466話 尻追い組の愚策
「えっ……ちょっと……」
「ロードが困っているだろう……。早く仕事に戻れ……」
そう言っても尻追い組は引き下げることはなかった。
「レイさん、この美女はどこを探してもめったにいない。告白するまで戻りません」
「この美女を逃したら一生後悔する!」
「どうか――どうか俺を選んでください!」
必死だな……。
ほかに探せばいるだろう……。
いや、見つけてもドン引きされて断られるか。
「私……魔物だけど……」
「「「かまわない!」」」
胸が大きければ誰でもいい奴らだ。
それだけでは説得できない。
「セイクリッドとモリオンはどこに行った?」
「グランドマスターの暴走を止めに行ったよ」
「はぁ!? なんでヴェンゲルさんが暴走している!?」
「確か……ソウタと何かあったらしい……。私と関係しているみたい……」
いやいや、いくらソウタでも手は出さないぞ。胸ばっかり見るが自重するはず。
すると、尻追い組は「ソウタ」で反応してにやついている。
ああ……なんとなく察した……。
こいつらが罠にハメたな……。
ヴェンゲルさんにソウタがロードを狙っていると言って早とちりして暴走、セイクリッドとモリオンはロード関係だから止めに行ったのかもしれない。
それで告白しやすい環境を整えたか……。
このタイミングで寝坊した俺が悪いのもあるが……。
原則に厳しいアイシスはどこに行った?
仕事サボってまで告白とかアイシスは黙っていないぞ。
屋敷にいなかったし、念話で聞くか――。
「『アイシス、どこにいる?』」
「『王都です……』」
なぜか恥ずかしそうに言う。
「『王都に用があるのか?』」
「『特売……』」
「『はっ? 特売ってなんの?』」
「『年に一度王都でお菓子の特売と聞きました……。ですが、どのお菓子屋もやっていません……。日にちがズレたのでしょうか……?』」
…………おい、お前ら……アイシスを騙すな……。
もう呆れるしかない……。
そこまでしてロードに告白したいのか……? その体力、仕事に回してくれ。
「『騙されてるぞ。戻ってきてくれ』」
「『おかしいと思いました。ただちに戻ります。私を騙すとはお仕置きが必要です……』」
今日で尻追い組の命日かもしれない。
さて、アイシスが戻ってくるまでこいつらを縛りつけるか――。
「フフフフフ……おもしろくなりましたこと……」
魔法を使おうとした瞬間、メアは満面の笑みで近づく。
よく言うよ……隠れて見ていたくせに……。
でも今回は手出しはしてないようだ。
この展開をわかっているかのように。
「何か言いたいことがあるのか……?」
「もちろんです……。これ以上見て見ぬふりをするわけにはいけません……。ロードもはっきり言ったほうがいいですよ……。たとえば好みの男性を言って諦めさせるとか……」
意外にまともなことを言う。
だが、ロードに好みとかあるのか?
「そうね……強くて優しくて思いやりがあって――」
意外にタイプがあるようです。
「俺はほかの奴より強いぞ!」
「俺は世界一優しいぞ!」
「俺は誰にも負けず思いやりがあるぞ!」
尻追い組は必死に猛アピールする。
自分で言うなよ……。それは他人が決めることだろう……。
「強くて優しくて思いやりがある……。それってつまりむっつりなお兄さんなことでしょうか……?」
ちょっとメア、無理やりソウタに結びつけるな……。
手出しはしないが、口出しはするのかよ……。
「「「精霊使い……」」」
もう尻追い組は怒りを露わにしています。
「むっつりなお兄さん……? 誰なの?」
「ソウタさんですこと……。昨日は笑顔で会話していたのではありませんか……?」
「ソウタのことね。確かに紳士的だけど――」
「紳士と言いましたね……? これはもう相思相愛でよろしいでしょうか……?」
だから無理やり結びつけるな!?
さすがに尻追い組はわかる――。
「なんでいつもアイツなんだ!?」
「アイツのどこがいいんだ!?」
「ふざけるな!? 俺の告白を邪魔するな!?」
嘆いていました……。
そして後ろを振り向き――。
「「「精霊使い……許さない……」」」
今までとは比べものになたないほど魔力を出してソウタの方へ向かう。
はぁ……結局いつもどおりかよ……。
「紳士的だけど、いやらしい目で見てくるから好みではないと言おうとしたのに」
もう遅いです。
というかソウタ、お前も大概にしろ……。
「メア……口出しはしたのだから後処理はしろよ……」
「フフフフフ……もちろんです……。ですがロードを守りましたのでそこは評価してください……」
そこは評価しよう。
だが、タイミングが悪く縛りつけることはできなかった。
「お待たせいたしました。それではお仕置きの時間です」
アイシスが戻ってきたから、あとのことはお任せしよう。
それじゃあ、俺はロードを案内するか――。




