481話 禁忌を使う者②
禁忌野郎を追いかけていくが、雑魚を出さずに逃げている。
時間稼ぎすると思ったが、領地から遠ざかっている。
何を企んでいる……?
まあ、いい……、あの愚か者を切るだけだ……。
荒れた大地に移動すると禁忌野郎は人の姿になり微笑んでいる。
「ククク……ここでしたら問題ないでしょう……。あそこだと魔法が使いにくい……」
なるほど、エメロッテのおかげで禁忌をある程度、阻害していたか。
すると、禁忌野郎から黒い靄を纏い、耳障りな声で唱える――。
「――――ククク……。私の最高傑作をご堪能してください……」
今度は数十mくらいあるスケルトンが地面から現れる。
それも数十体と。ここだけでなく、領地周辺を囲んでいる。
「噓でしょ……まだ力があるの……異常よ……」
ティーナさんは口を震えさせて言うが、またデカくなっただけだ。
ただの見せかけだ。
「どうですか? 私の美しい配下を……」
「ただの骸骨が最高傑作とか芸術性のかけらもない……。ほとんど骨しかないお前に理解なんて不要だ……」
「そうですか…。凡人のあなたには、わからないようですね……。私の身体も最高な姿なのに失礼なことを言いますね……」
「もういい……骸骨に口を聞いても無駄のようだな……」
「失礼ですね……。いいでしょう……特別にあなたに名前を言います――ワクダフ・ウーステと申します……。以後お見知りおきを……」
「名前なんてどうでもいい――――アクアマリン!」
俺は再び水と結晶の【混合魔法】を使い――水色の結晶の塊をスケルトンの前に落とす。
しかし、後ろに下がり効果範囲外へ、そして大きな剣を振って「アクアマリン」を何度も叩いてヒビが入り、砕け散っていく。
ただの骸骨ではなさそうだ。
知能もそれなりにあるぞ。
「ククク……どうですか……? 私の最高傑作は? あなたのユニーク魔法を完全に防ぎましたよ……」
「それがどうした? 範囲系の魔法から逃げるなら直接当てるだけだ――――アブソリュート・クリスタル!」
スケルトンは全身結晶に覆われて身動きが取れなくなった。
そして【魔力解放】を使って、近づいて切り刻み、粉々になり消滅する。
だが、禁忌野郎は詠唱して次々とスケルトンを出していく。
「ククク……何をやっても無意味ですよ……。それより、あなたはここでのんびりしていいのですか……? 私の最高傑作がお住まいに近づいていますよ……?」
「俺が浅はかな煽りを通じると思っているのか……? お前を倒さないと消えないことはわかっている……」
「私は心配しているのですよ……? 心配しないのでしたらこのまま前進させ――」
その時、囲んでいたスケルトンが次々と消滅する。
「な……なぜだ……? 私の最高傑作が……簡単にやられただと……?」
禁忌野郎は戸惑いを隠せなかった。
こんな骸骨だけの敵にみんながやられるわけないだろう。
よくもまあ、これが最高傑作と言うよ。
「お前の芸当はこれだけか? 他人の心配より自分の心配をしたほうがいいのではないか?」
「ふざけるな! ふざけるなぁぁぁ――――!」
急に自分の頭を叩いて狂いはじめ、詠唱をする――禁忌野郎の近くに十数体の大型のスケルトンが現れる。
「よくも、よくもぉぉぉぉ――――! 私の計画を邪魔するなぁぁぁ――――!」
急に冷静になったり、狂いはじめたり――感情の浮き沈みが激しいが疲れないのか?
まあ、コイツは人をやめているからなんとも言えない。
「もういや……。耐えられない……」
ティーナさんは尻もちついて涙を流して限界のようだ。
さすがに長期戦は俺の魔力が持たない……。
ここで決めるしかないか。
魔力を多めに結晶魔法を使う――。




