471話 別で解消……
――翌日。
広場でやる気満々のファイスさんと中二病をこじらしているソウタ、顔色がよろしくない尻追い組の素振りを見ていると――。
「ボス相談があります。お時間よろしいでしょうか?」
ホーツが相談に来るとは珍しい。
「どうした? 何かあったのか?」
「私たち専用の湖を探しに行きたいのですが、ダメでしょうか?」
このタイミングで探しに行くとはどうしてだ?
温泉で喜んでいたが、不満があるのか?
「理由を聞いてもいいか?」
「私たちが温泉に入ると外から視線を感じます。特に女性が多く入っていると数十人の視線――誰でもわかる魔力反応があります……。みんな気になってゆっくり入ることができません。それで視線を気にしないで入れそうな湖を探したいです」
視線で察しました……。
「その視線ってのは……」
「はい……」
俺とホーツは尻追い組を見る。
はい、予想どおりです。
アイツら……ここまでくると異常だな……。
これはロードを諦めたのか?
諦めたのならいいが、また別の問題が……ユニコーン――女性の裸を見てモチベを保とうとするな。
たとえ裸を見られても恥ずかしくないユニコーンでも、視線は別だ。
「ちょっと待ってくれ――」
ファイスさんに訓練を中断させて、尻追い組を呼び出す。
なんで? という顔をするな。
「おい、お前たち……ユニコーンの入浴――女性の裸を覗いていたんだな……」
「「「見ていません……」」」
なんだそのやる気のない返答は……。
穏便に済ませよう思ったが、そうもいかなくなった。
俺は【威圧】を使った――。
「「「ひぃぃぃぃ――――!?」」」
尻追い組は震えが止まらずあまりの恐怖に膝をついてしまう。
「「「み、見ました!」」」
やはり【威圧】には抗えないようですぐに認めた。
「覗きに行ったかは察している。お前たち、自分が情けないと思わないのか? すぐとは言わないが割り切って違う女性を探せ……」
「これはつい出来心で――そう、精霊使いのせいで身体が勝手に動いたのです!」
「すべて精霊使いのせいです! 俺は悪くありません!」
「元は精霊使いが元凶です! レイさんならわかってくれますよね?」
言い訳が見苦しい……。
なんでもかんでもソウタを使うな。
「ふぅ……混沌からの叫びが聞こえたか……。だが、足りない……まだ足りんぞ……」
ソウタ、左眼を隠して言うのではありません。
理不尽に言われているけどまだ大丈夫ってことかな?
「お前たち、覗きとは騎士として恥だ! まだまだ性根叩き直さないといけない……。陛下に相談して可能性なかぎり面倒を見てやる!」
ファイスさんは黙って見過ごすわけはいかないようですね。
「噓つけ……美人の結晶騎士と一緒にいたいからだろう……」
ヴェンゲルさんは呆れながら言う。
それはありますね……。内心、ラッキーだと思っているかもしれない。
「素振りは終わりだ! これから領外100周だ!」
「「「勘弁してください!」」」
さらにやる気を上げたファイスさんとさらに顔色を悪くした尻追い組は走っていく。
「テメェも決まっているだろう……早く行け……」
「いいだろう……。さらに俺の闇が増していいぞ……」
闇ではなく、中二病が悪化するだけだ。ソウタも走っていく。
「まったく……ファイスも世話が焼ける……。ちょっくら陛下に報告してくる。ファイスが女のために残るのは許されない。先に俺が言う」
騎士団長があってはならないですよね。
ヴェンゲルさんもその場を去る。
「とりあえず注意はしたが大丈夫か?」
「ありがとうございます。ですが、あの感じだと懲りずに覗いてくると思う不安が……」
まだ不安は解消されないようです。
小屋を作って対策を考えるしかなさそうだが、すぐにはできない。
生活用水で使っている湖で別の通路を空けてユニコーン用の水浴び場を考えたが、絶対に覗かれる。
遠くに川があるが、禁忌野郎の警戒で遠くには行かせられない。
このタイミングは悪すぎる……。
残りは…………あそこしかないか……。
「あるにはあるが……空間魔法で遠くに行くけどいいか?」
「ゆっくりできるなら構いません」
「わかった。アンバーに相談してくる――」




