486話 領地に戻ろう――
まあ、俺がごまかすより、アイシスにお願いをしたほうがいいか。
いつもどおりなんとかなるか。
さて、領地に戻ろう――。
「ククク……まだ終わってはいませんよ……」
その瞬間、俺たちの目の前に反応が出る――地面から出てきたのは禁忌野郎が呼んでいるスケルトンだった。しかも額に邪石を付けている。
おい……禁忌野郎を倒して全滅したと思ったが、生き残りがいるのか……?
いや、違う――。
「お前……雑魚に器を変えたな……?」
「ご名答です……。私は僕がいるかぎり器を移し替えることができます……。ですが、あなたに与えられた痛みは、いまでもあります……」
チィ……そんな芸当ができるのか。
だが、【断罪】のスキルで痛みはまだ残っているようだ。
雑魚に姿を変えてもすぐに倒すことができる。
でも、おかしいことに、なぜ弱いまま俺たちに姿を現す?
何か企んでいのか?
エメロッテと双子の天使は魔法を構えて、いつでも発動できる。
「言っておきますが、もう戦う気力がありません……。取引に来ました――」
取引?
禁忌野郎が地面から何か――ナゴミ!?
ナゴミが気を失って捕まっている……。
この野郎……卑怯だぞ……。
「取引はなんだ……?」
「ククク……私を追わないで逃がしてくれませんか……?」
「逃げるために人質にしたのか……」
「私はやることがあるので、確実に逃げたいのです……。もし、逃げたとしても、あなたたちにすぐ追いつかれて帰らぬ人になります……。半分以上の力を失った私には難しいのです……」
コイツ、禁忌をばら撒くだけのバカではないみたいだ。
悔しいが、ナゴミの安全が一番だ。
「その子を置いて立ち去れ……。もし、何かしていたらすぐに追って切るぞ……」
「心配はありません……。この小人には何もしていません……。私は絶対に約束を守る主義なので……」
そう言うと、禁忌野郎はナゴミを置いてある程度の距離を取る。
俺たちはナゴミに駆け寄り、エメロッテが確認する。
「安心して、ナゴミちゃんは眠っているだけよ。禁忌によるダメージもないわ」
よかった……。とりあえず安心した。
「ククク……言ったでしょ……私は約束を守る主義と……。交渉成立ですね……」
「条件を追加だ。もう二度とここに現れるな、お前も地獄に落ちたいほどの痛みを味わっただろ?」
仇を取りたいが、これ以上。みんなに危険な目に遭わすわけにはいかない。
この野郎はもう帝都にいることはわかっている。
そこでケリをつける。
「ククク……欲張りですね……。それは、わかりません……。ですが、行くときはしっかり事前に手紙でも送ります……。すぐには行きません、私の身体がもっと完璧な存在にならないといけませんからね……。もう私の力では限界がありますね……。グリュム様に頼るしかなさそうだ……。では、ごきげんよう――」
ブツブツと言いながら黒い靄の球体になって、逃げだしていく。
グリュム? コイツが黒幕ではないのか?
「グ、グリュム……」
「「こ、こわい……」」
ティーナさんと双子の天使は真っ青になって震えが止まらなかった。
この3人が知っているってことは大昔に何かやらかした相当ヤバい奴なのか?
もしかして禁忌を教えた元凶なのか……?
「ソシアが危ない……。悪いけど、レイ……ここでお別れだわ……。この子たちをよろしく……」
「ちょっと、ティーナさん!」
そう言ってティーナさんは姿を消した。なんでソシアさんが危ない?
勇者召喚を阻止していたゲートが危ないことなのか……?
「なぁ……グリュムって――」
「「いや……」」
俺が双子に問いかけようとすると、涙をボロボロ流して答えられない状態になった。
そんなにヤバいのか……。天界でも忘れないほどの諸悪の根源なのか……?
「主ちゃん、ナゴミちゃんをゆっくり寝かせたいから先に戻るね。落ち着いたら戻ってね……」
「ああ、わかった。ナゴミを頼む……」
エメロッテはナゴミをおぶって、「ゲート」で先に戻った。
ここまでひどいと双子の前では口にはできない……。
知っているとしたらアンバーしかいないか。
いろいろと落ち着いたら聞いてみる。




