483話 禁忌を使う者④
どんなに強くなっても【浄化】には敵わない。水と結晶の【混合魔法】を使う――。
「――――アクアマリンランス・レイン!」
「ムだダぁぁぁ!」
無数の水を纏った結晶の槍を放つが、黒い靄が禁忌野郎を包み、鎧ように硬くなり、はじかれてしまう。
ほぅ……ただの骸骨になったわけではないようだ。
「おマエの攻撃ハ、モウワかってイる――――クワァァァァ」
なんだこの声は……鼓膜が破れるほどの轟音だぞ……。
魔力で防音対策していないと怯むところだ。
「いやぁぁぁ! やめてぇ!」
ティーナさんはあまりの轟音に耳を塞ぐ。
さすがにここにいさせるわけにはいかない。
「――――ゲート!」
ティーナさんを領地に移動させる。
無理やりとはいえ、この状況はわかってくれるだろう。
それはいいが……黒い靄が「クリスタルワールド」を浸食して結晶がドロドロと溶けていく……。
マズいな、俺は後ろに下がり水と結晶の【混合魔法】を発動しようとすると――。
地面から黒い液体がボコボコと湧き出て、姿を現す。
腐敗した大型の竜――ドラゴンゾンビだ。
「コレが、ワたシノ最高けッサクだ! さァ、ゾンぶんニあばれルがイイ!」
こいつが飛ばれると厄介だ。その前に終わらせてやる――。
「――――アブソリュート・アクアマリン!」
再び水と結晶の【混合魔法】を使い、全身を白藍色――結晶化させる。
「――――ギャァァァァ!」
雄叫びとともに結晶が剝がれてしまい、その勢いで翼を羽ばたかせ飛んでしまう。
【浄化】が効かないのか……。戸惑っている場合ではない。
【飛行】を使い、近づいて二刀で切りかかる――。
「――――藍晶乱華!」
だが、黒い靄にコーティングされ、切っても傷をつけることができなかった。
魔剣より硬いとはあり得ない……。【魔力解放】と【逆鱗】を使っているんだぞ……。
「ムだダぁぁぁ!」
ドラゴンゾンビは尻尾を使い、俺を薙ぎ払おうとする――。
俺は魔剣で防ぐが黒い靄がまとわりつく。
ちくしょう……力が抜けて耐えられない……。
そのまま払われて思いっきり地面に叩きつけられる。
「フハハハハ! ワたシのカちだ!」
思うように身体が動かない……。禁忌をくらうとこんなにも力が入らないのか……。
まだ、終わりではない……。
精一杯、力を入れ――手を震えさせながら治癒龍の魔剣を出す。
握った瞬間、深緑色の強い光に包まれて、黒い靄が消し飛び、致命傷だった身体は完全回復する。
やっぱり最弱の魔剣ではない、最強の魔剣だ。
「ナ、なんダ、そノ剣ハぁ!? み、ミセるなァ!? い、イますぐシマエ!?」
禁忌野郎は治癒龍の魔剣を見ると怯えて後ろに下がる。
禁忌そのものを治すなんてあいつにとって恐怖でしかないか。
だったら、はったりをかます。
「この剣はお前を倒す最終兵器さ、覚悟はできているよな?」
「イイからシマエ、シマエ、シマエ!」
怒り狂い、目障りな声で大量ののスケルトンを呼び道を塞ぎ、黒い球体になって逃げ去る。
ここまで効くとは予想外だ。
しかし、アイツを倒さないと意味がない。【飛行】を使ってもドラゴンゾンビが邪魔をする。
残りの魔力も半分しかない。
いったんエリクサーを使って体制を整えるしか――。
「――――シャイニングブレス!」
エメロッテが「ゲート」を使って目の前に現れる。しかも、ティーナさんも……。龍と光の【混合魔法】を使い――口から光を吐き、スケルトンを一瞬で消滅させる。
よし、このまま逃げている禁忌野郎にも当たる。
「――――ギャァァァァ!」
ドラゴンゾンビが地上に降り、禁忌野郎を庇う。
魔法が終わると、無傷のままだった。
エメロッテの魔法でも効かないのか……。
「エメロッテ、時間稼ぎお願いね」
「わかったわ、怯えないで早く済ませてね」
「余計なこと言わないで!? わかってるいるわよ!?」
「時間稼ぎってどういうことだ?」
「話はティーナちゃんに聞いて、行ってくるよ」
そう言ってエメロッテは【飛行】を使い、ドラゴンゾンビに近づく。
「ティーナさん、どういうことだ……?」
「レイ、あなたに力を与えるからあの愚か者を絶対にやっつけてちょうだい」




