情報確認しないと」
『レイ、アイシスのステータス確認すれば?』
「確認できるのか?」
「手を握ってください……」
「こうか?」
アイシスの手を握る。手の感触といい人間そのものだ。
すると頭の中でステータスが読み取れた。
【名前】アイシス
【性別】 女 【種族】魔剣(人間)
【称号】氷の魔剣 レイの魔剣 レイのメイド
【加護】氷剣の加護
【スキル】家事 武器創造・氷 身体強化
魔力感知 魔力制御 情報共有
隠蔽 器用 人化 無詠唱
アイテムボックス
【魔法】氷魔法 無魔法 回復魔法
この子、強いのでは?
明らかにオーバースペックな感じもするけれど……それにメイドだからか【家事】スキルを持っているのか、あとは俺と似たスキルを持っている印象だ。
魔法が氷以外に無と回復が使えるのか。
「なるほどね、人化しているけど魔剣に戻れるんだよな?」
「いいえ、私自体は戻ることはできません。ただ、このようなことができます」
アイシスが手に魔剣を出した。
「これは自分の分身みたいなものです。ご主人様も同じようにできますよ」
「そうなのか? じゃあ……やってみるよ……」
手にアイシスの魔剣を創造すると一瞬で出てきた。
「いろいろとややこしいけど、剣と人化本体なんだ?」
「両方とも本体でございます。私が人化を望んだので魔剣に戻れないのです、ご主人様が握っている魔剣は自我が離れたような感じと思ってください」
さらにややこしくなってきた。手に握っているのは自我が離れたということは、魔剣自体は話すことができないのか。
じゃあ魔剣自体が消えるとどうなるんだ?
「その……言い方が悪いが、手に握っている魔剣が壊れると本体はどうなるんだ?」
本当に言い方が悪いが、確認のためだ。
「いいえ、そのようなことはありません。ご主人様が私を創ったので、魔剣創造で上書きされているかぎり、私は死ぬことはありません」
「そうなのか、それなら良かった。変なこと聞いて悪かった」
「いいえ、とんでもございません! ただ……ご主人様が亡くなると私も消えてなくなります……」
「えっ!? それって運命共同体ってこと?」
「……さようでございます」
ちょっと待て、一番大事なことじゃないか!? だから森の中で人化して助けたのか! でも自分の意志って言ってたから主が危ない時だと動けないから人化せざるをえないか……。
それと一生尽くす発言も納得した。
「なあエフィナ、次に魔剣を創った時にまた人化でもするのか?」
「絶対すると思うよ! 人化したら自由に動けるからね!」
「じゃあエフィナも人化できるってことか?」
「う~ん、今のところは難しいね……レイに魔力をあげているからね」
もしかするとと思ったけれど無理か……長い間森の中にいたから、エフィナを人間に変えて自由にしたかった。。
そして、彼女は俺の命の恩人だ。今は無理だが、いつかは人間に変えて自由にさせよう。
アイシスがうなずいている。もしかして会話が聞こえるのか?
「そういえば、アイシスはエフィナの声は聞こえるのか?」
『はい、聞こえています。私もできます』
そう言いながら頭の中にアイシスの声が響いた。
「できるんだな……」
「ご主人様が遠くにいらしても情報確認ができるようになっています」
「なるほどね……」
魔剣ってなんでもアリだな………。
『それと、ブラックウルフは早めに換金した方がいいよ! 君は3日も寝ていたからね』
「そんなに寝ていたのか!?」
『ボクの魔力で魔剣を創ったとはいえ、君にもかなりの負荷があるからね!』
「そうなのか……」
そんなに簡単に魔剣は創れないということか……。創る時は自分が危ない時に【魔剣創造】を使うことにしよう。
『それと、今度からアイテムボックスより「無限収納」を使った方がいいよ! 無限に物が入り、さらに腐らないからです!』
「無限収納?」
『空間魔法の無限収納だよ! ステータスを確認してね!』
ステータスを確認すると、魔法に【空間魔法】が追加されていた。その他、称号に【魔剣士】、加護に【氷剣の加護】が追加されていた。
「いろいろと増えてるな……」
『ボクは時魔法と空間魔法が得意だから多分中級ぐらいは使えると思うよ!』
えっ!? 時と空間が得意って、その類の魔剣なのか? それに無限収納って、明らかにチートすぎませんか……。
アイテムボックスでさえかなり便利ですけど、物が腐らない、しかも無限に入るなんて、完全に上位互換すぎないか?
「かなりもらってばかりだけど、本当にいいのか?」
『森から出られたお礼だよ! あと、迷惑をかけると思うからね!』
「そんな迷惑だなんて……」
そう言っていると、バタバタと足音がしてきた。
「レイ、大丈夫なのか!」
スールさんとザインさんが来た……。
これどう言い訳するんだ……。