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457話 奇妙なトレント


 ……進むにつれて霧が濃くなる。

 昨日より酷いな……。それにある程度近づくと遠くに行ってしまう。


「ふむ……我らが進むと移動しているのは気のせいか?」


「気のせいではないぞ」


 俺たちは足を止めると、相手も動かなくなった。再び離れるように動き出す。

 

「妙だな……。まるで【魔力感知】を覚えているようだ」


「かもしれない。それも複数反応が出たが、まったく同じ動きをする」


 稀に弱い魔物でも【魔力感知】を覚えることはあるが、複数の個体が覚えるのはただの偶然か?

 

「動くだけの木が覚えるとは予想外だ。視界も見づらい、ここまま進んでも繰り返しになりそうだ」


 いたちごっこになりそうだ。

 でも【飛行】を使ってすぐに追いつくこともできりし【隠密】で全て遮断して近寄ることもできて余裕ではあるが、気づかれているトレントにそこまでする必要はあるのか?

 

「もう少し様子を見るしかないか」


「承知した」


 俺たちは引き続き、反応がある近くにいる奴に向かう――。


 


 ――十数分後。



 やはり一定の距離を保って相手は逃げている。

 奥に進んだら数十体の反応が現れて同じように動いている。

 ここまでくるとおかしいぞ……。

 全体が【魔力感知】のスキルを覚えているのか……?


 仲間同士で「逃げろ」と伝えているのかと思ったが全体が伝えるほど近い距離ではない。

 

「変わらないな……。たちが悪いことに数が増えて我らを監視しているような感じではないか」


「確かにな……。警戒しているとは思うが、誰も慌てて逃げることもない。いったい何をしたいのかわからない」


「ここまでされると不気味である。一気に近づき一掃でもするか?」


 セイクリッドは剣を構えて戦闘態勢に入った。

 放っておくと嫌なことが起きそうではある。

 ここはセイクリッドの言うとおり掃除――伐採でもするか。


「ああ、切って燃料の薪にしようぜ」


「承知、では全力で――」


 セイクリッドが魔力を出した瞬間、相手は思いっきり逃げてしまった。

 そんなことあるのか……。これではっきりわかったのはトレント全体が【魔力感知】持ちということ。


「なに……逃げただと……これでは「覇閃斬」が撃てん……」


 いくら強力な斬撃をあってもかなり遠くへ逃げてしまった。不発に終わるだけだ。

 逃げてしまってはもう手の打ちようがない。


「不完全燃焼のところ悪いが今日は引き返そう。明日に持ち越しだ」


「ヌヌヌ……仕方がない……。明日は存分に暴れてやる……」


 セイクリッドはグッと堪えて剣を収める。

 霧も濃くなって戦いづらいのもある。まあ、セイクリッドは霧が関係戦えると思うが、時間はかかりそうだ。

 明日晴れることを考えて思う存分暴れてほしい。


 俺たちは空間魔法(ゲート)で元の場所に戻る――。 


「おかえりなさい~。何か進展はあった~?」


 駆け寄ってきたエメロッテにお互い情報を話した――。

 

 そっちはトレントとか出てくることもなく、ルチルとシノと仲良く遊んで特になかったと言う。

 

「う~ん、不思議なことがあるのね~。そもそもトレントって【魔力感知】を覚えるほど強い魔物かしら~?」


「Cランクの魔物だぞ。一般では厄介な部類に入る。覚えてもおかしくはないが、全体が覚えているのは異常ではある」


「だよね~。私の予想だけど~ここに生息しているトレントは【魔力感知】を覚えた個体多いと思うよ~」


 まあ、考えとしては一理ある。秘境ではあり得ないこと話ではない。ハチミツ村いるハニーハンターが一例である。


「じゃあ昨日は俺たちを襲ってきたが、今日はここを襲ってきてないことは――」


「危険と認知されていると思うよ~。私たちが強くて余計にね~」


 認知されているほど知能が発達しているってことか。

 これはBランクの魔物と考えたほうがいいな。


「もし俺たちが離れたら?」


「制限していた行動を解除してここに普通に来るよ~」


「そうなるか。セイクリッドお仲間は独りで対処できると思うか?」


「普段倒しているなら問題はなかろう。たが、軍勢でやってきてフェンリルを守って戦うのは少しキツイかもしれん」


「その中に毒粉を吐いてくるトレントかなりいたらマズいよな、ある程度片づけたほうがいいか」


「そのほうがいいと思うよ~。これも予想だけど~禁忌を使う愚か者はここのトレントに興味をもっていたのかもしれない~。それでフェンリルちゃんがつけている白い邪石はトレントを引き寄せるような仕様かもしれない~」


「要するに実験台されたってことか」


「かもしれない~。あくまで予想だけどね~」


 予想だが禁忌野郎のやることとしては、辻褄が合う。

 ならトレントを全滅させれば問題ない話だ。


「トレントを討伐するまで帰れないってことか」


「そうだね~。けど~【魔力感知】で私たちを把握できているなら逃げる可能性もあって一筋縄ではいけないかもしれない~」


「時間がかかるのはしょうがない。ほかに方法があるのか?」


「あるよ~。最悪な場合~セイクリッドちゃんの仲間を説得して、無理やりフェンリルちゃんを主ちゃんの領地に移動させることだよ~」


 その手がありましたな……。ちゃんと説得できるのか問題はあるが。


「最悪の場合そうしてもらうぞ。だが、我がすべて終わらせる――心配無用だ」


 セイクリッドは仲間のことを優先して避けたいみたいだ。

 まあ、明日から討伐するのは変わりはない。

 目的も決まったことだし明日に備えよう。

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