463話 無事だが……
フォレストキングを倒し、フェンリルを安静するため家――【マイハウス】に入る。
邪石から取り除いたとはいえ、失ったものは大きい……。
小屋は崩壊、花畑は枯れた大地になり、湖は干からびてしまった。
ロードには酷だが、決断しなければいけない。
唐突な出来事で整理がつかないだろう。考えがまとまるまで待つ。
「ねぇ、お願いがあるの……。あなたの領地に住ませてほしいの……。この子と一緒に安全な場所に行きたい」
もう決断していたとは意外だった。まあ、せざるを得ないところまでいっている。
「わかった、戻る前に何か心残りとかあるか?」
「準備させてちょうだい、小屋は壊れたけど使える道具があるから探したいの。あと、この子にもしっかり伝えないといけないしね」
そういうことなら戻るのは明日にしよう。
ロードは使える道具を探しに家から出る。
「ふむ……まさかこんな形でこの地を出るとは……。ロードは辛かろう……」
セイクリッドは後味が悪すぎて納得がいってない様子だ。誰もが予想できないことだ。
長年住んだ地をめちゃくちゃされ去るのは辛いだろうが、俺の領地に行くことを選択してくれた。
傷ついた分、俺の領地でゆっくりしてほしい。
「戻ったよ」
エメロッテは禁忌野郎の手掛かりがないか探しに行って戻ってきた。
「どうだった?」
「すべて灰になって何も収穫はないわ。倒すと同じ仕様だわ」
本体は倒しても根は残っていると思ったがダメだったか。
「そうか、エメロッテから見てあの邪石はなんだ?」
「私の見方だとフェンリルちゃんは邪石の養分とされて、ある程度吸い取られて準備が整ったら特定の魔物――フォレストキングが好みそうな魔力を発したのかもしれない。そう、まるで寄生虫みたいに宿主に移動するかのように」
「じゃあ、フェンリルに付けられたのは魔力が上質で邪石を成長させるのにもってこいと?」
「かもしれない。それしか考えられない。多分、サラマンダーの件もそうかもしれない」
じゃあ、サラマンダーに寄生する前は別の魔物を養分として寄生していたか。あり得そうだ。
本当に厄介だ……今後も注意しないといけない。
「だけど、全部が同じわけではないから大変だわ」
禁忌野郎のことだ、俺たちが予想できないバカなことをしてくるだろう。
だが、俺が必ず仕留めるから問題ない。
「今日はこのくらいにしてゆっくり休んでくれ」
「うん、それもそうね――じゃあ~お菓子を食べて落ち着こうかしら~」
切り替えが早いことで……。
まあ、そこがエメロッテの良さではある。
ロードは調理器具を抱えて戻ってきた。
料理好きなロードにとって大事なものが見つかって良かったですな。
「ワン!」
ちょうど、フェンリルが起き上がり尻尾を振って元気だ。
魔力も正常に働いて問題なさそうだ。
意外だったのは【人化】したロードを見ても驚かないで飛びついて喜んでいた。
「ワン、ワン!」
玄関のドアを手でポリポリと引っかいて外に出たい様子だ。
ロードは躊躇いなく開けてフェンリルに無残な光景を見せる。
「クゥ~ン……」
耳と尻尾が垂れ下がり落ち込む。
「残念だけど、もうここには住めないわ。新しい住処が見つかったからそこで暮らしましょう」
「ワン!」
フェンリルは嫌がることなく大きく返事をした。
これで問題なく俺の領地に移動してくれる。
「良かったねシノちゃん、お友だちといっぱい遊べるね!」
「ワン!」
もしフェンリルが馴染めなくてもシノがいてくれるからなんとかなりそうだ。
「ところでフェンリルに名前は付けないのか?」
「そうね、最初は名前なんて興味なかったけど、こうして付けられると、大事だと思ったわ。けど、私では思いつかないの。この子に名前を付けて、お願い」
結局、俺に任されるのか……。
しょうがない考えて――ん? ルチルはなぜかそわそわし始めたぞ。
「ルチル、名前付けたいか?」
「うん! 名前付けるの得意だから任せて!」
得意なら任せました。
なんだかんだユニコーンに全部付けたから得意ではあるか。
「この子オスだから――――ハクトちゃん!」
「ワン!」
名前を付けられて大喜びだった。
「良い名前だと思うわ、これからもよろしくねハクト」
そう言ってロードはハクトをなでた。気に入ってくれたのはいいことだ。
もう夕日が沈んでいるし夕食の準備でもしよう。




