464話 人と魔物の価値観
夕食を終えて、ソファでくつろいでいた。
「ご主人、出たよ!」
先にロードと一緒にお風呂に入ってきたルチルが全裸でリビングに戻ってきた。
さて、俺も入ろう――って……ロードも全裸で来るのですが……。
「ロード、せめてタオルを巻いてリビングに入ってくれ……」
「なんで? ルチルちゃんはいいのに私はダメなの?」
ロードは不思議そうに首を傾げる。
えぇ……説明しないといけないのか……。
「ルチルはいつものことだ。ロードは【人化】で美人になったからほかの人――特に男性の前では裸を見せてはいけない。欲情して襲われる可能性がある」
「そうなの? セイクリッドとモリオンは私の裸を見て欲情する?」
「確かに美人だが、いつものロードだ。欲情はしないぞ」
「オレが友に欲情すると思うか? 戦いの方が興奮する」
「だってさ――このままでいてもいいでしょ?」
このお二方に聞いても意味がないぞ……。
常識があると思ったが、ここで価値観が違うとは。
いや、魔物だから人の常識なんて知らなくて当然か。
【人化】できるシエルとリヴェはそこまで恥ずかしいとは思ってはいない。
ユニコーンだって、普通に混浴を躊躇わず小人たちと一緒に入っているしな。
言わないと大変なことになりそうだ。
「ここではいいけど、絶対人前ではやめろよ。人と暮らすための常識と思ってくれ」
「人っていろいろと複雑ね。わかったわ、レイちゃんに従うわ」
なんだかんだ受け入れてくれた。
しかし……鎧を脱ぐとこんなにもスタイルが良いとは……。
あの双子と引きを取らないほどだ。
これは尻追い組が…………いや、考えるのはやめておく。
「あ~やっぱり裸だ~。風邪ひくよ~?」
「この身体になって身も心も温かいから大丈夫だよ」
「そうは言っても~。ダメだよ~そんなロードちゃんのために服を作ってきたよ~」
エメロッテは赤いセーター、レギンス、下着一式を持ってきた。
自分の部屋に行って何かしていると思ったら服を作っていたのか。
よく短時間で、できましたね。
「私のために作ってくれたの?」
「そうだよ~。サイズはだいたい合っていると思うよ~」
「せっかく作ってくれたなら着るわ。ありがとう」
「どういたしまして~」
さっそくロードは服を着た。
着たのはいいが、妙に色気を感じる……。しかも肩出しのセーターかよ……。
「肩出しはだと寒いのでは……?」
「急いで作ったから~これが限界なの~。あとはアイシスちゃんに任せるわ~」
まあ、即席で作ったならしょうがないよな。
しかし……この服装で領地に戻ったら尻追い組に目を付けられそうだ。
鎧を着るか元の姿で会わせたほうがいいな。
そのうちバレるから意味はないか。
とは言ってもロードが尻追いされる可能性があるとかぎらない。
アイシス、メア、ルチル、エメロッテは追われてもおかしくはないが、尻追い組は賢者の弟子ということで自重している。
シエルも狙われていたが自重している。ユニコーンもそれなりのいるが、伝説の存在だから手出しできない。
小人の中で大きいホホミも若干狙われていたが、ライカが守っているから手出しできない。
だが、ウルマはソウタが早死――亡くなったことを前提として狙い、待っている奴がいる。
まったく……胸さえよければいいのかよ……。
とにかく、ロードはセイクリッドとモリオンがいるし多分大丈夫と思う。
そう、多分……。
さて、風呂でも入るか――。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
領地に帰る準備ができた。
だが、ロードとハクトは寂しい顔をしていた。
一瞬で荒らされて急に去るのは辛いに決まっている。
「少し待とうか?」
「大丈夫よ、ここにお別れの挨拶をしたから早く行きましょう」
「ワン!」
落ち着くまで待とうと思ったが、二方は返事する。
強いな、俺だったらすぐ立ち直ることはできない。
こんなこと二度と被害を起こさないよう絶対に禁忌野郎をぶっ潰してやる。
空間魔法を使い、領地に戻る――。




