451話 隠居するデスナイト
「懐かしい声が聞こえたと思ったらあなたたちなのね、久しぶり」
出てきたデスナイトは女性の声で鎧は175㎝以上はある女性型だった。
…………女性かよ!
まさか女性型のデスナイトがいるのか……。
セイクリッドとモリオンが男性型だから性別はあるのか。
「ハハハ、久しぶりだな! 身体が変わったのによく我と気づいたな!」
「変わっても声でわかるよ」
「ハハハハハ! そうかそうか、それでこそ我が友だ!」
「でもだいぶ変わったことがある。ほかと付き合いしているなんて意外だわ。後ろの方たちは仲間なの?」
「ハハハハハ! そのとおりだ! わけあって共に過ごしている! 来て早々悪いが相談したいことがある! 邪魔してもいいか?」
「相談? わかったわ、あがってちょうだい。後ろの方も狭い家だけど、どうぞ」
俺たちを警戒しないで歓迎してくれるのか。
まあ、セイクリッドとモリオンと仲間なら警戒はしないよな。
俺たちも中に入ると――立派な内装だ。
暖炉が設置していて、中心にはテーブルとイスがあり居心地良く住める。
俺たちが余裕で入れる空間になっていて、客を呼ぶくらいの設計はしてあるみたいだ。
これ、全部独りで作ったのだよな? 職人と変わらないぞ。
「お口に合うかわからないけど、どうぞ」
しかも暖炉でポットを沸かしてハーブティーを出してくれる。
「あら~美味しいわね~。たまにはハーブティーもいいわね~」
緑茶派のエメロッテが絶賛しています。
俺も飲んでみると、少し甘みがあり、口当たりがよく飲みやすい。
今まで飲んだ中で一番だ。
「ここで採れるものなの。人のお口に合って良かった。食事も出すから食べてね」
料理作れるのか……。
「初対面なのにそこまでしなくても」
「そうなの? 私はこれが普通だけど?」
そう言って首を傾げる。かなりの世話好きだな……。
いや、久々に人に会ったらから嬉しいのか?
「ハハハハハ! 主殿、友はこんな感じだから遠慮はいらんぞ!」
ただの世話好きでした……。
セイクリッドの言うとおり優しいですね。
「わかった……。遠慮しないよ……」
「うん、そうしといて、もちろん泊まるよね?」
なぜか泊まる前提で話が進んでいるのだが……。
やっぱり独りだったから寂しいのか?
「泊まることはしないぞ。迎えに来たのだからな!」
「迎えに? どうして? 説明してくれる?」
「それはだな――」
セイクリッドは世話好きのデスナイトに俺の領地に来ないか言う――。
「そういうことね、まさか名前持ちで領地の守護者になったのは意外ね」
「ハハハ、何があるかわからないな! 悪くない話だろう?」
「悪くない話だけど……考えさせてくれる?」
少し詰まった感じで言う。
いきなり来てくれと言っても無理みたいだ。
ここの環境に慣れて離れたくないだろうな。
「なぜだ? 人好きなお前なら喜んで領主殿のところへ迷わず来ると思ったぞ」
「そうだけど、私だけ行くわけにはいかないの」
「まさかお主以外に一緒に住んでいる奴がおるのか?」
「うん、今は散歩に行っていないけど、食事の頃には戻ってくるよ」
同居している奴がいるのか……。
まさか人ではないよな?
空で確認したが人はいなかった。魔力も人らしき反応もない。
「オレがいない間に同居している人がいるとはな!」
「人ではないよ、そこにいる狼ちゃんと同じ子と住んでいるの」
「ワフ?」
シノに指を差した。
なんだ人ではなくフェンリルを飼っているのかよ……。
それはそれですごいですけど。
だが、シノみたいな魔力は……反応がないぞ。
フェンリルならすぐわかるが、どうしてだ?
「シノちゃんはワンちゃんだよ! オオカミじゃない!」
「ワンちゃんなの?」
ルチルさん、紛らわしくなるので少しお口をチャックしてください。
「すまん、今のは忘れてくれ。モリオン、話を続けてくれ」
「おう、なら飼っている魔物も一緒に来るといい、領主殿のところは人と魔物と一緒に住んでいる。その飼っている魔物もすぐ気に入るぞ」
「そうしたいのだけど、あの子はここから離れたくないみたいなの、離れると怯えて嫌みたい。無理に連れていくのは抵抗があるわ、あの子の意思を尊重したい」
これは無理そうだな。
というかこのデスナイトなら保護しなくて大丈夫では?
人に被害を加えることはないしな。というかここに来る人なんていない。
空間魔法で移動できるようになったからいつでも会える。
面倒だが王様に説明して納得させよう。
「わかった、気が向いたら言ってくれ、悪いがセイクリッドとモリオン、遊びに行く程度にしてくれ」
「無理ならしょうがない。友を尊重する」
「すぐ会えるなら問題ない」
決まりだな、このデスナイトは様子見で話は終わった。
「ありがとう、助かるわ。ところで泊まっていくよね?」
だからなんで泊めさせようとする!?
まあ、久々に仲間と再会したからいろいろと話したしな。
予定が狂ったが、お言葉に甘えて泊まっていきますか。




