460話 フェンリルを捜せ
フェンリルはいったいどこにいる?
見渡しても見つからない……フェンリルの魔力反応があれば……。
デスナイトが向かっている方にいるはずだ――おそらくトレントが密集している中にいる。
うかつに魔法で全滅はできない、しらみつぶしに倒して探すしかないか。
「主ちゃん、もしかしてフォレストキングの方に向かっているのかもしてない」
奥には不気味な笑みを浮かべてよだれを垂らして待っているフォレストキングがいる。そうなると、密集しているトレントは俺たちを邪魔してフェンリルを誘導させて捕食するつもりか?
だったらそいつを優先して倒す――。
「フェンリルが近づくまでに倒すぞ!」
「了解、私に任せて――――フレイムドラゴン」
エメロッテは龍と火の【混合魔法】を使い、龍の炎を創り、フォレストキングに放つ――。
直撃すると――身体は焼き尽くされ、炎は舞い上がる。
これで捕食されることはないだろう。
あとはフェンリルを捜すだけだ。地上に降りて、密集しているトレントを切り続ける。
…………おかしい……半分くらい倒してもフェンリルが見当たらない……。
「どいて!」
敵をシールドバッシュで一掃しているデスナイトと合流してしまった。
「あの子は見つかった!?」
「悪いが見つからない。この方向で合っているのか?」
「ええ、あの子はここに進んだのは間違いないわ! いったいどこにいるの……」
デスナイトは不安でしょうがない。
本当にどこにいるんだ?
周囲にまき散らせされている毒粉に惑わされているわけではない。
まだ近くにいるはずだ。
「飛んで探してみる。絶対に見つける」
「安心して、フェンリルちゃんは絶対に見つけるよ」
「ありがとう……私はここ周辺を探してみるわ」
俺とエメロッテは【飛行】を使って再び上空で探す。
だが、どこにもいなかった……。
見渡してもいないのはおかしい……。長引けばフェンリルの命が危ない。
ちくしょう……魔力がない相手を探すのはこんなにも大変なのか……。
「食べられた形跡もない……。生存しているはず……何か見落としている……」
エメロッテは額に手を当て考え込む。
見落としているところなんてないはずだが……。
空でも見つからないなら地面に潜るわけ…………地面の下だ!?
「エメロッテ、フラワートレントだ! 地面に引きずり込まれているはずだ!」
「わかった!」
エメロッテは慌てて、地上に降りて地面に手を当て龍魔法を使う――。
「――――ドラゴンサーチ!」
魔力の糸が地面を通過しているのが見える。
糸が何かに当たると、フラワートレントの形を形成する。
次々と埋まっている相手の位置を魔力ではっきりと把握できた。
そして――。
「主ちゃん、逆方向にいる!」
エメロッテが言うが遅かった――俺たちがいる逆方向にフェンリルを加えているフラワートレントが地面から出てきた。
その近くにはフォレストキングが……。
最悪だ、罠にはめられるとは……。
空間魔法で間に合うか――。
俺が近くに移動したがすでに遅かった――フォレストキングに差し出され、邪石の部分を嚙みちぎられる。
そしてフェンリルを丸吞みにし、フォレストキングの体内に……。
まだ間に合う――俺はフォレストキングを切ろうとした瞬間――禍々しい邪石反応が……。
フォレストキングは大きくなり、木の根が長くなってムチのように俺に襲いかかる。
受け止めることができたが後ろに押されてしまて遠くに飛ばされてしまう。
あの根っこ威力がありすぎる……。
炎の魔剣で受け止めても燃えないのは異常だ。
いったん降りて態勢を整える。
次第に、木の根が増えて地面に張り、周囲の花が枯れ、湖が干からびている。
吸われている……。栄養を吸収して大きくなっているのがわかる……。
それだけでは足りないのか、周りのトレントを根っこで突いて魔力を吸収して干からびていく。
昨日のフォレストキングよりひと回り大きくなり、鼻の部分に邪石が浮かび出て禍々しく輝いている。
どうやらトレント系に起動するのは当たりだったか。
しかも、あらゆるものも吸収する邪石だ。
あの根っこに当たると吸収されて干からびるのは確定だ。
一気に攻めたいが、フェンリルの生存の確認したい。
邪石の部分を嚙みちぎられたとき、灰にはならなく丸吞みされたから生きているはずだ。いや、生きてあってほしい。
だが、大怪我を負っているのには変わりはない。
早く邪石を壊して救出しないと――。
「あの子を返して!」
デスナイトは怒りを顕にしてフォレストキングに向かう。
ダメだ、むやみに近づいては危険だ――。




