478話 女神の監視
「俺を監視しなくても、天界で――」
「近くで監視しないと意味がないわ。わかってちょうだい」
わかってもなにも今後、面倒なことが起きるから困る。
特に俺の生活面で……。
「それこそ、大変なときにソシアさんとシャーロさんに言われないのですか……?」
「だからその必要はないはないわよ、2人に許可もとってあるんだから」
えぇ……、絶対に戻らないじゃん……。
「そうなの~? 残念ね~」
「残念ってどういう意味よ!?」
「主ちゃんと2人っきりになる時間が少なくなるからよ~」
「あら、それは残念ね、独り占めは許さないわよ」
互いに睨み合い、バチバチと火花が散っている……。
これからこの2人にプライベートの時間が奪われそうです……。
――――◇―◇―◇――――
――ティーナさんが来て3日が経つ。
ずっと2人に監視され、ゆっくりできる時間がない……。
普段のエメロッテならお茶の時間になると俺から離れるのだが、ティーナさんが何かするかと思い離れません……。
食事、睡眠にトイレまで……。
それに――。
「女神の裸なんてめったに見れないわよ、光栄に思いなさい」
俺が入浴しているときまでタオルを巻かずに全裸で密着する。
…………肌はきれいでとても良いが――。
「あら~女神の裸ってそんなに貧相なの~?」
「ちょっと、私が気にしているところ言わないでよ!?」
あるものは貧相ではないが若干、小さいです……。
いろいろ見てきたから興奮しないです。
その……エメロッテのダイナマイトボディを見るとね……。
「大丈夫~、貧相な身体の女神でも愛してくれる人がいるから~」
「私は愛する側よ!? これでも信徒にはすごい愛されているのだからね! バカにしてないで!?」
バカにしてるもなにも……ティーナさんの像は盛られているからな……。
本当の姿を見たらがっかりするだろうな……。
まあ、身体で崇拝しているわけではないがアマーニには見せられない姿です。
マイヤで【擬態】で盛りすぎたティーナさんを本当の姿だと思っているからな。
まあ、本物には会うことはないだろう。というか会わせたらややこしくなる。
お熱い生活で干からびていたソウタは意識を取り戻すと、ようやく気づいた。
「女神ミスティーナがいる……」
「私がいると都合が悪いの?」
「いえ、問題ありません」
「よろしい、たまにはアマーニに顔を合わせてちょうだい。あの子ソウタに会いたがっているみたいよ」
現界しても信徒の様子がわかるのか。
「それは大変だ。今すぐ会う」
「フフフフフ……ではワタクシが移動させます……」
珍しくメアが王都に送ってくれた。
いや、メアのことだからまた何か企んでいるのか……?
そう思っていたらすぐに戻ってきた。
「フフフフフ……何もしてませんのでご安心ください……。むっつりなお兄さんは2日ほど王都に滞在すると言っていました……」
逆に何もしていないのが恐いです……。
本当に何もしていなければいいのだが……。
夜のこと――。
2人に監視され、寝る時間となった。
今日もゆっくりできなかった……せめて1時間くらい1人にさせてほしい……。
寝ようした瞬間だった――領外に無数の禍々しい魔力反応が急に出る。
囲まれているな……それも数千以上はある。
もう嫌と言うほどわかる……禁忌野郎が引き連れてきたか。
そして窓を見ると、小さく輝いている魔力玉が降っていた。
危険を察知したマナの大樹が合図かもしれない。
「エメロッテ、みんなを頼む」
「わかった、主ちゃんはどうするの?」
「俺は禁忌野郎を倒す」
「わかった、危なければ引き返してね」
「ま、待って、私も行く」
ティーナさんは震えた手で俺の腕をつかむ。
「ティーナさんは危ないので待機してください」
「私も行くに決まっているじゃない!? この世を穢す禁忌なんて許せないわ!」
「ティーナちゃんは現界では力が使えないから行かないほうがいいよ」
エメロッテの言うとおりだ。今のティーナさんは天界と違い、力を使うことができない。
力を使えるとしても禁忌野郎を対処できない。
「戦闘の邪魔はしないからお願いレイ、私も行かせて!」
はぁ……こんなときにワガママを言うとは……。
断っても絶対についてくるしな……しょうがない――。
「わかりました。邪魔はしないでください」
「えぇ、もちろんよ! さぁ、行きましょう」
まあ、とにかく、これで禁忌野郎と対面できるってわけか。
絶対に仕留めてやるから覚悟しろ……。




