454話 フェンリルの情報
――翌日。
目が覚めるとベッド――エメロッテの【マイハウス】の寝室にいた。
小屋で寝ていたが、どうやらエメロッテが俺を運んでベッドに移動したようだ。
それにしても広い……フランカの【マイハウス】の倍はある。
本当に規格外だ。
リビングに向かうと、みんな集まり、キッチンにはエメロッテとデスナイトが調理していた。
「主ちゃんおはよう~、今朝獲ってきたボアでチャーシュー丼を作っているから待っててね~」
朝からチャーシュー丼ですか……。胃がもたれそうです……。
大食組には最高の朝食ですね。
「便利な魔道具があるなんて人の文化は進んでいるわね」
いや、この家が規格外なだけで一緒にしては困る……。
そう言いながらデスナイトは普通にコンロを使って土鍋で米を炊いているではないか。
すぐに慣れるデスナイトもそうだが……。
…………美味しかったが肉盛りすぎて困った……。
これからエメロッテと周囲を確認しに行こうと思ったが、胃がもたれて少々動けないです……。ソファに座り消化を待つことにした。
「わ~い、お散歩だ~!」
「「ワン!」」
「気をつけてね」
ルチルとシノ――フェンリル組は外に出て遊びに行った。
俺の倍以上食べても胃もたれしないのが羨ましいです。
お昼になり、身体が楽になって動けるようになった。
さて、デスナイトにいろいろと情報を聞いて調査するか――。
「ところで山菜はどこに手に入る? 山菜を使って料理したい」
「東の方角に手に入るわ。急な斜面を登って先にたくさん生えているからすぐわかるよ」
「もしかしてフェンリルが怪我していた場所か?」
「そうだよ。どうしてそれを聞くの?」
「いや、強い魔物がいるのかと思って」
「いてもトレントくらいしかいないよ。けど、最近フォレストキング複数現れてちょっと困っていたわ。でも私が倒したから安心して」
Cランクのトレントがいるのか。あのフェンリルはトレントに傷だらけにされた可能性はありそうだ。
しかしフォレストキングって、Aランクの魔物でトレントの上位種でトレントの倍はデカく素早いと物知りなグラシアさんが言っていたな。
まあ、俺たちには余裕の相手だが、警戒はしておく。
「わかった。ちょっと山菜採りに行ってくる」
「行くのだったら私が案内しようか?」
「いろいろ寄り道したいから迷惑になるし大丈夫だ」
「そう、気をつけてね」
さすがにフェンリルの件で調査したいからデスナイトがついてこられると困る。
まあ、手がかりがあるかわからないが確かめないといけない。
「じゃあ留守番よろしくね~」
俺とエメロッテは家を出て花畑を歩き、フェンリルが怪我した場所に向かう。
「はぁ~たまには花畑でゆっくりするのもいいのじゃ~」
途中、シエルは花の上に乗ってゴロゴロしていた。
それはいいが…………なぜ全裸なんだ!?
せめて【人化】ではなく竜の姿でゆっくりしてくれ……。
誰かさんが見たら鼻血だして貧血になってしまう。
「あらあら~、ストレス発散して良いことだわ~。けど人前でやると襲われる可能性があるから気をつけてね~」
「わかっているのじゃ~。ここは人もおらんし解放できて最高じゃ~」
領地ではしょうがなく服を着ているからストレスは溜まるよな。
けど、竜の姿で解放しない……? 何かしら理由があるのかもしれません。
そう思っていていると、ルチルたちが森の手前で動いている大木――トレントと戦闘していた。
ルチルは虹色に輝く結晶の短剣で胴体を引き裂き、あっさり終わった。
「これでよし、さあ、森の中に入ろう!」
「ワン!」
シノは気持ちよく返事をするが――。
「クゥーン……」
邪石付きのフェンリルは子犬のように怯えていた。
トレントの戦闘時シノの後ろに隠れて怯えていた。やはり傷を負わせた元凶なのかもしれない。
「どうしたのワンちゃん!? もういないから大丈夫だよ!」
「ワン!」
無理やりルチルは引っ張って森の中に入ろうとするが――。
「あっ、待て~」
ルチルを振り払い、後ろに振り向いて走って行った。
その時だった――白石した邪石が黒く光り始めた。
だが一瞬だけで白石に戻る。
「さっきの見たか……?」
「うん、少しだけ光ったね……。森に入ると光るのかもしれない……」
「いったん、調査をやめてフェンリルの様子を見るか?」
「いいえ、このまま行こう。私の勘だと森の奥に何かあるかもしれない」
勘か、その勘は当たっている。これで邪石との関係があるとわかった。
何かあったらルチルが報告してくれるから俺たちはそっちを優先する。
花畑を抜けて森の中に入っていく――。




