482話 禁忌を使う者③
「――――クリスタルワールド!」
周囲は尖った柱状の結晶が広がり、スケルトンの胴体を突き破る。
そして、徐々に結晶化され動きが止まる。
派手にやってしまったが、禁忌野郎に届く範囲だ。
絶対避けられないし無傷では済まされない。
「――――ギャァァァァ!? 私の腕がぁぁぁ!?」
禁忌野郎は悲鳴をあげて、腕が結晶化していた。
このままいけば結晶に飲まれて終わりだ。
長かった……これでみんなの仇が取れた……。
あとはアイツが苦しんで結晶化待つだけだ。
「――――ふざけるなぁぁぁ!」
瞬時に剣を取り出して結晶化された腕を自ら切り落とした。
アイテムボックス使えるのか……。
チィ、これで終わりと思ったが、しつこい……。
だが――。
「なんで再生できない!? 完全なる肉体なのにどうしてだぁぁぁ!?」
禁忌の身体になったおかげで【浄化】が効いている。
もう二度と腕は再生しないだろう。
「お前は禁忌に触れ、哀れな姿――腐った身体になったことに気づかないのか? かわいそうな奴だ」
「私の身体が腐っていると……? 凡人風情が何を言うかぁぁぁ!?」
再び目障りな声でスケルトンを呼ぼうとするが、何も起こらない。
「なぜだぁ!? なぜ出てこない!?」
「クリスタルワールド」のおかげでここ周辺はもう禁忌魔法を妨害する仕組みとなっている。
もちろん、ここを出ないかぎり、遠くにスケルトンを出すこともできない。
「残念だったな、もう遊びは終わりだ。何か言いたいことでもあるか?」
「ふざけるなぁぁぁ!? 私が積み上げた計画を台無しするなぁぁぁ!?」
「何が計画だ……? こんなクズいことをしてまだわからないのか……? 小人の大切な故郷を奪われ死人でた……。いい加減しろ……」
「知るか! 私はこれまで数十年我慢したんだぞ! やっと不死の身体を手にしてようやく自由に動けると思ったら失敗ばかりだ! それになんだ! 命令で小人用の奴隷の首輪に聖石を作っていつの間にか年月が経ったのだぞ! ほかだけでもない、人型のハニーハンターもそうだ! 私が忙しいから代わりにお願いしたのに1体も連れてきやしない! ああ……こんなことなら無理してでも私が行けばよかった……。ゆっくり観察しないで、早く連れ去ればよかった……」
勝手なこと言いやがって……。救いようのないゴミだ……。
ちょっと待て――。
「お前……どうやって小人の奴隷の首輪と邪石を作った……? まさか連れ去って実験台にしたと言わないよな……?」
「言っただろう!? 私は数十年我慢したと! だが、道具を作るために小人2人を魔法でおとなしくさせ血を少し取っただけだ。ああ……命令で連れ去るなと言われたが、もったいなかった……。後悔でしかない……。そのまま――」
その発言で怒りが収まらなかった――。
「――――クリスタルランス!」
「――――ギャァァァァ!? まだ話の途中だぞ!?」
「お前か……。お前がミツキさんの両親を殺したのは!?」
これで辻褄が合った……。
原因不明の病はこのゴミの禁忌で身体を蝕まれ命が尽きた。
わかってしまった以上、それ相応の罰を与えないと気が済まない……。
「レイ、落ち着きなさい! 魔力暴走しちゃう!」
ティーナさんは慌てていうが、大丈夫だ。
【逆鱗】のスキルで自我を保ち、魔力が抑えている。
「知るか! なんの恨みがあろうと私の知ったことではない!」
「なら恨みを買われたことに後悔するがいい――――クリスタルニードル・レイン!」
「――――ギャァァァァ!?」
鋭い結晶の無数の針は禁忌野郎の全身に刺さり、あまりの痛さに倒れてもがく。
まだ序の口にすぎない……。おかわりはいっぱいあるぞ……。
「ふざけるなぁ! ふざけるなぁ! ふざけるなぁぁぁ! キェェェェェ――――」
急に発狂しするが何も変わらない――。
その時だった――禁忌野郎の黒い靄が放出し、姿見えなくなり、地響きが鳴る。
黒い靄が消えると、違う姿――黒い骸骨の姿に変わっていた。腕も元に戻っていた。
「ふザけるナぁ……。ワたシヲ怒ラせたコと思イしるガいい……」
いまさら何を言っている……? 余計に貧弱になって何ができる?
俺がやることに変わりはない、ただ後悔させるだけ――。




