468話 サプライズ
あれから1週間が経つ――。
ロードはというと――領地に馴染んでいき、小人たちと稽古したり、子どもにはお守をして充実していた。
「みんな元気に育ってね」
子どもの接し方が保母さんです。
これがみんなに恐れているデスナイトだったのが不思議です。
まあ、好きでやっているから別にいいけど。
ハクトはいうと――朝から夕方まで喜びながら領地を駆け回っていた。
大変気に入ってよかったのはいいが、そこらじゅうにマーキングするのはやめてほしい……。
ルチルは「躾けるから安心して!」と言っているがはたしてやめさせるだろうか。
それにつられたのかユニコーンたちも【人化】を解除して元の姿に戻って一緒に駆け回る。
野生の血が騒いでいますね。
まさかホーツまで参加するのは意外だった。
それでストレス発散できるならいいか。
変わらずソウタと尻追い組はセイクリッドとモリオンにしごかれている。
変わったと言えば――吹き飛べされることが少なくなっていた。
少しは斬撃と槍撃を回避できるかと思ったが、タイミングよくソウタを盾にしていた。
ずる賢くなってどうする……自分が恥ずかしくないのか? 騎士道精神がありゃしない。
いい加減、自分の身は自分で守れ。
まだ1週間しか経過してないから、もう少し遠い目見たほうがよさそうか。
昼過ぎになると――尻追い組はバテてて、倒れてしまう。
まあ、ソウタは言うまでもなく、余裕である。
「清々しい顔をしやがって……なんでアイツは平気なんだ……?」
「アイツは化け物か……? 絶対小細工してあるぞ」
「絶対にまぐれだ。そういつもまぐれに決まっている」
セイクリッドとモリオンと対等に闘っているのを認めたくないようです。
子爵になったことも認めてなく――スタンピードは端で戦って楽をして英雄になり、子爵になったとか難癖つけてくる奴もいた。
まったく呆れる……。
ソウタはいろんな意味で修羅場を乗り越えているしな、女癖は悪いが、その分努力もしているから尻を追っている奴とは違う。
そう、格が違う。
この訓練で技量は認めてもいいと思うが。
しかし、連日続けてやるのは無理があるか。
今日はこのくらいにさせて明日に――ん? ロードとメアと双子が来た。
嫌な予感がする……。
「みんな、もう少しで終わるから頑張って」
「「「――――ウオォォォォ!」」」
ロードが声をかけるとすぐに立ち上がり、やる気で満ち溢れて再開した。
「ロード、メアに頼まれたのか?」
「そうだよ。私が言えば体力が回復するとか言われたの。私そんな力ないのに、この人たちって不思議ね」
やっぱりな……。
「フフフフフ……ワタクシはただ皆様方に元気付けようとしただけです……」
噓言わないでください。ただ反応を見て面白がっているくせに。
「「男って単純ね」」
双子は尻追い組のあまりの滑稽さにクスクスと笑う。
なぜこの二人も来たのと思ったらメアと同じか……。
当分、この3人に玩具にされそうだ。
「本当にバカだな……」
それを監視していたヴェンゲルさんは呆れていた。
いや、情けない姿を毎日見て呆れていますね。
だが、明日には特別ゲストが来るので安心してください。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
集会場で待っていたら迎えに行ったアイシスが戻ってきた。
「ここがレイ殿の領地か。1週間お世話になる」
騎士団長のファイスさんが忙しいなか、来てくれた。
騎士たちは敬礼をしてファイスさんを迎い入れる。
そう、その特別ゲストだ。
ヴェンゲルさんと相談して尻追い組の性根を叩き直すことになった。
これ以上、魔王軍に王国騎士の恥を晒さないために急遽決まった。
そのアンバーと魔王軍は気にしてはいないけどね。
もちろん、尻追い組には言わずにサプライズする。
「さっそくだが、怠け者のところに案内してほしい」
「フフフフフ……こちらでございます……」
メアが早く絶望する顔を見たくて案内を始めた。
しょうがない、俺も様子を見に行くか――。




